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02_心を読む少女

精神と時の部屋があったらなぁ…

教室のような“ぜろ”の内部は、今日も今日とて代わり映えのしないメンバーが揃っている。

俺は自分の席へと座り、暇つぶしにと国外の情報が乗っている週刊誌を眺めていた。

北の国の歌手が可愛いとか、新種の獣が発見されたとか、大した興味もないものばっかりだ。


今にも眠気に負かされそうな俺の元へ、眼鏡を掛けた大学生風の男、帝道ていどう雄一ゆういちがやってきた。

一応、リーダーのような役割なので何か連絡があるとこうして伝えに来るのだが。


未空みそら、仕事だぞ」


「内容は何だ?物取りとかだったら却下だぞ」


俺は気だるい返事を返し、帝道の無表情を見た。

すると、滅多に感情を表に出さない帝道の口元が、笑みの形に変わる。

面倒そうな仕事がきたときの、人の悪い微笑だ。


「安心しろ、人探しさ」


「…人探し?貴族の娘でも家出したのかよ、面倒だな」


「いや、違う」


「…貴族とかじゃなけれりゃ、こっちまで仕事が回ってこないだろ。民間人の人探しはギルドとかの役目じゃないのか?それとも…」


「あぁ、そうだ。“授式持ち”だ」


つまりは、俺らと同じ。

授式持ちとは、授式を持つ…化物染みた能力を持つ者のことをいう。

そんな奴を見つけろとなると、なるほど確かに民間専門には荷が重く感じられる。

それに、恐らく見つけて終わりじゃないだろう。

殺すか、新しい“零”の一員となるかのどちからとなるはずだ。


「面子は俺と灯我だろ?」


「あぁ、いつもの面子で、いつもの通りに頼んだぞ」


「りょーかい」


そういえば、俺もそろそろ後輩が欲しくなってきたかも知れないな。

俺は帝道から標的の写真を受け取り、近くに灯我を呼びつけた。


「人探しって聞いたけど、本当にやるのか?つまらなそうだぞ」


「金さえもらえればどうでもいい。別にお前がやらなくても構わないんだが?」


来るなり早速面倒そうなため息を吐いた灯我だが、口調とは裏腹に割りと楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

分かりやすい奴だと思いながら、一応やるのかやらないのか聞いてみた。

すると、俺から写真を横取りして高らかに宣言する。


「そんなわけ無いだろっ、俺はやるぞ。授式持ちなんて面白そうだしな!」


赤みを帯びた髪に、活発そうな印象の顔立ち。見かけによらず、いつも活発で仕事のときも変わらない。

それが、赤龍せきりゅう灯我とうがだ。

“龍”の姓を与えられし、正真正銘の実力を持つ一族の血を引いていて、こと戦闘においては俺に劣ることはないほど。


「んじゃ、早く行くぞ。ギルドなんかに保護されたら厄介だ」


俺たちが今回、見つけるべき標的。

まだ幼さを残す、小学生ぐらいの女の子。その姿が、灯我の握った写真に写っていた。

市街を歩いているときに撮ったのだろうか、ランドセルを背にしょって俯き加減で歩いている。

本当に授式を持つというのなら、過去に何らかの傷を負っているかも知れない。


その名は、心を読む少女。


◇ ◇ ◇


市街は、食べ物の匂いがどことなく漂ってくる場所だ。人が多く、そこに店舗を構える店も少なくない。

そのようなところで人を一人見つけろというのは、やはりというか流石に困難だ。

数時間ほど歩き回り、未空は半分諦めの境地に入っていた。灯我は、いまだにどこか探し回っているらしいが、簡単には見つからないだろう。

小学生ぐらいの背丈の少女なら、目に付くと思ったがそうではなかったらしい。

第一、そのぐらいの年齢ならここではあまり珍しくもないし、視界には子供の姿などあちこちに映っている。

一度、深いため息をついた未空は天を仰いだ。これが何かの討伐などなら、どれほど楽だっただろう。



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