1話 死に様語り
初投稿です。誤字、脱字、辻褄が合わないなどの箇所かあれば教えて下さると幸いです。
僕はある夏の日に1度死んだ。その話をしよう。
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死ぬ前、僕は16歳。普通の公立高校に通い、彼女はいない、部活も未所属。
友達もあまり多くない。
成績も平々凡々。
特にこれといった刺激のない退屈な生活を送り、刺激のある日常が欲しいと思っていた。
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夏休みに入る前日、橙色に輝く夕日の中、1人の友達と人気のない通りを帰っている時のことである。
「いつまでだっけ?夏休み」
「8月31日まで。去年と変わらない日数だよ」
「1ヶ月半くらいかぁ。7月中に宿題終わした方がいいよなぁ」
と、そんな他愛もない話をしながらいつもの帰り道をだらだらと歩く。
ふと、前から歩いてくる人が目に付いた。
その人は夏だというのに、全身黒色で統一されていて、長袖長ズボン、帽子を目深にかぶり、マスクとサングラスをしていた。
日差しに当たりたくない人なんだろう。
「なぁ、学校で通り魔が出てるから気をつけろって言われたよな?」
と友達が焦った様子で僕に聞いてくる。
「言われたね。確か、ここの近くで事件が発生してたよね。」
「その通り魔ってさ、ちょうどあの人くらいの身長だって話だよな?」
そこで、僕は友達の言いたいことに気がついた。
「そうだけどさ、あの人が通り魔なわけないじゃん。」
こうして話している間に、その人との距離が縮まっていく。
「おい、あの人なんか持ってるぞ…!」
と震える声で友達が呟く。
「あれは…」
あと10mほどですれ違う。そこでその人が何を持っているかが視認できた。
「包丁だ!!」
「通り魔だ!逃げるぞ!」
その言葉と同時に、僕達は踵を返し走り出す。通り魔が追って来ているのがわかる。
走る。走る。
だが通り魔の足は速く、どんどん距離が詰まっていく。
その時、僕は不運にも落ちていた石につまずき転んだ。転んでしまったのだ。
友達が僕を見て立ち止まろうとする。
「逃げろ!僕も後から追いつくから!!」
咄嗟に僕は叫んでいた。その瞬間、背中に激痛が走る。立ち上がろうとするも、痛みで立ち上がれない。
殺す気なのだろう。
激しい痛みの中の抵抗も虚しく、通り魔は僕のことを仰向けにした。
通り魔が僕の腹に包丁を突き刺す。
「カハッ……!」
背中の時よりもずっと痛い。通り魔は何度も腹に包丁を突き刺す。
血が溢れてくる。
僕が求めていた日常の刺激とはこんなものじゃないのに。
痛い、痛い、痛い
無限に思える痛みの中、意識が薄れていく。
そして、痛みを感じなくなった。
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以上が僕が死んだ時の話だ。
だが、僕は運が良かった。死んだのに運が良い理由がわからないって?
じゃあ、次は死んだ後の話をしようか。