プロローグ
初投稿です。出来るだけ週1ぐらいの更新を目指していますが、温かく見守っていただきますと嬉しいです。よろしくお願いいたします。
アストレア王国国境付近。
聖白騎士団は戦場に布陣していた。鉄と血の匂いが混ざった空気が、肺の奥まで入り込むような最前線。
爆音とともに悲鳴が上がる。辺りに漂う人の焼ける臭いが鼻につく。
治す。
足元で呻き声。腕を失った騎士が泥の上でのたうっている。光が溢れ、傷が塞がり腕が繋がる。
治す。
目線をずらすと腹から剣を生やした騎士が目に入る。剣を抜いた瞬間手をかざす。
治す。
近づく気配に右足を軸にして回転、迫っていた兵士の腕に槍を突き刺す。
戦う。
そのまま駆け出して目の前の兵士をなぎ倒していく。
殺す。
戦う。
治す。
殺す。
戦う。殺す。治す。
治す
殺す
治す
殺す
殺す
殺す
ころす
なおす
ころす
ころす
ころす
「撤退だ!!」
「我らの勝利だ!!!」
気がつくと敵兵は撤退しており、騎士団の仲間が勝利の喜びに湧いていた。
リュカ・アルヴェインは冷めた目で勝利に酔いしれる仲間を見ていた。
「...何が嬉しいんだよ...」
槍についた血を振り払う。
飛び散った赤が地面に転がる兵士の顔に落ちた。その兵士の瞳はもう何も映していない。
リュカは少しだけ目を伏せた。
「……ごめんな……」
いつまでこんな場所にいなければならない。
人を治すための力じゃないのか。
命を繋ぐために、命を奪う、とんだ偽善。
こんなものが正義なわけがない。
怒りとも虚しさともつかない感情が、胸の奥で渦を巻く。やがてそれは、静かな闇になって沈んでいった。
「…………もういい」
その夜――リュカ・アルヴェインは、騎士団から姿を消した。
神の奇跡を持つ騎士は、神を捨てた。




