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入学式

大きな古い講堂に沢山の新入生が整列している。


講堂の天井はかなり高く、大きな黒いシャンデリアがいくつも取り付けられている。


生徒の列は貴族クラスと平民クラスで半分に別れており、制服の色も違った。


貴族クラスは白い制服、平民クラスは黒い制服である。


ハッキリと身分の格差がそこに見て取れる。


そして違いがもう一つ。


貴族は男女を問わずみな剛毛である。


みな、制服の胸元や手の甲に立派な体毛をたずさえている。


女子のスカートから見える足にもびつしりとすね毛が誇らしげに生えていた。


体毛は彼らにとって貴族の証であり誇りの象徴なのだ。


そして、当然だがみんな魔ッチョである。


壇上には先生達が一列に並んで時間になるのを静かに待っている。


期待と緊張の入り混じったピリリとした空気の中を時計の秒針の音だけが響く。


私語をする者はいない。


それほどここは神聖な場所なのだ。


そして、いくばくか時間が過ぎた時、時計から古めかしい重厚なチャイムの音が響き渡った。


「それでは、時間になりましたので入学式を始めます。」


ずは貴族クラスの担任、バルクアップ先生のご挨拶です。」


紹介されて前に出たのは英国紳士風の魔ッチョな男。


彼は一礼するとゆっくりと、そして力強く語り始めた。


「貴族の『キ』は筋肉の『キ』!」


「貴族の『ゾ』は筋肉の『ンニ』!」


「貴族の『ク』は筋肉の『ク』!」


ポーズはとてもエレガントだ。


しかし、グシケン達は思う。


ンニって何だ?と


そして平民たちには目もくれずに貴族たちに語りかける。


「私が受け持つのは貴族の子弟達であるお前達だ。貴殿達はこの国の宝だ。しっかりと学んでムキムキの魔ッチョになってくれ給え。」


「そしていつか!『金色こんじき胸毛団むなげだん』に入団できるように邁進まいしんするのだ!」


そのポーズは、とてもエレガントだった。


「私が言いたいことは以上だ。」


『金色の胸毛団』とは貴族で構成された王国魔導士団だ。


バルクアップ先生は一礼するとまた列に戻る。


アナウンスは続く。


「次に平民クラスの担任、パンプアップ先生の挨拶です。」


次に呼ばれて前に出たのは、先ほどとは対象的に少しやさぐれた感じの男。


服装も少しだらしなく、顔からもやる気を感じられない。


「あー、よろしく。平民クラスを受け持つことになった。パンプアップだ。」


「俺からも一言だけ言っておく。平民クラスに命の保証はない。」


「だから、、、死ぬな。以上だ。」


「仲良くみんなで『世界にひとつだけの鼻毛団』に入れるなんて思うなよ。」


それだけ言うとさっさと元の場所に戻っていった。


ちなみに、『世界にひとつだけの鼻毛団』とは平民で構成された王国魔導士団のことだ。


『金色の胸毛団』と共にこの国を守る魔導士団だが、平民出身の彼らは死をも恐れない猛者揃いの集団だ。


貴族社会にあって、生まれ持った血筋や財力がなくとも努力と才覚で上り詰める事が出来る唯一の国家機関である。


その為、入団資格はとてつもなく厳しい。


そして入学式のアナウンスは続く。


「それでは次にこの学園の園長であられます、ブッダ樣からのご挨拶です。」


全員の顔に緊張が走る。


カズミはドキドキして胸が張り裂けそうになりながら、どんな人が現れるのかを固唾かたずを呑んで見守った。


すると、壇上の脇から小柄で小太りな男がてくてくと歩いてくる。


その頭はいわゆる『大仏ヘアー』で、目も口もどこか愛らしい。


しかし、演壇えんだんの前まで来るとその背の低さから隠れてしまって何も見えない。


その男が見上げると演壇えんだんに設けられたマイクは遥かに高い位置だ。


シーンとしていた生徒達からもヒソヒソと声が聞こえ始める。


カズミも思っていたイメージとあまりに違い過ぎたその姿に戸惑いを隠せなかった。


その男は次に右手で天を左手で地を指さした。


すると、頭上に金色に輝くグリモワールが現れる。


それは、グシケンのアフロ属性のグリモアールとも違った神々しいものだった。


「天上天下唯我独尊」


男がそう言葉を発した瞬間、異様なオーラが男を包み、講堂にいたものは凍りつく様な悪寒を感じた。


すると男の体は巨大な風船が膨らんでいくかのようにメキメキと膨れ上がり、講堂の10メートルはあろうかという高い天井に今にも届きそうなほどに巨大になった。


ムキムキの大男になったその男を前に一同が静まり返ると、男はゆっくりと言葉を発し始める。


「みなさん。入学おめでとう。私はこの学園の園長、ブッダ。みなさんの師となるものだ。」


「弟子たちよ、過去を追ってはならない。未来を期待してはならない。今日、まさになすべきことを熱心になせ。さすれば道は開けるであろう。」


頭上でグリモアールが輝き、まるで天上人が降臨したかのような光景に誰もが圧倒された。


そして園長はまた、みるみると小さくなって元のサイズとなり、壇上にちょこんと降り立った。


もはや、誰も馬鹿にした目では見ていない。


グシケンもカズミも完全に憧れの眼差しだ。


そんな二人に園長は気がつく。


おや、あの二人。なかなかの才能を感じる。属性は、、、ほぉ!アフロ属性と闇属性か!


これは、何やら運命的なものを感じますね。しっかりと導いてあげなければいけませんね。ウフフフ、、、


そんな事を思いながら園長ブッダは、笑顔で新入生たちを眺めていた。


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