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2話


凜也りんや。助けてくれ」


 告白事件が起きてから、寮にある俺の部屋で。

 あらかじめメールで呼び出しておいた、俺の友達――村正凜也むらまさりんやに向き合い宣言する。


「なんだやぶから棒に。問題でも起きたのか?」


 色恋沙汰に対して信用がおける(?)凜也が目を閉じたまま聞いてくる。


「ああ、やばすぎる問題だ。こういうの言っていいのか知らないがさっき告白された」


「……! 相手はだれだ?」


 閉じていた目を一瞬で開き、掴みかかるようにこちらへと首をのばしてくる。

 いつもは冷静な凜也だが、さすがにこれには冷静ではいられなかったようだ。

 俺だって例えば凜也から「告白された」って相談されたら驚くな。


「誰にも言わないでくれよ。……三枝木だ」


 三枝木と言った瞬間の凜也はなぜか落ち着き払っていた。


「ああ、なんだ。そうか」


 あれ、全然驚かれなかったぞ? てっきり「な、なんだってええええええええ!」見たいな感じを想像していた俺にとってこれはちょびっと残念。

 俺の予想を外しやがった凜也はふむふむと頷いている。

 凜也は「とうとう告白したのか」とか呟いちゃっている。


「凜也なんでそんな冷静なんだ? 今すぐ逃げ出したいぞ俺。逃げていい?」


「だめだ。いや、お前はあいつと同じ小学校、中学校なのを覚えているのか?」

 

 え? まじで? あんな可愛い子見たらたぶん忘れないと思うんだけど……。

 しばし思案。

 あっ……。まったく覚えていなかったのだが、一度思い出そうとするとすんなりと思い出せた。

 俺って結構記憶力いいんだな。

 確か両親がいなかったよな。悲しい事を思い出してしまった。

 あれ? なんか引っかかる物があるぞ。

 こう、喉元まで出てきてるんだけど、分からない状態。

 今の俺はそんな感じだけど、よくあることなので今は置いておこう。


「……うん、思い出しぞ。記憶の端っこのほうから呼び起こしてきた」


「まあ、それでな。中学くらいからだったな、よくおまえのことを聞かれたんだ。だから、気があるんだなとは思っていた」


 知らなかった。俺の知らない所でそんなことが起こっていたなんて。


「へえ……だったらそん時に『あいつは恋愛とかはしないぞ』っとでも言っておいてくれればよかったのに」


 そうすれば今こうして俺が悩むこともなかっただろう。

 まったく、気が利かないやつだ。だけど、俺に好きな人がいることをこいつは知らないからしょうがないな。

 凜也は大きくため息を吐き、呆れるような目で、


「言ったさ。そしたらなんて言ったと思う?」


「『あっそうなの。だったら諦めるわ』みたいな?」


 少し本人を真似て言ってみたら、凜也は「うっ」と俺から一歩後ずさってしまい、ショボーンな俺。

 真似して何が悪いんだよ! キモイならキモイって正直に言えやぁぁぁ!


「バカか。あきらめてたら告白などしないだろう」


 確かに。凜也が言う事も一理あるな。

 意味のないことを言っちまった。


「じゃあ、なんて言ったんだ?」


 凜也に言った言葉が気になり俺は訊ねる。


「『私はずっと好きなの。断られることなんか考えないわ……大丈夫よね?』とか……俺が悪かったから引かないでくれ!」


 実際に男が女子の口調を真似ると気持ち悪い事が分かったのでもうやらない。このことは忘れよう。

 凜也の真似は見てて血反吐を吐くほどに気持ち悪かった。

 俺の反応が悪すぎたせいか。

 凜也はあきらかに落ち込んで、壁と対話をし始めたので慌てて慰める。 

 ぶつぶつ、ぶつぶつずっと壁と対話してこちらの声に耳を傾けようとしない凜也を慰めるのはかなり大変だった。

 だいぶ時間はかかったがなんとか凜也を復活させる事に成功させた。

 凜也は話を再開させた。


「……おまえはどうするんだ?」


「それを考えてんだよ。どうやって断るかなぁ……」


 ピクッと眉を動かして俺の言葉に凜也が反応する。


「告白を承諾する選択肢はないのか?」


「無理無理無理!」


「なぜだ?」


 俺に好きな人がいることを知らない凜也は異常なまでに食いついてくる 

 なんでそんなに突っかかってくるのか逆に訊いてやりたい。

 時計へと目を向けると、そろそろ夕飯の時間だ。

 それを理由に食堂へと逃げようとしたら、凜也が回り込んでくる。

 怖い顔で。


「逃げるなよ。少なくとも三枝木はおまえに本気で伝えたはずだ。それを無視するのは人として最悪だぞ」


 語気を強めていってくる凜也に俺は頭を掻きながら、答える。


「……そりゃぁ、解ってるけどさ。どうすればいいんだよ?」


「おまえの正直な気持ちを伝えればいいんじゃないか?」


「そうなると、ごめんで終わるんだけど」


「はぁっっ!!」


 目からビームを出さんばかりに目をひん剥いて叫んだので、俺は飛び跳ねて驚いてしまった。


「悪いな。目の前をハエが飛んでいたんだ。……俺はなぜ三枝木がおまえの事を好きになったのかはわからない。だが相談をしてきたあいつが本気だったのはわかる」


 真剣な空気に耐え切れなくなった俺はただ頭を掻くしかない。 

 凜也は何かを思い出したように顎に手をやって、


「そういえば。明日の授業はパーティー制だったな。一緒に行って来い」


 パーティー制というのは学校にあるダンジョンに潜ることだ。

 基本は2~4人で受けるんだが明日は2人なんだ。


「いや、別にいいけど。おまえ大丈夫か? 友達俺以外にいたっけ?」


 冗談交じりに俺は言ったのだが、


「いたさ! ああ、たぶんな……」


 若干遠い目をし始めた凜也に俺は苦笑い。

 一応明日どうするのかは決まった。

 三枝木紗枝。顔合わせたくねぇ。


「まあ、細かい事は忘れて、飯食い行こうぜ」


「告白の件は忘れるなよ」


 はいはい。分かってますよ。

 あれ? 告白の件は何1つ決まってなくね?

 まあ、とりあえずは三枝木と一緒に行ってみて断る機会を探ってみよう。

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