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謁見
「朕が信を措くのは卿の信仰と前世の記憶だけではない」
その人は言う。万王の王にして唯一の王たるその人。
「だが卿の言には。常の卿らしからぬ矛盾がある」
橘具視は君王の言をただ聴く。
「卿の前世には錬金の兵器があって何十万の人が死んだ例あったとか」
「いかにも…されど畏れながら」
橘具視を手で制したその人。
姓は天。諱は書く人がいない。
「錬金の爆弾を落とした者はただの軍官。卿が前世に生まれたときは世を去っていたと卿は言う」
「げにも」
「されば。何十万人の同族を殺したとて力と寿を得るわけではない」
…(いわんや玉葱族をや)
までは敢えて言わない。
「卿の説は…魔王と彼の一党が『勇者』であり『経験値』なる概念をもつことを前提しているが…根拠はあるのか」
「畏れながら科学的根拠は有りません」
「玉葱族も朕が臣民。魔王が『勇者』を標榜して討つというなら救援はしよう…だが。強制移住、あるいは…言うを憚る策。再び聞するなかれ」