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吉報と問題

騒がしくなった訓練所をアリシアとシンは後にして、アリシアの提案により学院の一画にあるテラスへと来ていた。


隅々まで手入れが行き届き、色とりどりの花が咲き誇っている中にテラスはある。アリシアはいくつかあるベンチの1つに腰をかけるがシンは立場上座ることはできない。



「シン。座って。」



アリシアは自分の横にあるスペースを手でタンタンと叩きながらシンを誘う。



「いえ、座るわけにはいきません。」



「今は私の従者ではなくて幼馴染みのシンに言ってるの。」



「なら、遠慮なく。」



シンも口調を普段通りに戻してアリシアの隣に腰をかける。



「さっきはありがとう。けどちょっとやり過ぎじゃない?」



「それは反省してるって、つい手が出たんだよ。」



「なんで手を出したの?」



「なんでってあのオッサンがアリシアのことをあんな風に言ったから。」



「ふふ……ありがとね。」



「なんで嬉しそうなんだよ…」



「だって私のタメに起こってくれたんでしょ?」



「まぁそうなるな。」



「ねぇシン、なんで私のタメに起こってくれるの?」



「質問多くないか?そうだな、言ってもいいけど怒らないか?」



「怒らないから言って。」



「ん、なんかアリシアって妹っぽいから守ってあげたいんだよ。それにオレとしてもアリシアには色々感謝してるんだ。」



「い、妹?私はシンと同い年よ?」



「いや、それはだな、ほら、オレのが少し年上だしアリシアも子供っぽいところあるし、ね?」

(実は30歳近いとか言えないし)



「なーんか怪しいわね。けど、妹かぁ。」



アリシアは溜息をつきながら憂鬱そうに呟く。

そしてまだ膨らみかけの自らの胸部を俯いて見つめる。


「私ってそんなに子供っぽいかしら?」



「なんか言ったアリシア?」



「な、なんでも無いわよ。それよりも行きましょ。」



「ああ、学院長のところか。あの人なんか苦手なんだよな。」



「まぁ確かに学院長先生は飄々としてるわね。」



「それにもしかしたらオレのことに気付いてるかもしれない。」



「えっ?嘘?ステータスも見てないのに?」



「取り敢えず気にはしておいて。」



「分かったわ。それでは行きましょうか。」



アリシアの目がそっと細められてシンに手を向ける。

シンはそれに答えるようにアリシアの前に立ち、アリシアの手を取ってアリシアを立ち上がらせる。



「どこまでもあなたと共に。我が主。」



アリシアとシンは学院長室の扉の前に立ちノックする。中から入室を促す返事があったので扉を空けて入る。そこには学院長と決闘で審判をしていた眼鏡の教員と、ミーナとフウがいた。



「失礼します。ミーナも呼ばれたの?」



「……ん」



「まぁこのメンツが揃った時点で何の話をするのかは分かっているわよね?もう互いに知ってるんでしょ?」



「「はい」」



「まぁ取り敢えずシンくんの話は置いといて、聖女と賢者について考えましょうか。」



まずアリシアが口を開く。



「やっぱりいつまでも隠すわけにはいかないですよね?」



「んーそのことなんだけどね、いいこと思いついたのだけれど聞いてもらえるかしら?」



「聞きます。ミーナもいいわよね?」



「……ん」



ミーナも無表情のまま頷く。



「2人とも学院で授業受けなくてもいいわよ。」



「「え?」」



「だってあなた達に教えることなさそうだもの。そうでしょサシャ。」



学院長は側に立っていた眼鏡の教員を呼ぶ。



「はい。アリシアさんとミーナさんはもう既にこの学院で教えられるレベルを超えていると思われます。よってこれ以上に力を高めるのには著名な魔法使いを師として励むか、魔法のレベルを上げて昇華(ランクアップ)するしかありません。」



眼鏡をスチャっとしながら淡々と喋る。



「えっと、どういうことですか?」



「あなた達の決闘を見て判断しました。ステータスも見せて貰いましたが並の魔法使いをゆうに超えています。」



「だから2人とも学院に来なくても構わないから、わざわざ聖女や賢者のことをばらさなくてもいいのよ。」



「ほ、本当ですか?」



アリシアは思わぬ吉報に気持ちが昂っている。嬉しそうな顔でシンの方へ振り向く。シンは笑顔でそれに応える。



「そういうことだがら本来学院にいるはずだった3年間は好きにしていいわよ。旅に出ても、修行をしても、乙女として生きてもね。」



「あ、ありがとうございます!学院長先生!」



「そう言ってもらえれば嬉しいわ。だけどシンくんは別よ。私の元にいてもらう。」



「ど、どうしてですか?なんでシンは駄目なんですか?」



「あなたが思っている以上にシンくんは大きな問題を抱えているのよ。」



「そ、そんな」



アリシア悲しそうな顔をしてそっと呟いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


1週間後。



「アリシア、本当によかったの?」



「いいのよ。今度は私が待つ番よ。なるべく早く終わらせてね」



「分かってる。本当にありがとう。」



「頑張ってね。」



アリシアとシンは学院の校門から少し進んだところで別れる。アリシアは教室に、シンは学院長のところへ。



結果としてアリシアは暫くの間は学院にいることになった。そして学院長から出されたある条件を満たせばアリシアとシンは自由になれる。


学院長からの条件。それはシンがエンシェントエルフの力を完全にコントロールできるようになること。学院長はシンのことを最初から称号【慧眼】により気付いていた。【慧眼】は同族である人物のことを全て見通すことのできる称号。


クォーターエルフであるシンは学院長の【慧眼】の対象となる。そして、学院長によるとシンの中にあるエンシェントエルフの力は非常に不安定な状態にあるというのだ。


このままではいつ暴発、もしくは暴走してもおかしくない。シンはそう学院長から言われたときはかなりのショックを受けていた。


小さい街なら1人でも崩御してしまうエンシェントエルフの力を暴走させてしまえば被害は計り知れない。


だから学院長の元でエンシェントエルフの力をコントロールする術を付けてからでないと自由な行動を許可するわけにはいかないというのであのような条件が出されたのである。それに対してアリシアは待つことを選んだ。


シンは学院長の元で力をコントロールする修行に努める。



「今日もよろしくお願いします。」



「おはようシンくん。今日も頑張っていくわよー!」



「頑張ります。アリシアお嬢様を待たせているので。」
















ここまで読んでくれてありがとうございます。


次話は出来次第朝か夜の9時に投稿します。


よければ評価等お願いします。

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