喫茶店の店主はキーマン②
「人生は一杯のコーヒーのようなものです」
人はコーヒーの品質を見ているようで、実際にはそれを構成するカップやポッドや周りの要素を優先しがちだったりします。
本当に本来見るべきものはその品質だったするのですがね──。
てすが、それが悪いとも言いません。
人はそれを持って気高く人生を歩くものだったりしますから。
けれども、それによって怯えてしまったり、すくんで上手く歩けなくなってしまっては致し方ありません。
ようは、上手く付き合えるように本質を見極めて──必要なことを見定めて歩いて行ければ良いのだと思いますよ。
「ミルク、お砂糖は必要ですか?」
そう、締めくくりながらマスターは僕とジミーの前に淹れたてのコーヒーを出してくれた。
だ、大丈夫です──。
そう、ジミーと一緒に返しながら一口飲んでみると──。
「「お、美味しい……」」
ジミーと同じ感想が口から漏れていた。
マスターはそれを聞いて嬉しそうに笑うのだった。
「それで、お二人は何かを聞きたいご様子で? どうしたのですか?」
マスターは改めて、ジミーと僕へと話し掛けてくれた。
先ほどのマスターの話を思い出す。
店の雰囲気や調度品の美しさに先程の僕たちはすくんでいたように思える、けれども今は──。
「実はこういった理由でこちらに来たのです──」
ジミーも同じことを思ったかのか。
大切なのは付き合い方。
そして、本来の本質──今回この喫茶店に訪れた目的をジミーはマスターへ話す。
「あらまぁ……あの方のお孫さんなのね──」
僕とジミーの話を耳にしたのか、周りのお客さんがどこか嬉しそうに僕たちを見てきていた。
「なるほど──ヒントですか。そして、オルゴール……」
マスターはそんな中、ジミーの話を一通り聞いて顎を一撫ですると──。
「これはアンさんの話かも知れませんね」
アンさん?
と、ジミーと僕は思った矢先──マスターがレコードの音楽を嗜んでいる奥の席のお客様の所に行くとそのお客さんの事を呼んできてくれていた。
「おぉ──君がジミーくんかな?」
「は、はい──」
少しだけおっかなびっくりになっている横で朗らか表情になっているアンさんが居た。
「いや、失礼──私はこういうもので……」
名刺を渡されて見たら、桜木町の骨董品屋アンの店主のアンさんと言うことだった。
「うちの調度品とかも見繕ってくれているんだよ」
マスターがそこへ助け船を出すように切り出してくれる。
「えっと──でも、どうしてアンさんが……?」
ジミーがどこか疑問符を浮かべている中でアンさんが──。
「そうですね、それは私がそのオルゴールの修理を頼まれていたからですよ。本当に数日前にやっと、お直し出来る方とコンタクトが取れて──ずっと予約で埋まりきってしまっていて……本当は間に合わせたかったのですが、そうですか……そんなことになっていたなんて」
アンさんは本当に申し訳無さそうな表情になってしまっていて、それをジミーが何とか慰めていた状況だった。
「明日、その方が丁度そのオルゴールを直して頂いてうちへいらっしゃるはずなんですが──どうでしょうか? 明日、私のお店へ来られませんか?」
と、アンさんから誘われたのでジミーと僕は2つ返事で頷いてお願いするのだった。
その後は、マスターや周りのお客さんからジミーの祖父母の話を聞いたり、聞かされたり。
逆に僕たちの話をしたりして華を咲かせては喫茶店を後にして──明日の放課後改めて、僕とジミーはアンさんのお店を訪ねるのだった。