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朝子と夜子 2

“私”と夜子は双子だ。


アクティブなスポーツが大好きな私は同じく体育系のあの子を好きになった。同じサッカー部だったから話もあったし、なにより性格がぶっ飛んだクールな子だった。

だから文系の夜子があの子を好きだと知ったときは正直驚いた。

だからといってその時の私が身を引くという考えには到らなかった。

中学二年生のとき、あの日、夜子がいつも以上に悲観的に見えて喧嘩をしている間も悲しくて胸が一杯になった。夜子には笑っていて欲しいのに、私と一緒に居るといつも悲しい顔をする。

同じ血の通った姉妹なのに・・しかも双子なのに・・どうして私達は仲良く出来ないのだろうか。

自分が一歩後ろに下がって“ごめんね”と謝れば丸くおさまるようなものなのに、私はそういう事にかけては不器用だからあの時も醜い喧嘩をして終わってしまった。それから自分の部屋に戻った時も、心のモヤモヤをどうにも出来なくて側にあったクッションを思いっきり蹴った。私は本当に不器用なんだ。


「野田たちってさ、姉妹なのにすっげえ仲悪いよなあ〜」

あの子が会話にそんなことを引っ張り出してきた。その日も一緒に下校していた。

「私と夜子?」

「うん。なんでもお前の姉ちゃんのほうがヒドいんだろ?殴るとか言うじゃん。正直いって怖くない?」


私と夜子は事実殴り合いの喧嘩をする。

だけど・・そのことを肯定していいのは私たちだけだ。私たちだけなんだ。


「それ、誰から聞いたの?」

「え…っ。みんなが・・言うから・・さ。」


ふふふ、と私は笑った。不敵に。


「ウワサって八割がたウソなんだよ」

「えっ・そうなの・・?」

「そうそう。私と夜子は喧嘩するけど仕掛けてくるのはこの私なんだから!夜子は大人しい子だから逃げてばっかりいるの。殴るのは夜子じゃなくて……実はこの私なの」


だから、と私は満面の笑みを浮かべて――あの時は自分でも恐ろしいくらいの満面の笑みを浮かべた――あの子に言ってやった。


「ねえ」


と、あの子に話し掛けると、可愛そうに、あの子はびっくりして飛び跳ねた。


「もし夜子と私とどちらかを好きになるんだったら・・断然、夜子をオススメするわよ。だってあの子、わたしみたいに人を殴ったり蹴ったりしないもの」


それからあの子は私とは一切お喋りしなくなった。

私には近寄らなくなったし、――私の言葉が裏目に出たのか、朝子もあの子からスルーされてる――通り過ぎるときなんて道を大回りして通り過ぎていくもの。

ちょっと言い過ぎたかな、と思った。

私達双子は喧嘩するけど・・時に醜く喧嘩するけど、少なくとも私は夜子のことが好きだ。


双子の片割れとして、一人の妹として、血の繋がった姉妹として私は夜子のことが好きなんだ。


ただ、この気持ちを伝えることの出来ないほどお互い不器用なだけ。


いつか喧嘩一つしないで仲良く手をつないでお散歩してみたい。

今はいがみ合うほど仲が悪くても、きっと絶対に仲良くなってみせる。


だって、私達せっかく血の繋がった姉妹だもの。

ねえ、夜子。

わたしはそう思うんだけど、夜子はどう思うかな?

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