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【機人転生】 俺、伝説の種族だったの!?  作者: 新
機械な種族に転生
7/29

5話 その男、ギルド長

話を分割しました。

冒険者ギルドの中は、一言で言うならとても騒がしかった。


「今日も上手いこと依頼がこなせて良かったなぁ!」


「あ、おい!またアイツら喧嘩始めやがったぞ。どっちに賭けるよ?」


「この依頼でのパーティを募集してまーす! 詳しくは私までお願いしまーす!」


そんな声が喧騒の中で聞こえては消えてゆく。

そこら中にある机と椅子はどれも満席で、立ったままなにかの飲み物を飲んで駄弁っている人たちも見える。 殴り合いをしているスペースは大いに賑わっているようだった。


……こんなところで働けんの? 俺。


「ああっ!? ギルド長ッ! 今まで書類仕事ほったらかしてどこ行ってたんですか!?」

「あー、ちょっと散歩を、な」


そう叫びながらおっさんに食ってかかったのは、メガネをかけた短髪美人の女性だった。地球では見ないピンクの派手な髪色だが、不思議と下品には見えなかった。

ついつい俺は見惚れてしまう。


すると、そのメガネの女性はオッサンの隣にいる俺に気がついた様子で俺に視線を向けた。


「あれ? この方はどなたですか?」

「おっ! よくぞ聞いてくれた! 今日冒険者登録をするッ……――そういえば名前を聞いてなかったな?」

「あ、そういえばそうだった。俺はジンっていいます」


とりあえず名前だけ名乗ることにした。

ジンってこの世界でも通じる名前だよな?


……っていうか冒険者登録ってなんのことだ?

それに、ギルド長? このおっさんが?


「……なるほど。私はこの当ギルドでこの人の秘書をやっている、ベルナと申します。よろしくお願いします、ジンさん」


ベルナさんは礼儀正しくペコリと礼をしながら自己紹介をしてくれた。


「というわけで、ジンは今日から冒険者だ! つーことで――」

「――その前にギルド長。あなたの自己紹介をしたほうがいいのでは?」

「ああ、そういえば名前しか教えてなかったな。ゴホンっ」


おっさんは一つ咳払いした。

いや、だいたいわかってるよ? さっきからベルナさんが『ギルド長』って呼んでるしな。


「この町……コネクトの冒険者ギルドを仕切ってるゼンだ」

「ああうん、知ってる」

「だよな! がはは」

「はぁ……」


……えらくアッサリ終わった自己紹介。

なんかベルナさんは額に片手を当ててため息ついていた。



その後「んじゃこっちこい」とオッサンに手招きされたので、歩いていく。


するといつのまにか消えていたベルナさんから何かを受け取り、こっちに戻ってくるオッサン。


おっさんは一枚の紙を手に持って来ていた。

何やら文字が書かれているが、読めなかった。


「ちょっと待っててください」


そういうと俺はギルドの隅っこに移動する。

そしていつものメアリーを呼んだ。


「メアリー。この世界の文字が読めないんだけど、なんとかできるか?」

『お任せください。――自動翻訳アシスト開始。これで問題は解決です』


はやっ。まぁメアリーがそう言うなら大丈夫なんだろう。きっと。というわけでおっさん達のところへ戻った。


「気分でも悪くなったか?」

「いや大丈夫」

「そうか。ならよし。とりあえずここにサインしてくれ」


そう言っておっさんは手に持っていた紙とペンを渡してくる。

ペンは羽ペンというやつだろう。詳しくは知らない。

おっさんが指差してくるところに自分の名前を書いた。サインって名前でいいんだよな?


この世界の文字なんて知らんけど、手が勝手に動いて書いてくれた。メアリーアシスト、便利。


よし、次は内容を読むとするか、と思ったら横から紙をもぎ取られた。


「書いたな? んじゃこれはベルナに渡しとくぞ!」


いつのまにか隣にいたベルナさんは、その紙を受け取っていた。ベルナさん、神出鬼没ですね。


けど、内容読みたかったな……。

折角のメアリーアシストが……。

ちなみにメアリーアシストというのはいまさっき名付けた。

なんとなく語呂がいい気がする。

よし、これから使い続けるとしよう。



ベルナさんはため息を吐いていたが、しっかりとオッサンからその紙を受け取り、クルクルと巻いた後に紐でくくって手に持ち直した。


「全く、いつも適当なんですから……」

「毎回毎回、新人に難しい事教えなくてもいいだろ。なぁジン?」

「え、まぁ……。そうですね?」


一応同意しておく。

まぁ俺は難しくてもいいから読みたかったんだけどな。

不満そうな顏をしているとおっさんに背中を叩かれた。


「おいおい。そんな顏すんなよ? 冒険者たるもの、いつ如何なる時も笑顔だ!」


そう言って笑顔でバンバンと叩かれる。別に痛くないけど、衝撃で体が揺れる。


凄い馴れ馴れしいけど不快ではない。

性格が真っ直ぐな人って、こういう人物なんだろな。


にしても冒険者か。なんかもう大体想像つく。


なんでかって?

……だって、俺の後ろのテーブルに座ってる奴らのほとんどが武器持ってるもん。


入り口からはなんか見たことない生物の死体がロープで引きずられ、隣のカウンターにドサリと置かれていた……。

多分、魔物だろうな。

まだゴブリンにしか会ってないけど、きっと総称は魔物だ。そうに違いない。


「ベルナ。簡単に冒険者の事を説明してやってくれ。簡単にだぞ」

「はいはい……えーっとですね。すごく簡単に説明させていただきますと、冒険者と言うのは依頼者から依頼を受けてそれをこなす職業です。時には人の護衛をしたり、時には魔物退治や植物の採取など色々な依頼があります。その依頼をこなしていくと冒険者ランクというものが上がっていくんですけど、まぁこれは地位みたいなものですね。ランクが高いほど周りの人々から尊敬されます。それだけの実力を持っているということですからね。以上、簡単に説明させてもらいました」


ベルナさんの説明はそこで終った。

確かにかなり端折ってる感じがするけどわかりやすかった。


「ちょっと長くなかったか? 次回からもう少し短く説明してくれ」


おっさんが文句を言ってたが、俺は丁度いいと感じた。

どうやらおっさんは長く感じたらしい。


「あのですねぇ……これでもかなり短くしたんですよ? 人に説明させてるんだから文句言わないでください!」

「あーすまんすまん。怒るなって」


プンプンといった風に怒るベルナさん。

そのベルナさんを軽くあしらってるおっさんは随分と慣れた様子。

きっと結構な頻度で怒らせてるんだろう……常習犯ってやつだ。


そこでおっさんは何かを思い出したかのように俺に声をかけてきた。


「そうだったジン。冒険者登録には銀貨五枚ほど必要になるが、俺が立て替えといてやる。もうメシも奢ったことだしな! いまさら銀貨五枚程度、痛くもないわ! はっはっは!」


大声で笑うおっさんはうるさかった。つい耳を塞いでしまう。

ベルナさんは大丈夫だろうか?

ふとベルナさんを見るとおっさんを睨んでプルプル震えていた。


「ギルド長……? もしかしてまたギルドの名で請求しましたか……?」

「ん? おう。そんときは現金持ってなかったからな。仕方なく、だ! 後処理は任せたぞ、ベルナ」



ひぇ。ベルナさんが怖い。オッサンは笑っているが、ベルナさんは違う。


目が据わってる。すごい怒ってるぞ、これ。

ベルナさんは背中をクルリと向け、奥に歩いて行った。

その途中、振り向くと、周りの人たちにも聞こえるほどの声量でーー


「請求書が来たらギルド長の給料から天引きしておきます!! これは決定事項です! それではっ」


そう叫ぶようにまくしたて、奥にある階段を上っていった。対してオッサンは……


「あ―久しぶりにすげー怒ってたな。後でちゃんと謝らねぇとなぁ」


頭を搔きながら呑気な声でそんなことを言っていた。


……おいおい、あんたいつかあの人に刺されるぞ?


呆れた顏で俺はおっさんの横顔を見ていたが、周りにいる人たちも呆れ顔になってたり、嘆息をしていた。


すると突然おっさんの顏が俺の正面を見据える。

つい身構えて俺もおっさんを見据えた。


「まぁそれはいいとしてだ。ジン、ちょっと俺についてこい」


おっさんは顎をクイッとして奥の階段を示し、歩いていく。とりあえずついていくか。


おっさんは上りの階段じゃなく下りの階段を降りて行く。

地下室でも行くのか? そう考えながら歩いているとおっさんの前方に扉が見えた。


「突然だが、今からここで……ジン。お前がどれだけ戦えるかテストしてやる。それ次第で初期の冒険者ランクも上げてやるから張り切れよ?」


そう言ってから扉のノブに手を伸ばして開ける。

扉の奥に広がっていたのは、とても広い空間だった。

2018 十月五日 加筆や修正、改行などしました!

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