18話
「結論から言わせてもらうと無理だ」
菊乃さんの家はアパートだった。
そこでちゃぶ台を通して向かい合わせに私達は座っている。
「なんでですか!」
私はちゃぶだいに両手をつき、身体を菊乃さんのほうへのりだす。
あの魔族は何をするか分からないのに。
「詳しい説明を今からしてやる。疑問があったらすぐに質問するように」
そう言って、菊乃さんはホワイトボードを隣の部屋から持ってきた。
な、なんでそんなものが家庭にあるのよ。
「昔の地球人はもともと魔法を使う事はできなかった」
ホワイトボードに『人間魔法無理』と書き込む。
私は生徒になった気分で挙手する。
「じゃあ、なんで今は使えるんですか?」
「いいとこに気づいた。魔法を使うのに必要な物はなんだか知ってるか?」
ホワイトボードに書くために使っていたマーカーでこちらを指す。
「魔力?」
「そうだ。魔力がなければ魔法を使う事はできない。電気がなければテレビがつかないようにな」
要魔力と書きたす。なぜか隣にテレビの絵も描いていた。
「人間はみな魔力を持っているがそれは調べようのないものだったからその能力に気づく事はなく、魔法なんて物はこの世界で生まれることはなかった」
「ならなんで今あるんですか?」
この世界という言葉に引っかかったがそれよりも魔法の事のほうが気になった。
「魔法についてはこの世界以外の人間がこの世界に教えた。この世界以外にあるんだ。もう一つ、な」
そこばかりを強調して、ホワイトボードに世界は一つじゃない! と書き込む。
話がだいぶおかしい気がしないでもないが、別に気にしない。
もともと魔物がこの世界にときたま現れるのは一部では他の空間――異世界から来ているのではないのかという説もあるって聞いたことがある。
驚くことはない。聞いた私はああ、そうなんだとその程度にしか感じなかった。
「魔界。私達はそう呼んでいる」
「私達ってあなたは何者なの?」
私の頭の中で一つの結論がでていた。
「私は……魔族だ」
魔族と菊乃さんはホワイトボードに書き込んだ。