召集
鉛筆の芯が折れたらどうすればよいのでしょうか?
…thinking…thinking…thinking…thin。。
!kn!kn!
空転する余の思考を遮って。
ドアを敲く音。
少副・楠守屋である。
「御注進。臨時参議会です」
(…!)
「臨時参議会か」
「御意」。
余は水道で顔を洗い。
炭素銃とメモ用紙を持って議場に急いだ。
楠少副が「お疲れ様です」といった類の語を省いたのは故実である。
他方。
緊急時にあって洗面したり所持品を調えたりするのは礼に反する。
あまつさえ。
出力を上げれば得物にもなる炭素銃を議場に持ち込むなど本来あり得ない。
だが。この際。
容儀を調えることと記録を取ることは重要だ。礼に反しても。
…
やはりだめだ。
前世の記憶にとらわれるのが余の悪癖である。
炭素銃の持込など…咎められれば大変なことだ。
それに今生の世界の礼には物理的基礎がある。
得物を議場に持ち込むことで国のマナを浪費したり反動で余が内傷を負うリスクも高い。
メモ帳も炭素銃も要らぬ。
指導者にして神祇伯たる余である。
聴いて憶えられぬ話ならそれは不急のデータだ。
余は議場に向かう。
メモによる記録を棄てて。
時間による忘却を超える創造のあることを
大いなる破壊に祈りつつ。