暗闇
本日の二話目です。
――気づくと俺の目の前には光の球体が浮いていた。というのも形が不安定で、球体のように見える、というのが正しいか。
……あれ? 死んだよな? 意識はあるみたいだけど……ここが天国ですか?
辺りを見渡してみるが、暗い空間が広がってるだけで、目の前にある光の球体くらいしか確認できない。
「……ここホントに天国か? ……絶対違うだろ」
ていうか眩しいんだが、これ。いつまでここに浮いてんだ? ていうかなんだこの電球みたいなの。
俺はその球体に触れてみた。が、触れずに通り抜ける。
「触れん。……どうしよう?」
俺は頭を抱えた。意識が残ってる時点でもう意味がわからない。そもそも人は死んだら意識は残るって証拠なのかこれ?
まぁ誰に伝えるんだって話だが……。
腕を組んで首をかしげていると、突然光の球体が眩い光を放ち始めた。
「ぎゃー! 目がぁ!」
元々光ってたけど、さらに激しく光りだしたため目が痛い!
俺は気になってまた目を閉じながら触れてみたが、やっぱり触れる感触はなく、通り抜けてしまう。
「どうしろっていうんだ……!」
『こっちだよ!』
唐突に頭の中で声が聞こえ驚いて目を開く。
は? え? 幻聴? 俺は自分の頭を叩いた。
キョロキョロと周りを見渡すが、目の前の球体しかない。
『こっちだよ!』
その言葉がもう一度聞こえた時、光の球体は奥にゆっくり進んでいく。
……幻聴じゃなさそうだな。ていうか、あの玉喋れんのか。
行く当てもないし、とりあえずついてくか……。
『こっちだよ!』
さっきから同じことしか言わないなこの玉。
ていうか頭に響いてくるこの声ってどうなってんだろう?
まぁこの変な場所にいる時点でもうなんでもありか……?
……早く着かないかな……。
歩くのに飽きてきた俺はなんとなく光の球体に話しかけてみた。
「なぁ。どこに向かってるんだ?」
『………』
だんまり、か。話せるんだったら暇つぶしの相手してくれてもいいと思うんだけどなー。
ほんと、どこまで歩かせるんだ? さっきから見える風景は変わらないし、歩いて進んでるかも怪しい。
この玉についてきて良かったのか?
段々と不安になってくる。
今からでも引き返そうか? と思うが、引き返したところでなにもないことには変わりなかった。
更に歩いて五分ほど経った頃。俺は文句を垂れながら歩き続けていた。
すると突然光の球体は止まってしまった。
「おーい。どうしたー?」
もしかして目的の場所についたのか? のわりに何にもないぞ。
辺りを見渡すが暗闇が続いているだけだった。
溜息を吐いて球体を見る。すると、球体が激しく光り始めた。
「な、なんだ?! 目が! 眩しい!」
目を手で庇いながら待つこと数秒。光が収まる。
前方にいた光の球体はいなくなっていた。
「――は? ……どこいったんだよ」
唐突に光源だった球体がいなくなったため、暗闇が広がった。
「意味わかんねぇ……」
と、小さく呟く。
とりあえず俺は歩くことにした。
ここにジッとしてても何も変わらないからな。あるけばどこかに着く……といいなぁ。
そう思って一歩を踏み出した。
だが、その一歩が地に触れることはなかった。
「え?」
間抜けな声が洩れる。そのまま俺はバランスを崩し、前に倒れていく。
「ちょっ!」
俺は後ろに手を伸ばしてどこでもいいから掴もうとした。
だけど、掴めなかった。何かに体が引っ張られるのだ。しかも下方向に。
下を見てみるも、辺りと同じような暗闇が広がっているだけだ。
なんにも見えないぞ! どうなってんだ!?
引っ張られている原因が見当たらない。そもそもこの空間はどうなってるんだ?
考え出すと終わらない。今は落ちないようにしないと。
だが、必死に捕まろうと手足を動かすが、虚しく空を掴むだけ。
「おいおい、嘘だろ……」
宙に浮きながら、いや。下に落ちながら俺は絶叫する。
「うわあああああ!?」
恐怖で俺は目を瞑って来る衝撃に備える。
そもそもどれくらいの高度から落ちてるいるかもわからない。
もしかすると俺は死んでなくてここは現実の世界なのかもしれない。
そう思うと体の防衛本能に従って体を丸くする。
『いってらっしゃい!』
落ちていく中、頭の中には明るい声が響いた。
その声に俺はムカついて
「ふざけんなッ!」
と目をむいて叫びながら、俺は落ちていった。
誤字や脱字、おかしなところは気づき次第修正します。
2018.9.10 読みやすいように改行や加筆しました。