想いは時を越えて届く
「────!!」
ジミーのおばあちゃんはオルゴールの音を聞いて涙が溢れて止まらないようだった。
それをジミーが肩をさすってはジミーも少しだけ涙目になっていた。
「────」
そして、ジミーのおばあちゃんも落ち着いてテーブルの上には例の金庫? 箱が置かれていた。
こちらもオルゴールと同じくらいに見比べてみると古ぼけていた。
「開けるよ──?」
ジミーの言葉に、僕とジミーのおばあちゃんは頷くと──。
カチッ──。
っと、箱の鍵が外された音がした。
そして、ジミーがそっと箱を開けると中から手紙が出てきたのだった。
「手紙──?」
手紙には──おばあちゃん……最愛の人へ
子供へ、更に孫まで向けて書いてあった。
そっと、まずは最愛の人──ジミーのおばあちゃんへ手紙を渡すと震える手でジミーのおばあちゃんは手紙を受け取って中を読み始めていた。
内容は……。
あの日、出会えた事への感謝。
余所者の自分を受け入れてくれた事への感謝。
いつも、恥ずかしくてちゃんと伝えられていないが心から愛していること。
そして、それは死ぬまで永遠にということ。
ジミーのおばあちゃんは読みながらもボロボロと涙を溢しながらも、あの人は──、本当に──とどこか嬉しそうな顔を覗かせてもいた。
ジミーの両親──子供へ向けてはジミーが今度両親宛へ手紙を海外に居る両親へ送る事にして、孫──自分へ向けての手紙を読み始めていた。
そこには──。
遺伝というのは世代を越えて出ると文献で見たこと。
隔世遺伝というが、私のこの推理が好きな事や、傾向が孫に出てるかも知れないことが書かれていた。
2人で読んでいたのでジミーと僕はお互いを見やって、どこか笑ってしまっていた。
ジミーがきっと推理とか探偵が好きなのは祖父の影響だろう。
それが遺伝とは正直分からなかった。
ただ、読み進めていくと。
ジミーの祖父は心から頼れる人が新天地に来て、おばあちゃんという存在と出会えて始めて出来たこと。
私ともし似ていたら、隣に信頼出来る人が居たら大切にしなさいと書かれていて──更にその人が好きなら、ちゃんと気持ちを伝えなさいと書いていた。
そこまで読み進めていると、ジミーの顔は真っ赤に染まっていて──途中から一緒に読んでいたジミーのおばあちゃんはあらあら……と言いながら、私はちょっとお邪魔しちゃうかもだから何か淹れて来るわねと席を外してしまっていた。
最後の締めくくりはジミー……孫宛には好きなものの憧れは大切に大事にしなさいと言うことと、同じくらいに大切にしたい人や想い人が居るなら言葉にして気持ちを伝えなさいと書かれていた。
顔を真っ赤に染め上げて見てきたジミーを見る僕の顔も熱を帯びているのが自分でも分かった。
「つ、つづる──わ、私……」
「う、うん」
「つ、つづるとこれからも一緒の学校に行きたい」
「うん」
「つ、つづると一緒に歩いて生きていたい」
「うん」
「探偵ってね、1人じゃダメなの。助手も必要なの……、つづる? 私の永遠の助手になって、私と一緒に人生の謎に挑んで貰えないかな?」
そう、はにかみながら言うジミーはとっても魅力的で──。
「僕の方こそ──宜しくお願いします」
そう言って、自然と手を差し伸べていた。
それをジミーが恥ずかしながらも手を取ってくれて──。
視線を感じたら、ジミーのおばあちゃんが嬉しそうに僕たちを見ていて──。
その日はとても想い出に残る日になったのだった。
そして、現在──。
高校生になった僕とジミーはこの桜咲き誇る桜木町の珍しい白い桜が咲き誇る喫茶店でコーヒーを嗜んでいた。
「おばあちゃん──今度はおじいちゃんの生まれた場所を知りたくてお父さん達の所へ行くんだって」
「やっと、色々と準備が終えたんだね」
「そ、それで──ね。私1人になっちゃうじゃない?」
「うん、そうだね──」
「ちゃんとつづるの両親にも許可は取ってるから安心してね?」
「ん──?」
「1週間後から一緒に起きて登校だね」
そう、ニッコリと微笑む彼女──ジミーの声を聞いて、最近飲み慣れて来たコーヒーを吹き出しそうになりながらも飲み込むのに成功する。
「そ、そっか──」
両親のニヤニヤ顔の意味がやっとここで解決したと思った。
「つづる?」
「うん、大丈夫。宜しくね」
「うん!」
ジミーの笑顔を見て思う。
きっと、彼女の人生という謎──ううん、自分という人生の謎も絡まって壮大なミステリーはこれからも満ちていくのだろうと。
けれども、それはとても幸せな事だろうと。
「おかわりは要りますか?」
「お願いします──!」
マスターの声に応える。
それは人生という謎のおかわりでもあるのだろう。
そして、今はこの一杯と共に今日までの謎解きの想い出は終わろうと思う。
また、人生という謎を語れる日が来ることを──。