4話 魔法を初めて使った日
昨日は更新できませんでした。書く時間を作れるよう頑張ります。
7歳になった。
このくらいの歳になるともうこの世界の言葉もペラペラと喋れるし聞き取れる、読み取れるし書ける。
また、歩けるのだ。
歩き周り、分からないことは聞いて周り、分かったことが3つある。
1つ目は、我が家はキグナ村という所にあり、身分的には村人の中の村人と言えるくらいに普通だという事だ。
父親と母親が2人で鍛冶屋を営んでおり、店先には剣や盾も並んでいる。
2人とも元冒険者らしく、武具にはこだわりがあるらしい。
すげぇ!かっけえ!と興奮して触ったら父さんにめちゃくちゃ怒られました。父さんまじ怖い。
そんな父さんの年齢は34歳、母さんは33歳らしい。姉2人は双子で、14歳とのことである。
20歳になる前に出産していることになる。
この世界だと普通なのだろうか。
一家5人で食うに困るわけでもなく、遊んで暮らせるわけでもない。そんなかんじだ。
ちなみに名字はない。
2つ目は、魔法の発動を見ると天の声らしきものが頭に流れ込んでくる件についてだ。父親に
「父さん、僕、みんなが魔法を使うところを見ると変な声が頭に流れるんだ。父さんは流れる?」
と聞いてみたところ、
「俺は聞こえんが…変な声か、どんな声だ?」
と訝しげな顔で返答されたので
「聞こえないなら僕の気のせいかも。」
と返しておいた。
母にも姉2人にも聞いたが同様の反応だった。僕にしか聞こえないらしい。
転生特典かね。何に使えるんだって話だが。
そして3つ目。この世界の魔法についてである。
昼下がり、いつも可愛がってくれる姉2人に
「エステル姉、ミナス姉、魔法教えて?」
と精一杯可愛く言ったら
「お姉ちゃん達に任せなさい!」
「うむ、教えてあげよう!」
と快く教えてくれた。
「お母さーん、魔法教本借りるよー」
と、ミナス姉が魔法教本なるものを持ってきた。
エステル姉が説明を始める。
「最初は通常魔法について説明するよ。通常魔法には4種類あって、火、水、地、風に分けられてる。それぞれ初級、中級、上級の3段階に分かれるよ。詠唱、つまり、この教本に書かれてる言葉を言えばすぐに発動できるけど、体内の魔力量が足らないと発動できないから気をつけてね。」
とのことだ。
「みんな何も言わずに魔法使ってたよ?」
と聞くと
「無詠唱って言ってね、威力や精度は半分くらいに落ちるけど一回その魔法を発動すればみんな出来ることだよ。」
と教えてくれた。
今まで黙っていたミナス姉が口を開く。
「魔力量は人によって違うんだ。基本的に努力とかでは変わらないよ。魔力を使い果たすと気絶するから気をつけてね。」
魔力量は先天性ってことか。
「それでね、ここからが本番だよ。」
もう魔法が使えるのか、と期待していると
「固有魔法って言うのがあってね。それは、人それぞれ違う魔法で、似ている魔法は存在するんだけど全く同じという魔法は存在しない。1人1つが普通だけど、たまに2つ以上持っている人もいるよ。この場合の1つっていうのは系統のことで、例えば傷を治すことができる魔法ならそこから病気を治したり、身体強化したりする魔法に派生することもあるよ。」
と教本を読みながら説明するミナス姉。
固有魔法か。
「姉さん達の魔法は?」
と聞くと、2人とも少し残念そうな顔をして
「まだ私達は発現してないみたいなんだよね。まだ使えないしどんなものなのかわからないんだ。」
とエステル姉。
ミナス姉が続ける。
「固有魔法が発現する時期には個人差があって、みんな成人するまでには発現するはずなんだ。」
この世界の成人は15歳である。
あと1年あるはずだ。
「友達はみんな使えるんだよね…」
残念そうな顔をしていた理由が分かった。
「姉さん達は姉さん達だよ。気にしちゃダメだよ。」
そう言うと2人に頭を撫でられた。
「ありがとう、ヴァン。続けるね。」
ハモった。流石は双子。
「固有魔法が使えるようになるとそれを使うための詠唱式が頭に浮かぶみたいなんだ。この教本にもそう書いてあるし、友達もそう言ってた。それと、固有魔法は無詠唱ができないんだって。」
「その代わり、強いものが多いんだ。お父さんは身体に超高温の熱を纏えたり、口から火を吐いたりできるし、お母さんは鉄を素手で曲げたり、レンガを握りつぶしたりできるよ。」
なにそれ。母さん超怖いじゃん。
「よし、説明はこんなものかな。」
「通常魔法、使ってみようか。ちょっと待ってね。お母さん呼んでくるから。」
ミナス姉が母さんを呼びに行く。
少しして母さんが来た。
「ミナスから話は聞いたわ。ヴァンも魔法を使いたいのね。」
「うん!説明は姉さん達にしてもらったからあとは使うだけだよ!」
「じゃあ、水魔法の初級からやってみようね。」
やっと使える!楽しみ!
「ここじゃ危ないから外に出ようか。」
と言うことで外に出る。そこまで広くはないが庭があるのでそこでやるみたいだ。
「よし、手の平を上に向けてから、ここに書いてある詠唱式を読んでみて。」
えーと、水魔法、初級編のネロディミウリギア?なんだそれ。まぁいいや、やってみよう。
「母なる海よ、その力の一端よ、ここに現れよ!
ネロディミウリギア」
そう唱えると手の中に水が出てきた。
「おお、出来たね。すごいすごい!」
褒められ、頭を撫でられる。
凄いのかこれ。
まぁ褒められて悪い気はしない。
飲める気がするので飲んでみた。うん、普通の水だ。
「次はこれかな。あのきに向かって手を突き出してからこれを唱えてみて。」
なになに?水魔法、初級編のネロバラか。
ネロディミウリギアから考えるにネロってのは水だろうな。
「母なる海よ、その力の一端よ、清涼なる宝玉となりて我が敵を打ち払え!
ネロバラ」
手から出た水の玉が真っ直ぐに木に向かって飛んでいく。
パンッ
という破裂音と共に木に当たる。
木が抉れた。いいのかこれ。
「よく出来たわね。まだ大丈夫よね。」
あ、木が抉れてるのは気にしないのね。
「まだ出来るよ!」
この後、初級の水魔法を一通りやってお開きになった。初級の水魔法はこんな感じだ。
ネロディミウリギア¦水を手のひらから出す。
ネロバラ¦水の塊を相手にぶつける。
ネロクシィーフォス¦水の剣。切れ味は小枝ならすぐに切れるくらい。1分ほどで消えた。
ネロヴェロス¦水の矢。30cmほどで、木に突き刺さって消えた。
ネロアスピダ¦水の盾。2分ほどで消えた。
ネロオティシー¦足から水を噴射する。効果時間は20秒程度。走ることができ、普通に走るのの1.5倍程度になる。滞空も可能。
こんな感じである。
使う魔力は下にいけばいくほど多くなった。
身体から魔力が抜けたのを感じる。実感できるものなんだな。
まだまだ余裕があるので魔力量が少ないわけでは無さそうだ。良かった。
ちなみに、自分で魔法を使っても天の声らしきものは聞こえてこなかった。
よくわかんないよ女神様。
明日は風魔法の初級をやるらしい。
初級だけでも全種類できるようにしたいな。
魔法の名前はギリシャ語です。