21話
教師は職員会議にでも行っているのか教室の黒板には自習という文字が書かれてた。
俺はその文字を確認してよしと拳を軽く突き上げる。
真っ直ぐ凜也の所に向かう。
「どうしたんだ? そんな真面目な顔で」
俺の様子を悟って真面目な顔で話を聞いてくる。
「これから、話すことは誰にも話さないでくれよ」
前置きをしてからさっき聞いた話しを所々端折って伝えた。
だいたいを聞いたところで凜也は「そうか」と呟いた。
「確かに三枝木紗枝の名前を聞いた瞬間に聞いたことがあると思った。お前の話してることは全部夢のような話だな……」
呆れたとは違う。
楽しそうな声音だな。
こいつ、強い奴と戦えるとか考えて喜んでるんじゃないだろうな。
「信じてくれるのか?」
「当たり前だ。お前が嘘をつくわけがないからな」
「……ありがとな」
そこまで信用されてると――恥ずかしい。
だけどそんなことを気にしてる場合じゃない。
少しでも早く紗枝を助けに行かなきゃ行けないんだ。
「それで、手伝ってくれるか? すごい危険なんだが……」
「それは愚問だぞ。俺は普段から武装してるから準備は完璧だ。お前は?」
「俺も寮から取ってくればすぐにいける」
「なら行くぞ」
凜也は騒がしいクラスの中から抜け出す。
嬉しいな。
危険なことなのに何の文句もつけないで手伝ってくれる。
俺は友達に恵まれてんだな。
久しぶりにこっちに来たかもしれないな。
魔族がでたという森がある海近紙市の街に降り立った俺達は森に向かうために足を進めた。
街は人が一人もいない。
魔族の話はすでに広がってるからな。
ただ、それを討伐できないということはまわっていないだろうな。
「おい、見ろ凜也。道の真ん中で寝れるぜ!」
「……何しに来たんだ?」
「いいじゃねぇか。気張ったっていい事ないし」
俺は人がいない道路の真ん中を歩いたり結構好き勝手やっている。
それにしてもこの街に入れないように封鎖してるもんだと思ったけどそれすらしてないんだな。
おかげで面倒な侵入をしなくて済んだからいいか。
「修也ッ。人だ……魔力を消しておけ」
と、周りを警戒していた凜也の言葉に従い俺達は物陰に隠れた。
凜也は常に身体強化で周囲を警戒していたのか遥か先にいる人を見つけたようだ。
だいたい10分ほど経ってから俺達が隠れている近くに一人の女の子が来た。
「こっちの方に強い魔力を感じたのだけど……気のせいかしら?」
女の子はなにやらぶつぶつ呟いていた。
もしかして、こいつは……っ。
俺達が探していた魔族なんじゃないのか?
菊乃さんからあらかじめ魔族の特徴を聞いていた。
小さい女の子。
後、長い犬歯と尻尾がある。
彼女は吸血族と犬族のハーフだって菊乃さんは言っていた。
「まあ、いいわね。そろそろ食事にでも行きましょうか」
空中に跳んで、どこかへと消えた。
俺たちはその方角を見て、森のほうではないことを確認した。
食事がなにかは知らないが。今はチャンスだな。
菊乃さんから聞いた内容によれば紗枝は黒水晶のなかに閉じ込められているらしい。
その黒水晶は魔力をためる機能もあり、捕まえた魂から魔力を生み出して吸収している。
今回の事件の魔族は魔力があまりない。
だから黒水晶から魔力を吸収させなければ俺たち二人でも十分戦えるらしい。
ここまで言えば分かるよな。
俺たちの目的は黒水晶から捕まってる魂を解放させ、紗枝を助け出す。
そこまでが菊乃さんが提案した作戦だ。
俺たちはその作戦を実行するために森に移動する。
「ここからは二手に分かれるぞ」
「ああ、絶対にどちらかが襲われても助けに行かないだったな?」
俺は頷く。
黒水晶をどうにかしないと俺たち、二人掛かりでかかっても勝てない。
これは俺の勘でしかないのから絶対とは言えないけどそれでもたぶんあってるだろう。