22話
この森は昔よく探検で入ったことがあったから頭の中には地図ができている。
森にはいくつかの洞窟があるので、俺と凜也はしらみつぶしで探している。
俺が探す予定だった最後の洞窟に入り、持ってきていた懐中電灯で中を照らす。
広くはないので中を探すのはすぐに終わった。
ここじゃないみたいだ。
これでこっちはすべて外れ。後は凜也に頼むしかないな。
俺より探す洞窟が多い用がなくなったからでるかなぁ。
「何をお探しなのかしら?」
「黒水晶を探しているんだよ」
後ろから声がかかったので振り返った。
女の子だ。
小さくて子供のような姿をした女の子。
会っちまったよ。
さっきみた女の子で、魔族だな。
「さっきの魔力はあなたね。今は魔力を消してるみたいだけど……すごい、魔力だったわね。面白いわ。あなたを私の餌に決めたわ」
時間を稼ぐしかない。
凜也が魔力の供給を絶つまで、俺はこいつを足止めか。
できれば凜也と立場は逆になってほしかったなぁ。
「おとなしくすれば、痛くはしないわよ」
「生憎、痛いのは慣れてるんでね。おとなしくするつもりはさらさらねぇよ」
魔法銃を取り出し、構える。
まずはここから脱出だな。
「ここで戦うのはやりにくいわね。まずは外に出てもらう!」
俺の後ろに現れ、風の魔法か何かで吹き飛ばす。
スピードは凜也と同じぐらいだが、俺にはガードができない。
凜也の場合はだいたい戦い方が分かってるからな。
呆気なく吹き飛ばされはしたが戦いやすくなったし文句はない。
俺は回転しながらトリガーを引き、爆発させる。
あんなスピードにはついていけないから自爆覚悟の攻撃だ。
まあ、すべて避けられたけどな。
砂埃が舞い、俺の姿が隠れたから結果オーライだな。
「邪魔ね」
ぶわぁっという爆風で俺もろとも砂埃を吹き飛ばした。
こんなの、勝ち目がないじゃねえか!
俺は走って逃げることにした。身体強化は4倍でだ。
「逃げられるわけないじゃない」
先回りされた!
くそ、くそ。
ここでやられるわけにはいかねぇんだよ。
あいつを助けて、それで祝勝会を打ち上げてやるんだよ!
俺はマシンガンで撃ち続ける。
が、すべて、見えない壁に阻まれ逸れていく。
頬をさわる風。
風か。
最初の攻撃と言い、さっきの防御、たぶんすべて風を操ってるんだ。
厄介すぎるぞ。
風の攻撃はかまいたちのようなこともできるんだぞ。
そんなもんを喰らったら一撃で終わる。
どうすっかねぇ。
俺の武器の手前遠距離戦に持ち込んだほうが勝てる可能性は上がるよな。
ただ、距離を離しても一瞬で縮められるなら意味がない。
この距離を保って一撃必殺の攻撃を当ててやる。
「何かくだらない事を考えているようね。でも、それは無駄なことよ」
女の子は手をどこかに向ける。
なんだ? 溜めが入ってるぞ。
魔力の粒子のようなものが視認できるほどに女の子の手に集まっていく。
あの粒子が飛んできてる方向に紗枝がいるのか。
というか、やべえ!
何か溜めが入ってるってことは大技が来る前触れじゃねえか!
慌てて、こっちも対抗するために魔力銃の銃口に魔力を集める。
相手は手を何度か振って、魔力の流れを誘導しているようだ。
「エアーストライク!」
レーザーのような魔力砲の周りに風が張り付いているのがこちらに向かって近づいてくる。これどっかで見たことあるよな。
ああ、ゲームだ。
魔力砲とかよく見るが、これはまずいぞ。
名前もいかしてる。くう、俺もかっこいい必殺技がほしい。
俺も対抗して溜めておいた魔力砲を放つ。
ぶつかる魔力砲と風の変なの。勝てるとは思っていなかったけど。
だが……押してる?
確かに魔法の威力は高かったがそれでも魔力を詰め込んだ俺の一撃のほうが勝ってる。
勝てるかもしれない。
俺の唯一の才能の魔力量。
まさか、こんなところで活躍してくれるなんて、思いもしなかった。
それでも相手を打ち抜くほどの威力は出せなく、相殺しただけだ。
次の一撃だ。なんとか相手の動きを止めて、今以上の威力で仕留めてやる。
「くそ、人間の癖に魔族に楯突くなんて!」
さっきの攻撃を止められるとは思っていなかったんだろう。
肩を怒らして、またどこかに手を向ける。
魔力の粒子が飛んで来てる方向はどこだ?
それを見たいがそんなことをしてる暇はない。
俺も負けじと魔力を溜める。
銃口に魔力がたまり、いざ打ち合ってやるぜって時に。
女の子が消えた。
手品か何かのように目の前から消えたんだ。
「はっ!」
と思ったら俺の腹に肘鉄を入れてやがった。
バカ正直に戦ってくれないのかよ。
これじゃあ、どんなに強い攻撃も外れてしまう。
俺は剣を抜いて、足を軸にこまのように一回転。
でも当たるはずもなく俺の目が回るだけだ。
動きをどうにかしなくちゃだが、俺には足止め用の魔法なんてないぞ。
女の子は俺の回転が収まったと同時に右から蹴りをいれたり、左から蹴りを入れたりとやりたい放題しやがる。
やがて、蹴りの雨が終わった頃には俺は地面で寝そべっていた。
痛ってぇな。
体は痣だらけだぞ。
下手したら骨までいってるかもしれない。
つか攻撃があたんねぇよ。
何度かマシンガンで撃ってみてが、あっさり避けられて蹴られるんだ。
どうすんだよ、イケメン様が不細工面になったら。
そんな恨みを込めた視線をぶつけてやったら、恍惚とした表情になった。
「その目! 苦しんでるときにする視線が大好きなのよ! もっと、私を喜ばしなさい、ほら!」
さらに蹴りを入れてくる。
こいつは随分と度が過ぎたサディスティク野郎だな。
ぼろ雑巾のようになった俺を持ち上げ、投げる。
投げ飛ばされ俺は受身をとることもできず、背中から地面に落ちた。
やっべぇな。
剣を落としてしまった。
空が青いな、こんちくしょー。