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贈剣式

やっと10話!

『贈剣式』。


己の剣と命を主に捧げることを示す儀式。中世のヨーロッパで同じようなことをやっていたようなやっていなかったような。この世界ではよく知られているものらしくて、父さんとギルザールも昔やっていると聞いた。



儀式の進行を説明され、それが終わったところで屋敷が見えてきた。


隣にいるアリシアは神妙な面持ちをしている。アリシアにとっても『贈剣式』大事なことでこれを終えればほぼ一生オレが付きそうことになる。変な意味じゃないよ。

アリシアが俺のことを嫌っているとは思っていないが、不安なのだろうか。それとも、もしかしたら嫌なのかな?そうだったらオレのメンタル崩壊待ったナシ。


ただオレのそんな考えは数秒後に否定された。



「シンは、私なんかの従者でいいの?」



「え?なんて?」



「だから、本当に私と『贈剣式』をしてもいいのって聞いてるの。」



どうやらアリシアはオレと同じことを考えていたらしい。ここ一発精神年齢は既に成人した男(7歳)として頑張らないとな。



「全然大丈夫。むしろアリシアの従者なら喜んでなる。てか他の誰かに譲りたくないし。」



「ええ?!本当に?」



「本当に。」



「そ、そっか、それならいいんだよ。」



アリシアの疑念は解決されたようなので、今度はこちらから



「アリシアの方こそいいの?オレを従者にして。下手すると一生オレはアリシアの近くにいることになるんだけど。」



「私は全然いいよ!ていうかシンにはずっと近くに、、、」



最後のほうは声が窄んでいまってよく聞こえなかったが取り敢えず一安心。



そうこうしていると式の準備が出来たらしい。


式の準備といっても道具を用意するだけなのでそんなに時間はかからなかった。屋敷にある広間には武器としては到底使えそうにないほどに装飾された1本の直剣が台座に鎮座されていた。



「贈剣式」ではまず最初に決められた言葉を主となるものと従者となるもので互いに交わすことから始まる。



そもそも「贈剣式」を7歳で行うことは異例らしい。普通はこの世界での成人年齢である15歳付近で行う。これは従者の候補が十分に成長してから決めるためであり、それまでは大人に護衛をしてもらうのがこの世界での一般的な貴族の子息のありかただ。


アリシアとシンは他の候補がいないことも原因の一つだがシンの能力ももう既に十分なものだということもある。さらにギルザールは称号【真実を見極めしもの】により、これからの伸びも確約されているため、従者としての実力も約束されているのだ。それにもう一つ急がなくてはいけない理由もある。アリシアが「聖女」だったことだ。


アリシアが「聖女」であることは極力隠したいとギルザールは考えたがそれを避けられないことがアリシアには待っている。

この世界では貴族の子息は12歳になると半強制的に学院に3年間行かなければならなくなる。その時は貴族を単独で行かせる訳にもいかないのでほとんどの場合専属の護衛、そしてアリシアなどのその前に従者を決めている人はその従者を連れていく。


その学院に入る時に問題がある。学院に入る目的は貴族としての勉学を修めることと自らの力を高めることであり、入る時、そして定期的なステータスのチェックがある。アリシアが「聖女」であることはこの時に絶対に周囲に知られてしまう。

そしてそのことでアリシアが好奇の目で見られることはほぼ必然的なものであることをギルザールは知っている。彼が子供の頃に学院にいた時にも「聖女」がおり、彼はいつも「聖女」が苦しんでいることを【称号】で知っていた。


だからこそその時にアリシアの味方になれる存在が必要なのだ。ギルザールはそれにシンを選び、早い段階でアリシアの従者とすることでシンに従者として必要なこととアリシアを守れる強さを身に付けて貰おうとしている。このことはシンの父親でありギルザールの従者であるハルトにも先ほどアリシアが「聖女」だと分かり、馬車の中でしてある。

ギルザールは自分の娘であるアリシアを中心に考えたこの案をハルトに話すとき、断られるのではと懸念していた。いくら主である自分の頼みでも息子を言い方によれば「利用する」ような形になるからだ。しかしハルトは了承した。ハルトからは、


「我々はあなたがたの剣であり盾です。それは、例え『贈剣式』を行わなくても同じこと。シンにも幼い頃からこのことを教えています。ですから遠慮などしないで下さい。」



ギルザールはその言葉に感謝し今回の「贈剣式」を決行する。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「我、シンはこの身を主、アリシア・ヴェルディベースに捧げその御身を守る剣とし、この命果てるまで主のためにあることを此処に誓う。」


「我、アリシア・ヴェルディベースは今、此処に従者、シンを我が剣として共に我が道を歩む者とする。」



シンは鎮座されていた剣を手に取りアリシアに向かい片膝をつく、剣先を自分の喉元に向け、柄がアリシアの方にいくように構える。そしてその刃の「右側」を軽く首筋にあて剣に血を滴らせる。アリシアはその剣の柄を取り、今度は自分の方に剣先を向け刃の「左側」を首筋に当て、同じように血を滴らせる。


その剣先を用意されていた水晶に向けて、2人分血液が混ざりながら水晶へと垂れていく。水晶が淡く光る。これで「贈剣式」は終わる。



シンはフー、と息を吐いて



「アリシア、これからよろしく。」



「こちらこそよろしくシン。」



互いに微笑み合っていると周りで見守っていたメイドや執事達から拍手が送られる。


そしてその中の1人のメイドがギルザールと目を合わせ何かを合意したかのようにその頭を下げると、広間の外に出て何かを手にシンとアリシアの元へ向かって来た。


そのメイドの手にあったものは金属製の腕輪。メイドはアリシアにその腕輪を手渡し、耳許で何かを囁くともとの位置に戻っていった。



「シン。この腕輪が貴方が私の従者であることの証よ。」



アリシアはシンに腕輪を渡す。その腕輪にはヴェルディベース家の紋章が刻印されていて使われている金属も上等なものだった。シンの腕にはまだまだ大きすぎるの本来ならこんな時期に渡すものではないからであろう。



それで式は終わり、シンとハルトは帰路へ着く。シンにとって今回の贈剣式はなかなかいいものだった。実はもしかしたらと思い先程ステータスを確認したところ、スキル【血盟契約】が発動していた。



「シン。そんなに嬉しいのか?」



「え?なんで分かったの?」



「顔に出てるぞ。」



どうやらシンはずっとにやけていたらしい。



シンは少し恥ずかしい思いをしながら家に帰った。






ここまで読んでくれてありがとうございます!


次話は出来次第朝か夜の9時に投稿します。


よければ評価等お願いします。


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