11話
まあ、それから20分ほどして暴動とも言える騒ぎは収まり、結局俺と凜也のバトルは決行されることに。何でだよ……う、うう。
クラスの連中はみんな適当にバリアの張ってある外から眺めている。
三枝木が声を張り上げて俺を応援してくれるのは嬉しいけど恥ずかしい。
それにその様子を見たクラスの連中の視線も恐ろしい。
俺の体を蜂の巣にでもしたいのだろうか。
「さて、勝負はポイントバトルでいいか?」
「ああ、もうなんでもいいや」
ポイントバトルとは互いに500のポイントのバリアをパソコンで張り、相手にダメージを与えるたびにそれが減っていく物だ。
体にダメージを負うと、そのポイントを消費して、痛みをなくす。
勝利条件は相手にダメージを与えていき、ポイントを50以下にする。
勝利条件が0じゃないのは危険だからだ。
クラスの連中が審判などをつけたり、機械をいじってポイントバトルにしてくれている。
実際このバトルには審判なんてあろうがなかろうと同じだ。
なんでもありのバトルだからな。
「準備終わったぞ」
機械をいじってバトルの準備をしていた人がマイクで声をかけてくる。
公平じゃない様子がありありと見える審判の掛け声と共に俺の目の前にポイントが現れる。
その後すぐにポイントは消え、バトルの準備は整った。
「準備いいよな! よし、それでは神村をぼこぼこにせよ! はじめっ!」
なんて公平じゃない審判なんだ。
俺がそんなことを思った同時に村正は跳んできた。
距離は大体5mほどあるのだがそれを助走もなしで飛ぶなんて化け物かよ!
跳んだ勢いを載せた一撃で一番ダメージのある、俺の頭を狙ってくるのをギリギリで見切って、三枝木に借りている刀で横に逸らす。
「神村くん、今よ! あれよ! ええと…………ジャブジャブ!」
三枝木のアドバイスは無視させてもらおう。
俺は即座に余ったほうの手でマシンガンを数発地面に撃ち込んでから凜也に向けて撃つ。
それを剣で一回転してすべて弾き落としたのを見て、爆発させる。
煙に包まれているので凜也の様子は見えないがこのぐらいじゃ直撃でもポイントは200程度しか減らないだろうし……そもそも当たっているはずがない。
「さっき見ていなかったら危なかったな」
思ったとおりで、煙から跳びだしてきた凜也は勢いのある突きを再度お見舞いさせてくる。
避けられない。悟った俺は刀から鞘を放り出すようにして抜く。
この一撃はしょうがないと思っていたが、運よく抜いた鞘が凜也の剣と俺の腹との間に入り威力を和らげた。
眼前に表示されたポイントは10しか減っていない。
後ろに飛ばされた俺は、さっき埋め込んでいた魔力爆弾を爆発させる。
いくらやる気がないとはいえ負けるのはいやだ。
こうなったらやれるだけはやってやる。
まず、勝つためには持久戦に持ち込むしかない。
俺が唯一勝てるのは魔力の量だからな。
凜也が人間離れした動きをしているのはすべて魔力での身体強化のおかげだ。
魔力を使ってるんだから戦っていられる時間も決まってくるわけで。
凜也が全力で戦える時間はだいたい10分。
身体強化は誰でも使える簡単なものだが、凜也はとにかくその能力が高い。
大抵の人は普段の2倍程度の強化が限界だが、凜也は8倍。
ちなみに俺は4倍程度ね。単純に倍の差が生まれちまうのだ。
俺は方針が決まったので凜也を見る。
凜也は俺の攻撃に反応こそできたものの、完璧に避ける事はできなかったのか、多少ダメージを喰らっていた。
凜也のポイントは453。
魔力爆発は制御こそされているものの威力はそれなりにある。
「やっぱりお前とのバトルは面白いな」
本当に愉しそうに笑う凜也に俺も笑い返してやる。
俺の笑いは情けないものだと思うけどね。
「俺はこんな緊張状態は疲れちまったよ。さっさと負けてくんね?」
さすがに三枝木のいる前で負けるわけにはいかない。
あれ? なんでそんなこと意識してんだよ! やべ! 考えたら恥ずかしくなってきた!