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26話

 部屋に着いた俺たちを待っていたのは……女の人が二人。

 一人はこの前戦ったリールだ。なんか綺麗な服を着て、子供のような体の癖に異常に大人っぽい。

 

 もう一人は白を基調としたゴージャスなドレスに身を包んでおり、頭にはティアラが乗っている。


 薄い緑色の髪に鋭い目つきをした青い瞳。

 大きな胸元を強調するようなドレスが印象的だ。


 もしかしたら紗枝と同じぐらいかもな。

 

「なんであなたがここにいるのよ! 菊之さんはどうしたのよ!」


 すでに戦闘態勢に入っている紗枝だが、俺はそれを制止する。

 さすがにここでは戦いは起こらないだろう。

 

「私がここにいるのは留学生だからよ。知ってるかしら? 最近魔界と人間界では留学が流行ってるのよ」


「流行ってるかは知らないが、確かに最近は多いな」


 俺は紗枝と話してるリールよりちゃぶ台の上に偉そうに座っている女の人のほうが気になる。


 服装はいかにも王女様のような格好だ。

 なぜちゃぶだいに座ってるのかも気になるところだけどね。


「リール、謝って。あんたはこの人達に迷惑かけたでしょ?」

 

 リールは逆らえないようだ。

 すごく嫌そうにリールは頭を下げる。


 一応話し合いはできるようだ。

 

「ごめんなさいね」


 一言そう言ってリールは女の人の後ろに下がる。

 こんな謝り方でいいの?


 紗枝のほうに顔を向けると首を傾げられた。

 俺が言いたいことが分からないようなので耳に顔を近づける。


「お前あんなんでいいの?」


 紗枝はなぜか頬を染めながら、


「別に気にしてないのよ。確かに捕まってたことは嫌だったけど、それ以上に楽しかったし」


 もじもじとしながら言う。

 まあ、顔をみても嘘を言ってるような顔じゃないし、本当にいいのかも。


 だったら俺が怒っても馬鹿みたいだよな。

 俺は緊張を解き、ちゃぶ台から少し離れて腰を下ろす。


 紗枝も俺に倣って隣に座って、いざ話し合い。


「そんでそこの人はなんなんだ?」


「魔族よ」


「もっと詳しく頼むよ」


「あなたの婚約者よ」


 どうやら頭がおかしいようだ。


 俺は端的に答えたリールにさらに求めたが、リールはてきぱきとテレビを点けた。

 なにしだしたのかと俺がいぶかしんでみていると、つけたテレビはニュースのようだ。


 ニュースにはいくつかの写真が張り出されていた。

 その写真はなにやら魔族の中でも偉い人を表すらしい。


 写真を目で追っていく。

 追っていくと言っても三枚しかないのですぐにすべてを見ることができた。


 三枚目の写真を見た瞬間俺は息を呑んでしまった。

 隣からも息を吸うような音がしたのでどうやら紗枝も驚いているらしい。


 アナウンサーが一人ずつ説明を進めていくのだが、最初の一人は王子で、残りの二人は王女らしい。


 目の前の子は……王女。

 王女は俺と視線をあわせると、くすっと笑い、足を組みかえる。


 よかった。もしもドレスが短いスカートだったら今足組み替えたときに中が見えてたよ。

 よくわかんねぇし本人に聞いてみるか。


「あんたなんなんだよ?」

 

「私は王女。魔界から、あんたに会いに来たの!」 


「俺に?」 


「そうよ!」


 王女はちゃぶ台から立ち上がり、俺の方にダイブ――抱きついてきた。

 俺は女の子を受け止めそのまま押し倒された。


 女の子は俺が受け止めてくれるのだと予想していたのか、随分と速い動きで俺の頭を床に押し付けた。

 なんつー力だ。さすが魔族。まったく手をどかせない。


 俺が悲しくも力負けしていると、女の子が余った手で顔に掛かった髪を耳にかけながら顔を近づけてくる。


 なにを! なにをする気なんだ!?

 俺の頭はパニックに陥り、どうしよ、どうしよ慌てていた。


 そして、俺の口は――唇は柔らかい何か、唇によって塞がれていた。

 しっとりと湿った唇。ぷっくらとした色のいい女の子の唇が俺の唇に……。

 

 と思ったら、舌を入れてきた。俺の舌を吸うように絡め、離さない。

 どうやら力は体のありとあらゆる場所が強いみたいだ。

 

 必死に引っぺがそうと体を押すが動かないし、頭を振ってもびくともしない。

 俺はいきなりと驚きにより始まりの酸素が少ないので呼吸をしたいのにまだこのキスは続くようだ。


 恥ずかしすぎて、一周まわって冷静になった俺は助けを求めるように紗枝の方を横目で見る。


 すると、目を見開いていた紗枝。

 紗枝は何が起こっているのか理解できていないのかぽかーんと口を半開きに間抜け面。


 こんなときに、親友のピンチに凜也は何をやってんだ!

 親友を助けろよ!


 と、俺が横目で紗枝を見たのに気づいたのか、女の子は少しむっとした表情を作り、手で、視界を遮った。

 目を隠されたわけではなく、紗枝の方向に手をバリケードのようにおいただけだが。


 というか、肺活量まで魔族は多いのか!?

 魔族はまったく止める気配が感じられない。


 女の子の顔を見てみるがすごく、本当に幸せそうな顔しかうつらず、そこにはまったく辛いという文字は見えない。


 だけど、只の人間様な俺はいい加減本当にまずくなってきたので今すぐにシャバの空気が吸いたい。

 俺がタップを何度もすると、意味が通じたのかようやく離してくれた。


 俺はむさぼるように深呼吸をして、口についた涎――たぶん女の子の物だと思う――拭う。

 なんだよ、今の過激なキスは。つうか――お、俺のファーストキッスが。


 キスは相思相愛で同意の上でするものじゃないのか?

 なんだ、これ? あれか、責任とってよとか言えばいいのか!?


 つうか、未だに全然事情が理解できないんだけど、結局なんなの!?

 頭の中が冷静になるのはきっと一日ぐらい空けないと無理だぞ。


「落ち着いた?」


 女の子は俺が落ち着くのを待っていたらしい。

 

「落ち着いてはいないけど、さっきよりは落ち着いた」


「そう。だったらもう一回しましょ?」


「させるかぁぁぁーーーーっ!」


 俺が叫ぼうとしようとした瞬間。

 さっきまで放心状態に陥っていた紗枝が雷鳴のような激昂と共に俺と女の子の間に割って入った。

 

 い、いいぞ。

 なにかよく分からない状況だから、今は少しでも時間がほしい。

 ――考える時間がな。


「修也くんは私の物よ!」


「いや、お前の物でもないからな!?」


 くそぅ。俺が落ち着ける時間はないのかよ!

 本当にさっき見捨てた凜也がこの場にいないのが悔やまれる。


 紗枝の声を聞き、女の子はいかにも嫌そうな顔つきをする。


「なに? あんた修也のなんなのよ? 修也は私の物よ」


 ああ、くそ。何でさっきから俺のランクが人間じゃなくて物なんだ。

 それにこの女の子はなんなんだよ!


 とにかくだ。

 俺がこの場に残るのは得策じゃないだろう。


 だったら簡単だ。


「あっ! 外に宇宙人が!」


 俺は声を張り上げて窓の外を指差す。

 全員が見た瞬間に逃げるんだ。


 俺がその機を狙っていると、なぜか全員がこちらを見ていた。

 ほ、ほら宇宙人がいるよ!


 指をもう一度動かして強調するが誰も見向きもしない。

 なんでだ?


 咄嗟に思いついた割りにはすごいいい案だと思ったんだが。

 と、女の子が俺の前に歩いてきて、


「そう言えば自己紹介まだだったね。私はミーカルナ・メニーム・アストニア。魔界ではミナって呼ばれてるわよ。だから、修也もミナって呼んでね」


 手を取りぶんぶん上下に揺さぶった。

 俺はさっきのキスの件があって警戒していたが、特に危険もなさそうなので良かった。


 苦笑い。

 今の俺にはそれ以外の選択肢はない。


 俺はミナの後ろで何か大きな荷物を部屋にいれているリール。


「何やってんだ?」


 尋ねると、リールは何言ってんだこいつと言った目で見てくる。

 何してんだよあんたは。

 

「これから結婚するんだから一緒に暮らすのは当たり前でしょ?」


「……は?」


 なに、言ってんだこいつ。

 ――一緒に暮らす?


 どうやら俺はさっきからずっと耳が壊れているみたいだ。

 婚約者とか、結婚とか。


 全部気のせいだよな、な。

 目の前にいるのは新しい転校生が挨拶に来た。


 ただ、それだけなはずだよな。

 そうだよ。そもそも、最近いろいろあったがそれはこの前終わったんだから、もうないよな。


 これからは普通の日常に戻るんだ。

 もう、非日常は終わったんだよ。


 ミナはそんな俺に、日常を壊す一言を――散弾銃のように浴びせた。


「あんたは私の結婚相手よ! 異論は認めないから!」


 ……俺はいや、紗枝を含めた俺たち二人は固まるを通り越しもうわけの分からないくらいに固まってしまった。

 

 どうやら、俺はまだ日常には戻れないようだ。

 一つの事件に首を突っ込むとその事件は連鎖していく。


 つまり、一つの事件に巻き込まれてしまった俺は、二つめの事件――結婚がどうたら叫ぶ姫さん事件――に巻き込まれたのか。


 もしも事件があったらもう絶対に首をつっこまねぇぞ。

 俺はあははっと引き攣りながら乾いた笑いでミナと見詰め合っていた。


 これから、また面倒が始まるのかぁ……。


短いですがこれで終わりです。

そろそろ受験勉強したほうがいいんじゃないかと思っています。

とりあえず、この作品を一区切りつけられたのでよかったと思っています。

これからは時間ができたら少しずつ書いていきたいと思います。

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