入学式(3)
騒ぎから逃げてきたアリシアとシンに話し掛けてきたのは、シンが入学式で見付けた同士だった。
「ねぇシン、同士ってどういうこと?」
銀髪の女の子が口を開く。
「……説明して。」
続いて同士の金髪の少年が控え目に切り出す。
「えっとまずは自己紹介からかな?」
「そうして貰えると助かるよ。」
「じゃあ僕からで、僕はフウ。従者をしてるよ。」
「私は……ミーナ・クルーエル。そっちの主。」
どうやらミーナは必要なこと以外はあまり喋らないようだ。
「次はこっちの番だね。オレはシン。オレも従者だ。」
「私はアリシア・ヴェルディベース。シンの主よ。それと早く説明してくれないかしら、同士って何よ。」
「それはフウさんがオレと同じような状況に身を置いているからです。」
「『フウ』、でいいですよ。シンさん。」
「それならオレのことも『シン』と呼んでくれていい、フウ。」
「分かりましたよシン。これからよろしくお願いします。」
「と、いうわけでごさいますお嬢様。」
「まぁ確かに私たちと同じようにしているのは珍しいわね。」
「……そうね。」
「それにえっと、ミーナさんもクラスメートとしてよろしくね。」
「よろしく。……アリシアさん。……『ミーナ』でいい。」
「私も『アリシア』でいいわよ。」
「わかった……。」
「よかったらこれから一緒にご飯でもどう?」
「行く。……アナタと話したいこともある。」
「ならよかったわ。ほらシン行くわよ。」
4人は学院内にある食堂へ向かった。
食堂は貴族の通う学院のものだけあってまるで高級ホテルの1角のようだった。メニューは日替わりで変わる3つのメニューの中から選ぶことになる。
「これってオレ達も食べていいのかな?フウよ。」
「そこらへんの説明をまだ受けてないので分かりませんね。どうしましょうか?」
「飯抜きとかいやだぞオレは。」
従者の食事はまた別に用意されるはずなのだが、入学式ということもありまだ準備されていなかったのだがシンがそれを知るよちはない。
「最悪私のを分けてあげるわよ。」
「えっほんとゲフン、よろしいのですかお嬢様?」
「空腹で被っていた猫が剥がれかけたわね。いいわよ別に、私はそんなに食べないし。」
「ということでオレのほうは解決したけどフウはどうする?」
「僕はまぁ食べなくても平気ではないけど我慢はできるから。」
「……食べなさいフウ。倒れられても困る。」
「お嬢様がそう仰るのなら頂きましょう。」
フウのほうもミーナが分けることになり無事に解決した。
食事を始め、半分ほど食べ進めたところでミーナが切り出す。
「アリシア。ステータス……見せてくれない?」
「えっ?どうして?」
「アリシア、私と……同じ。」
「もしかして三属性魔法適性のことかしら?」
「それも……ある。」
「『それも』ってどういうこと?」
「見せた方が早い……『ステータス』。」
ミーナがステータスを表示する。
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ミーナ・クルーエル
Age 12
Lv28
体力 170/170
魔力 960/960
筋力 E
敏捷 D
防御 F
魔耐 A+
【スキル】
氷魔法適性Lv.5
光魔法適性Lv.2
付与魔法適性Lv.2
【称号】
クルーエルの子・貴族・賢者
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ミーナのステータスには『賢者』があった。
『賢者』は『勇者』、『聖女』に並ぶ最高位の称号だ。そして、『賢者』のもつ能力の1つに一定範囲内に存在する人のステータスを読み取るというものがある。よってアリシアは気付かれている。
「アリシアは……聖女だよね。」
「アナタこそ賢者だったとは驚きね。アナタはどうやって隠したの?」
「付与魔法で……ステータスの一部を隠蔽できる。」
「なるほどね。となるとシンのも気付いてる?」
「……うん。シンのほうが驚き。」
無論シンのエンシェントエルフの件である。
「まぁそうでしょうね。私のは珍しいけど他にいないという訳ではないからね。シンは唯一の存在だしね。」
ここでシンが口を挟む。
「失礼ながらミーナ様はあの一族についてはどれほど知っておられますか?」
「文献で読んだだけ……。」
「一応僕のことは口外しないでいただけませんか?」
「大丈夫……フウにも言ってない。」
「何のことを話しているのか分かりませんがお嬢様が話さないのであれば僕は何も聞きません。」
「すまんフウ。できれば隠し事はしたくなかったんだけどな。」
「気にしないでくださいシン。」
「そう言ってもらえると助かる。」
「アリシア様のことも決して他言しません。」
「あ、それならそんなに気にしないで大丈夫よ。いずれ明らかになるの、落ち着いたら学院長から発表されるはずだから。」
「そうなのですか。私たちはどうしますかお嬢様?」
「……アリシアが言うなら私も。」
「そんな、隠せるのなら隠した方がいいんだから。」
「それは無理……抗魔法を使われたらバレる。」
「あ、そっか抗魔法があったわね。それなら申し訳ないのだけれど一緒に発表して貰ってもいいかしら?」
「……そのつもり。」
「ありがとうミーナ。」
「……私もありがと。」
「それにしてすごいな。同じクラスに『聖女』と『賢者』が揃うなんて。」
「本当にすごいのはシンのほうなんだけどね。さっきも言ったけど私たちは他にもいるのよ?あと、口調が戻ってる。」
「あ、すいません。しかし、オレのは少しマイナーな感じですから。」
「あはは、シンは面白いね。それに益々シンのあれが何なのか気になるよ。」
「シンも私たちと一緒に発表する?」
「全力で遠慮させてもらいます。」
シンが素早く頭を下げると他の3人は笑っていた。ミーナはその銀髪を少し揺らしてクスッとしただけだが。
4人は食事を終えてそのまま教室へと向かった。教室に入れる護衛も1人ずつときまっていたがアリシアとミーナは最初から気にしなくていいので関係ない。
教室に入ると既に何人かは教室で思い思いに過ごしている。護衛の中にはシンたちが着ている学ランモドキを中年のゴツイおじさんが着ていたりするのでとてもシュールだ。
_______________むさくるしいな。
シンはその光景を見た時に背筋が若干震えていた。
アリシアとミーナが席に付き、シンとフウがそれぞれその横に立つと、教室の前のほうから金髪の少女が後ろに屈強な護衛を連れてやって来た。
そして持っていた扇子を閉じてアリシアとミーナのほうを指してこう言う、
「アリシア・ヴェルディベースさんとミーナ・クルーエルさんですわね?」
「そうですけど、、、」
「……ん。」
「アナタたち登録するときは随分と注目されてた見たいじゃない。」
「ええ、まあ。そうみたいですね。」
「……ん。」
ミーナはブレない。
「気に入りませんわ!私以外に注目されるなんてありえませんわ!」
「ええ??」
「……ん。」
_______________やっぱり関わらない方がよかったな。もう遅いけど。
フウは横でアタフタしているが、シンは1人で納得していた。
アリシアとミーナに無茶苦茶なことを言っている少女は入学式に向かう際に大量の護衛に守られていた、少女だった。
その少女はプライドが高いのだろう。恐らく自分がナンバーワンだと思っていたのだ。しかし、あげられた歓声は自分のものよりもアリシアやミーナのほうが多かった。そのことが許せなくてこの少女はアリシアとミーナに突っかかってきたのだ。
そしてとんでもないことを口に出す。
「2人とも私と決闘しなさい!私のほうが優れているということを愚かな愚民に知らしめてあげますわ!」
その少女は意気揚々と宣言する。その頭から垂れている「縦ドリル」を揺らしながら。
ここまで読んでくれてありがとうございます!
金髪縦ドリルは出したかったキャラの1つです。
次話は出来次第朝か夜の9時に投稿します。
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