25話
途中喉が渇いたので俺は自販機でジュースを買っていた。
夜は涼しいな。
近くのベンチに座り、俺は紗枝のことを考えていた。
紗枝は体を取り戻し、重たくなった。
今までぴょんぴょん跳ねたりしていたのは、なんちゃらって魔法の効果らしい。
後、魔族について国から発表があったな。
今までは魔物が変化する物だと言われていたがそれは稀な例で本当は魔界から来ていると。
世界の人々は戸惑っていたがそれでもいつかは知る事になっていたんだ。
早いか遅いかだけだ。
ただ、魔界と人間界の関係は発表されてない。
でもその決断は間違ってないと思う。
一度にそんなに秘密をばらせば混乱を煽るようなものだ。
後そういうことが分かった事から魔界から留学生が来るようになった。
俺たちの学校には関係はないが、国立の魔法学校には既に何人か来ているらしい。
たぶんリールもどっかの学校に行くのだろう。
リールで思い出したがリールに捕らわれていた魂もすべて戻った。
日本で原因不明で意識がなかった人は全員意識を取り戻していた。
良かったよ。
ま、すべて終わったことだし、俺には関係ないことだからここら辺で考えるのは止めておこう。
「修也くん。隣いい?」
と、俺が熟考していたら紗枝が現れた。
「別にいいよ。体は大丈夫か?」
紗枝は昨日まで入院していた。
体が戻った事により正常に動いているか検査していたんだが、今日は普通に学校来ていた。
学校のみんなの記憶はリールが解除したからか戻っていた。
そのせいで昼間は学校で引っ張りだこで状態を聞く時間はなかった。
メールでは訊いていたがそれでもやっぱり心配なんだ。
友達だからな。
「いろいろあったけどまあ、健康だしいいわ」
「そうだなぁ。俺も傷は治ったし、相変わらず元気な凜也は今頃質問責めにあっているだろうしな」
「ははは。それより、菊之さんはまだ帰ってないの?」
「一体どこで何やってるのか知らないけどね」
リールの事はまったく世間では話題になっていない。
だから、俺たちが知る由もないんだ。
「私、菊之さんに感謝してるのよ。本当はあそこで一生を終えるのもいいかなと思ってたのよ。自分のやりたいこともやったしね」
「やりたいこと?」
俺が訊くともじもじとする。
なんだどっか悪いのか?
俺が心配していると紗枝は動かない口を一生懸命動かすようにして、言った。
「しゅ、修也くんに告白……」
聞いた俺が馬鹿だったよ。
頬をピンク色に染める紗枝だが、それをからかう余裕なんてない。
だって俺もたぶん顔、赤くなってるし。
「分かったよ。とりあえず俺は寮に戻ります」
「待って。修也くん、もう一度告白していい?」
「いや、そんな前置きしないでくれ」
紗枝のことは好きだ。
友達としてだが。
だけど、確実に前よりも好きだし、正直自分の気持ちが分からない。
友達としてと言ったが本当はどうなのか分からない。
だから、今告白されたらどう答えるか自分もよく分からないんだ。
できれば、ちゃんと考えたいがいろいろありすぎた。
だから、もう少し落ち着いた時間――つまりこれから先の時間、これからは暇ができるはずだから良く考えてみよ。
自分の本当の気持ちをな。
「今告白されても、答えるのは後になっちまうんだよ。だから、今はやめといてよ」
「そう、分かったわ」
「分かってくれたか」
これで、しばらくは自由時間ができる。
俺が冷や汗を拭うような仕草をしていると、
「返事は後でいいから告白するわ。修也くん。昔からずっと好きでした。今回助けてくれてさらに好きになりました。付き合ってください」
ぶっちゃけやがったよ!
分かったってそっちかよ!!
俺は顔面赤面でジュースを煽り飲む。
これで、少しは体温は下がってくれたがそれでも風呂に入った後のようなこの火照りはやまない。
「……考える時間をくれ」
「分かってるわよ。急かすつもりはないわよ」
そう言って、紗枝はベンチからたちあがる。
「寮に戻るのか?」
「ええ、私、恥ずかしくて死にそうなのよ! 澄ました振りをしてるだけで頭の中は噴火してるのよ!」
「俺も、帰るかな」
いつまでもここにいてもしょうがないから、ベンチから立ち上がる。
「じゃあ、一緒に帰りましょ」
「恥ずかしいのに一緒に帰れるの?」
「それは別腹よ」
「俺は食べられるのか?」
「食べてもいいわよ?」
「遠慮しときます」
部屋に戻ったらどうすっかなぁ。
テレビでも見るか。最近は魔族関係の話題が多いからな。
俺も気になるしな。
「修也くんちょっと部屋のテレビ見せてくれないかしら?」
「へ? なんで?」
「そ、その、部屋のテレビが壊れちゃったのよ」
「だったら寮の談話室で見れば?」
談話室にはそりゃぁもうでっかいテレビがある。
いつも誰かがテレビを見てるがそこも今はニュースを見てるはずだ。
学校の生徒も魔族に関しては興味深々だからな。
だからそう思って言ってやったんだが紗枝はすごい睨んできた。
こ、怖ッ!
「私は、修也くんと……一緒に観たいのよ! そのぐらい察しなさいよ!」
怖かった般若のような形相は少し柔らかくなりまだ頬は赤くなっていた。
俺が悪いのか?
テレビが観たいと言われてそこまで察せなかった俺が悪いのか?
一体どんな頭の構造をしてる奴がそこまで理解できるんだよ。
俺には無理だ。
とにかく恥ずかしかったし俺はぶっきらぼうに「別にいいぞ」とだけ言ってそそくさと寮に戻っていった。
「ま、待って!」
早足で歩いていた俺の後を一生懸命追いかけていた。