表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR

異世界恋愛・短編小説

クレクレ妹が面倒なので、事故物件伯爵と婚約します

作者: 地野千塩
掲載日:2026/07/19

 結婚相手を物件に例えられることがある。わたしだって優良物件の旦那様が良いわけだけど、妹が面倒だった。


「お姉様! あのイケメン経営者のクリス様と親しいなんて、羨ましいわ! あたしにもクリス様を紹介してください! クリス様は絶対優良物件だし、将来安泰よぉ」


 妹はこんな感じで、わたしとちょっと知り合いの男性までクレクレと欲しがる。ちなみにクリスという男はもう婚約済みで、他人のものだ。わたしもあの男に片想いしていた過去もあったけれど、顔と違って性格が悪いし、黒歴史。


「クリス様だけじゃなく、お姉様のものは全部欲しいわ!」


 妹は、同じドレスもクレクレ。同じ指輪もクレクレ。同じネックレスもクレクレ。クレクレ、クレクレ、クレクレ……。


 子供の頃から妹の性格は知っていたけれど、もう面倒になってしまった。


 そんな時だった。わたし、マーガレット・バリサリーの縁談が舞い込んだ。相手は伯爵家のアンドレ・エストレという男だったが。


「えっ……。あたしはアンドレ様は要らない。だってこの人、事故物件伯爵っていう噂だもの。実際、今は誰にも相手にされていないみたい。あたし、興味なーい!」


 あれ?


 妹の反応がいつもと全く違うじゃない。クレクレしてこない。何これ。


 ということは、アンドレ・エストレに嫁いだら、妹のクレクレ攻撃ともおさらばできるだろうか。正直、妹の性格には手を焼いていたし、エストレ家は我が家より格上。両親も太鼓判押してる。妹によると、事故物件伯爵と呼ばれているみたいだけど、他は何の問題もない。誰にも相手されていないっていうのも、可哀想だし興味がわいた。


 ということで、アンドレに会いにいった。アンドレは体調を崩しているらしい。辺境のレプタ村という土地で療養中だったという。湖と花畑が美しく、避暑地にもピッタリな場所だ。村につくと、風の爽やかさが心地いい。


「へぇ。レプタ村っていい場所じゃない」


 村の人達も気さくだし、いかにも貴族令嬢のわたしにも話しかけてくれる。


「ところで、アンドレ様の噂は聞いたことあるかしら?」


 農民と思われる村人に聞いてみた。


「噂では事故物件伯爵とか呼ばれているみたいだけど」

「あぁ……。確かに前の婚約者もその前の婚約者も病死しているからなぁ。アンドレ様、それですっかり病んでしまっているわけさ」

「そうなの。ありがとう」


 婚約者が病死か。立て続けにといっても、偶然で済むレベルじゃないのかしら。事故物件かしら、本当に。


 そんな疑惑に首を傾げつつ、アンドレの屋敷に到着。確かに周りは木々に囲まれ、鬱蒼とした雰囲気だ。それでも屋敷のデザインはいかにも貴族らしく豪勢だし、小鳥の鳴き声が聞こえてくるのもいい。


「どんな小鳥かしら?」


 実はわたし、野鳥マニア。こんな環境で野鳥観察ができたら幸せだろうなぁ。そんなことも想像すると口元がニヤけるが、メイドに案内され、アンドレと対面する時間に。


 屋敷の客間に緊張感が走っていた。図書館みたいにしんと静か。小鳥の鳴き声だけが遠くに響く。本当に事故物件伯爵かしら? この目で確かめてみたい。


「君がマーガレット嬢か……」


 目の前に現れたアンドレ。前髪が長く、色白で猫背。確かにちょっと暗い雰囲気はあるが、顔立ち自体は整っているし、文学青年みたいな雰囲気?


「俺みたいな事故物件伯爵に嫁いでも損するぞ。なんせ前の婚約者もその前の婚約者も病死しているんだ。二回もだ。何かの呪いかもしれないし、あぁ、損する。さっさと帰りたまえ」


 発言も卑屈で後ろ向きだったが、よく考えたらたらわたしのことを気遣ってない? 


 それに二回の不幸は許容範囲だ。三回続いたら、怪しいけれど、それぐらいは偶然の域では?


「ご安心ください、アンドレ様。わたし、迷信とか信じないタチなんです」


 ニッコリ笑って言うと、アンドレはのけぞっていた。長い前髪が揺れる。目が見えた。アンドレの目は案外、真っ直ぐ。


「それより、わたしは野鳥マニアです。この村にもどんな珍しい野鳥がいるか気にまりますわ。最近は野鳥の言葉も研究しておりまして……」

「な、なんだって……!?」


 アンドレは目を見開いて驚いていた。


「お、俺も野鳥の研究をやってるんだ。そうか、だったら、求愛のダンスをする種や絶滅が噂されている種についても意見を交換しようじゃないか」


 まさかアンドレも野鳥マニア?


 驚く暇もないぐらい、わたし達は野鳥の話で大盛り上がり。今度一緒にバードウォッチングに行くことも決まり、意気投合してしまった。


 それにアンドレはよく見ると、顔が整っているし、前髪を切ったらイケメン。性格も紳士的だし優しい。それに野鳥の知識も豊富で会話も楽しい。


 これは当たりを引いたかも?


 まあ、少なくとも事故物件なんかではなく、わたしにとっては優良物件だった。


 こうして順調に婚約まですすみ、今は結婚準備に追われている。アンドレと一緒に野鳥研究も捗るし、毎日が楽しい。


「お姉様、ずるい! まさかアンドレ様が前髪切ったらあんなイケメンだなんて! 普通に優良物件だったじゃないの! あたしにもアンドレ様をください!」


 相変わらず、妹にクレクレされてしまったけれど、もう実家を出るからどうでも良いか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ