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転職 & 退職

作者: ムルモーマ

 新卒より働いていた会社から転職活動を本格的に志したのは、コロナが始まってすぐの頃だった。

 それまでも少しずつ考えて資格とかを取り始めていたけれど、辞めてやろうと思ったのは、同じプロジェクトのチームメンバーの一人がコロナに罹った後の事だった。

 自宅でのリモート業務に移ってから、今後の方針をビデオ会議で話し合った時の事。

 ペン先をカチカチばっかりしていたり、俺の言う事を大人しく聞いておけ、というような偉い人の態度がとにかく気に食わなくて、それが感情的な一番の理由だった。

 勿論、他の理由もある。

 単純にこの会社では一定以上の給与を目指そうと思っても厳しい事。

 時期的な事だったり、会社の方針もあって、個人的に魅力的な業務内容がなくなってきた事。

 感情的な理由も含めて、その3つが主な転職活動を志す大きな理由だった。


 新しいプロジェクトにアサインされて、取り敢えず形を為すまでは頑張るとして、それまでの間に色々と準備をしようと決めた。

 資格を合計で5つ取った。技術ブログを書いた。

 やった事といえばその2つだけだったが、転職活動を心に決めたとは言え、その感情的な理由も含めて衝動的に会社を辞めるまでの強いものではなかったし、新しいプロジェクトも自分の技量を評価してアサインされたのでそれに応えようとは思っていた。

 そしてその会話から2年以上経った後、プロジェクトも無事形になり、職務履歴書に書けるような事も充実し。

 SNSに流れてきた求人の広告を見て、転職活動を始めた。


 その広告として流れてきた1社目が、転職活動中、最も悔やむ結果になった。

 履歴書と職務履歴書を用意して、書類面接が通って、一次面接に臨んだ。会社でもそんなに喋る事もない仕事をしていて、1時間も通しっぱなしで会話をするなんて事、もう最後にしたのがいつなのか覚えてない位だったのだが、技術力を評価されたのか通過する事が出来た。

 1社目にして最終面接に臨める事となったが、そこで失敗した。

 用意しておくべき質問に、会社への熱意を測るような基本的な質問に答えられなかった。

 その後、6割くらいで受かるかなぁとか、当時の自分は思っていたのだが、後から考えると落ちて当然だった。

 きちんとどんな質問が来るのかとかを想定して対策していれば、自分の転職活動はそこで終わって、もっと早くに退職して、今頃にはその会社で働いていたと思う。

 もうその時の事はそこまで覚えていないけれど、1社目にして最終面接に臨める事となって多少浮かれてしまっていたのかもしれない。


 その次の会社の面接では、偉い人にムカついたから転職活動を始めました、だなんて言う本音を出してしまったりして、転職エージェントをきちんと利用する事にした。

 実際、新卒の時でも面接を受けたのはそこまで多くなかったのを思い出し、そういう事を第三者から色々アドバイスを受けた方が良いと思った。

 すると、まず履歴書と職務履歴書を添削され、かなり内容が改善された。

 その頃は引越しも決意してしまって色々と大変だったが、その間もぼちぼちと転職活動で複数社の面接を受けた。

 技術力は要求を満たしていると思うが、会社の風土と合わない為、見送る。

 技術的な質問に上手く答えられず、力不足と見做された。

 中途としてはスキルのミスマッチが強く、即戦力になれず、そして要望した給与で雇う事は難しい。

 そんな一次面接での敗北が続いたが、何故かそんな会社より更に大手の一次面接を通過した。

 引越しも落ち着いた頃、久しぶりの最終面接。しかも大手。

 書類落ちも含めて、7社目。そろそろ終わらせたいという気持ちもあった。

 かなり緊張して臨み、けれど手応えは微妙だった。致命的な失敗は犯さなかったが、突っ込んだ質問に少し答えあぐねて。

 悶々とした気持ちで数日間過ごし、そして転職エージェントから金曜の夜に電話が掛かってきて。

 申し訳なさそうな声で、落ちた事を察した。

 その日は寝れなくなる事を恐れて寝酒と称してウイスキーをストレートでぐいっと飲み、始めて二日酔いになった。


 その頃になると、転職活動を始めて3ヶ月以上は経っていた。

 転職エージェントから提示された求人票を見直す事にした。

 この会社のゲームは何もやってないから。この会社は給与が低めだから。

 そういう理由で避けていた企業に対しても色々と受けてみる事にした。

 7社、数ヶ月色々と面接を受けて内定が出ない事に精神が少しずつ追い詰められている感覚がしていた。

 一気に5社以上に応募し、その頃が一番転職活動が激しくなった。

 それぞれの会社に合わせた志望動機を組み立てた。

 書類面接は転職エージェントの助けもあり、大体が通るようになったが、そうなるとそれぞれの会社に対して面接対策もして、また会社によっては追加の書類を提出するように依頼され。

 勿論、会社に勤めながらなので色々とタイムスケジュールを管理して、この日はリモートにして、半日休暇を取る事にして、とか。

 辞める予定の会社ではあったが、そこあたりを柔軟に出来たのはとても助かった。

 それと、コロナ以後からか以前からなのかは分からないが、最終的に16社受けて、そのどれもリモートでの面接だった。面接の為にその会社に赴く事は一度もなく、全て自宅でのパソコン越しでの面接だった。

 ついでに言うと、リモート業務は座椅子で膝にパソコンを乗せて、なんて形で作業していたから、改まって話せるような椅子を持ち合わせておらず、白い壁に背中をつけて座り、段ボール箱にパソコンを乗せて面接に臨んでいた。


 夏から転職活動を始め、年末が近づいて来る頃。

 進行中の会社を含めると10社以上になり、そしてどれに対しても大体一次面接を完了し、その幾つかは最終面接に臨める事になった。

 流石に、この中のどれかには受かるだろう。

 けれど……どれにも落ちてしまったら、自分の精神はぶっ壊れてしまいそうな予感がする。

 前向きな結果が出つつあるとは言え、余り精神的な余裕はなかった。

 また、自分が参画しているプロジェクトの都合が良い事もあって、この時期に退職するとの意向はもう上長に伝えてしまっていた。

 そんな中、一つの最終面接を受け、これまで全く想定していなかった質問が飛んできて上手く答えられずに、これは駄目かも……と落ち込んでいたら、そこから内定が出た。

 とても驚いて、後からじわじわと、削られていた精神が回復していくのを実感した。

 そしてオファー面談を受け、そこで提示された給与が自分の要望より結構高く。

 その提示された給与を面接が進行している他の会社に転職エージェントを介して伝えて貰うと、大体は見送りという形になり、最終的にその一社か、見送らなかった、これから最終面接を受ける一社に絞られた。

 その会社との最終面接は、特に盛り上がる事もなく淡々と、予定より結構短い時間で終わり。

 これは全く分からないぞ、と思っていたら普通に受かった。

 そして提示された給与は更に高かった。


 先に受かった会社は、浪漫があった。

 後に受かった会社は、浪漫はないが、技術力により優れており、更に給与的に望める上のレベルもかなり青天井だった。

 浪漫を取るか、技術と更なる給与を取るか。

 とても悩んで、後に受かった会社に行く事にした。後に受かった会社に関しては、給与の事もあり、また今の会社でも世話になっている代物があり、と元々傾いていたのに加えて、先に受かった会社の浪漫は自分の嗜好とは少しずれていたのが決定打だった。

 ただ……その先に受けた会社に関しては、二度もオファー面談をして貰ったのもあって、それを伝えるのは、転職エージェント越しとは言え、とても心苦しかった。

 最後の最後に自分がお祈りする側になるとは思ってもいなかった。

 そうして全ての転職活動を終え、転職先を確定させたのは今の会社を退職する2週間程前だった。

 何だかんだで、最終的には満足のいく転職が出来た事に、自分でも少しばかり驚いていた気がする。


 退職が近づいて来るにつれて、色んな書類にサインをし、説明を受け。

 業務に重要なものは振られなくなり、気楽に毎日を過ごし。

 同期と飲みながら会社の不満を語り合ったり。その同期の中では早めに辞める方だった。同期も多かれ少なかれ不満を持っている人ばかりだったけれど、何だかんだで自分は強い方だったのだろう。

 最終出社日を迎える前に自分が対応していたものに関してはドキュメントなどをしっかり残し、また菓子を買って(安いのを選んでも余裕を持って多めに買うってなると4000円くらい掛かった)世話になった人に挨拶回りをして、月末処理も早めに行い。

 まあ少しはっちゃけたけど、最後に問題も起こす事なく、最終出社日を迎える。

 最後の日も少しばかり仕事をして、夕方頃、いつもよりやや早く業務を終えて貸与されていたPCやモニターなどを返却し、入館証も返して会社の外に出た。

 6年間勤めた会社。不満の方が強くなって辞めた会社だけど、何だかんだ色々世話にもなり、嫌悪感というレベルでの事柄はそこまでなかった会社。少しだけ胸にぽっかりと穴が空いた気分になる。

 見上げると、雲一つない綺麗な空で、少し膨らんだ月が綺麗に見えた。

 その後、初めての立ち飲み屋に一人で入り、飲んで食って、また外に出て帰路についた時には、そんなセンチな気分は消え失せていた。


 翌日からは、一ヶ月の有休消化期間。

 大学以来の、長期の休み。

 最終出社日の翌日には会社のアカウントもチャットツールにも入れなくなり、それを確認してから、今まで休日も世話になる事のあったアプリやメールアドレスをスマホから削除した。

 とてもせいせいした。

 完全に自由な期間。何にも縛られず、それでも一応はまだ会社に属している扱いで、賃金も発生している期間。

 これを終えたらまた次の会社。職業柄、休日も完全にオフラインで居られない事もあったりする。

 それまでの間、次の会社への準備もあったりするけど、完全にフリーな時間を心いくまで楽しもうと思う。

半年程で16社受けて、

2社内定

3社最終落ち

9社一次落ち or 辞退

2社書類落ち

だったかな。

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― 新着の感想 ―
[一言]  気になることは一つだけ、給料上がった?  
2023/03/03 20:16 退会済み
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