2つの扇風機
むかーしから思ってたんだ。
この指を羽根の部分に当てたらどうなるだろうって。
回転している時ならば当然指は切れるだろう。
そして大量の血が噴き出すに違いない。
でも実際は蓋があるから指が入ることも切れることもない。
羽根のない扇風機ならなおさらだ。
筒状のもの。
風はくるけど怪我をする心配もない。
いつからだろう…。
自身を傷つけたいと思うようになったのは。
でも怖いから無理なんだ。
僕は臆病なんだ。
え?
それはおかしいよ?
考えが?
うん、わかってるって。
わかってはいるんだけど、心の中で誰かが囁くんだ。
やっちまえって。
それをダメだという僕もいる。
きっと僕は二重人格なのかも?
ほら…ダメだったろ?
なら何にだったらできるんだい?
小さな生き物かい?
なら連れてきてあげよう。
そう囁く僕の手には子猫が。
でもね?できなかったんだ。だってかわいそうじゃないか。
それからしばらくは何事もなく平和な日々が続いた。
でもね?ある日から深夜になると猫のような赤子のような泣き声が聞こえてくるようになった。
寝ぼけてたのかなぁ〜?
まさか…ね。
で、しばらくは様子を見てみることにしたんだけど、泣き声は止まない。すぐ近くで聞こえる時もあれば、遠くから聞こえてくることもある。一体何なんだ?
静かだから余計に聞こえてくるんだけど…。
声がする方へ歩いて行った時には特に何もなかった。でも聞こえる…。
近づいたかと思うがそうじゃない。
距離が縮まっていないんだ。
なんで?
もしかしてお化け?
嫌だよ。僕その手の話は苦手なんだ。
急にしおらしくなるがいまさらだ。
だからさ、カラ元気ってやつで歌を歌ったりしたよ。泣き声が聞こえてこないようにさ。
そしたら静かになったよ?一時的にだけどね。
「やったぁ!これでもう怖くないや。」そう思ったのに思った瞬間にまた聞こえてくる。何なんだよ。一体。怖さも薄まってきたから強気で叫んだんだ。
「おばけなんか怖くないぞ!出てこれるもんなら出てきやがれ!!」
そしたらその瞬間から扇風機が動き出し、泣き声がうるさくなった。
「ギャー!」
叫んだ瞬間に見たものとは…猫を抱いた女の子だった。その顔は真っ青でとても生きている人間には見えなかった。
それもそのはず、女の子の体は避けていたのだ。
泣きながら近づいて来る。怖い。
思わず叫んだよ。
「ごめんなさい。もう生き物をいじめたりしませんから出てこないでください!」
すると泣いていた女の子はピタリと泣き止んでじっとこちらの様子を伺っている。
そしてにこりと微笑んで猫と共に消えていった。
それ以来僕は生き物を大切にしている。
何故女の子が出てきたのかが謎だったが、ある日それを知ることになる。
僕が捕まえた猫には飼い主がいて、それがその女の子だったらしい。らしいって言ってもはっきりとはわかっていない。ただ、近くに女の子がいたことは見たので知っている。ただそれだけ…。
それもある日を境に女の子は姿を見せなくなったから猫に飽きたと思ったんだ。まさか…死んでるなんて事ないよね?でもあの真っ青な顔、どう見たって死んでる顔だよね。
今その時の猫は僕の手の中でスヤスヤと眠っている。
今もビクビクしながら飼ってるけど、怖いからダチに引き取ってもらう予定だ。もちろんこの話はしていない。引き取ってもらえなくなったら困るから。
今日も猫と一緒に眠りにつく…。




