5話 お告げ
水魔法の初級を使えるようになった日の夜のこと。
部屋で寝ていたはずなのだが、目が覚めると何も無い白い空間にいた。
「ここ…どこだ?」
「やぁやぁ、久しぶりだね!」
と、後ろから元気のいい女性の声が聞こえる。
振り向くと一人の美しい女性が立っていた。
「女神様…ですか?」
「そうそう、女神レイアだよ。」
満面の笑みを浮かべる女神様。
その笑顔を見て、疑問が浮かぶ。
「あれ?世界には干渉できないんじゃないんですか?」
「基本的には、ね。これはお告げ的なものだからさ。大丈夫なんだ。」
「案外適当なんですね。」
「まぁ君が別の世界の人間の転生者だから特別に許可されたってのもあるんだけどね。」
ん?ちょっと引っかかるな。
「許可されたってどういう事ですか?」
「おっと、口が滑ったよ。何でもないから気にしないで。」
やっぱり適当だなぁ。
ほかの神たちは適当じゃないことを祈りたい。
「わざわざお告げに来た理由はなんですか?」
「よくぞ聞いてくれました!今日は君に最終目標を伝えに来たんだ。」
最終目標?
「強くなりすぎた魔物を倒すことって言ってませんでしたっけ?」
「まぁそうなんだけどね。その元凶がいるんだ。君には元凶を倒してもらいたい。」
魔王のような敵だろうか。
「魔王だと思ったでしょ?残念!RPGのやりすぎだよ!」
思考読まれました。
「魔物が強くなった元凶って言ったら普通は魔王思い浮かべますよ!」
と反論してみるが、
「ごめんごめん、からかっただけだよ。」
女神様は笑って話を戻した。
「でね、その元凶って言うのが【魔物に崇められし者】っていうんだ。まぁその数は少ないんだけどね。」
複数人いるのか。
「何人くらいいるんですか?」
「ざっと300人くらいかな。」
多いよね、それ。
運が悪いと1人 VS 300人とかありえるじゃん。
「300人って言ってもその中で特に強いのは15人くらいなもんだけどね。その【魔物に崇められし者】は魔族、人族の一部が生まれた時から発現している固有魔法なんだ。」
魔族!いるのか。
「どんな魔法なんですか?」
「えーと、魔物を強化し、自分の配下に置くことが出来るようになるんだ。その固有魔法には欠点があってね。魔物に意識を乗っ取られてしまうことがある。そうすると意識を乗っ取った魔物が死んだとしても止まらずに自分が死ぬまで魔物を配下に置き、魔物と魔物に崇められし者達以外を襲い続ける、魔物のような存在になってしまうんだ。」
そういえば、だ。
「あれ?固有魔法って同じものは存在しないんじゃ…」
「そう、そのはずなんだよ。でも何故か、この固有魔法は何人も発現する。原因は私にもわからないんだ。イレギュラー。どうにもならないんだよ。」
ゲームでいうバグか。
直らないバグとはまた深刻なものだな。
「残念ながら私達、神は世界に干渉できないからね。そいつらを消すことも出来ない。かと言ってこの世界の人族、魔族でそいつらに敵う人はあまりいない。しかもわざわざ戦おうとする人もいない。だから君をこの世界に転生させた。」
僕も戦いたくないんだが。
まぁ戦うために呼ばれたからな。戦うしかないが。
「君には転生特典として魔法や剣術の発動が分かるようになる自動発動の固有魔法を渡しておいた。」
やっぱり転生特典だったのか、あの天の声。
剣術の発動も分かるのか。
どういう事なのだろうか。まぁ剣術を使っているところを見ればわかるだろう。
「君にはあと1つは固有魔法が発現するようにしてある。何かは分からないけどね。」
「干渉できてませんか?それ。」
訝しげな目をする僕に女神様は軽く微笑む。
「それは簡単な話だよ。君が世界に産まれる前なら問題なく君の魔法とかはいじれてね。まぁ君が別の世界からの転生者だからだけどね。」
別の世界からの転生者に対する規制がとても甘いようで…
「ま、君の今の力じゃ一番弱い魔物に崇められし者にも負けるんだけどね。」
まぁそうだろうな。初級の水魔法しか使えないし。
「てことでね、君は明日から父親に剣術を習ってね。」
うわぉ強制ね。まぁいいけどさ。
「君のこの世界の父親は強いよ。きちんと習えば強い剣士になれると思う。」
元冒険者とは聞いていたが強いのか。
「あとは、魔法をきちんと練習するようにしてくれ。」
「了解しました。頑張ります。」
それを聞いた女神様は親指をグッと立て、サムズアップした。
頑張れという意味だろう。
「今日はこんなところかな。伝えることはすべて伝えたよ。なにか質問ある?」
少し考えてみるが特に質問は出てこない。
首を横に振る。
「よし、えっと、起きたら真っ先に父親のところに行ってね。そうしないと君の父親の仕事始まっちゃうから。」
「分かりました。」
「じゃあ、お告げはこれで終わり。剣術も魔法も修行を怠らないようにね。そして、魔物に崇められし者を倒して、この世界に平和をもたらしてくれよ、勇者くん!」
その声と同時に、白い空間の崩壊が始まり、僕はまた眠りについた。
急ぎで書いたため誤字、脱字があるかと思います。ご指摘頂けると幸いです。