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キャッチコピーをつけましょう②

清水考案のよく分からないゲームが始まって作業も一時中断となった。

さすがに怒るかと思いきや水瀬先輩も意外と乗り気だったので、もうこの流れを止められる者はいない。


清水は相変わらず少年のように瞳を輝かせて、自作のゲームを進行する。


「黒崎、まずは君だ。君のキャッチコピーを考えよう。」

「え、俺から?」

「いいね!わくわく!!」


水瀬先輩は構えた腕を振りながら、すこぶる楽しそうに俺のキャッチコピーを考え始めた。そして、初めに声を上げたのは清水だ。


「『陰キャの手本!陰口・悪口・減らず口なら黒崎へ!!』はどうですか?」

「…殺されたいの?」


どうしてこうもふざけたがるのだろう。


全く懲りない清水の陽気さにはもはや尊敬の念すら抱く。

とりあえずげんこつ一発で許してあげることにした。


頭を抑えながら「パワハラだ!」とギャンギャン騒いでいる清水に、水瀬先輩は少し困惑しつつ「でもそのキャッチコピーはあんまり良くないんじゃないかな~?」と真剣に評価している。やはり可愛い。


「じゃあとりあえず暫定はこれで!次は水瀬先輩のを考えましょう!!」


清水は俺のキャッチコピーをどうしてもあれに決定させたいらしい。

水瀬先輩が俺にどんなキャッチコピーを付けるのかも気になるところだが、「ド陰キャ」などと言われたら泣いてしまうのでここは清水に合わせるのが賢明だ。


「水瀬先輩は特徴が多いから難しいなぁ~。」

「キャッチーで、覚えやすくて、分かりやすいのがいいです!!」


…なんか要望多くね?


しかし言われてみれば、キャッチコピーの本質はそこにある。WEBサイトを訪れる人に「この企業・サイトは安心できるな」「もっと利用したいな」と思わせることが重要なのだ。さすが水瀬先輩は分かっている。


こうやって清水を乗せつつ仕事の話に持っていこうとしているのだろう。当の清水も「なるほど~!」と感心している様子だ。


「なら、陽キャ勘違い女とかど――。」


俺は秒で清水の喉を潰して上下に振る。ぽかーんとしている水瀬先輩がその言葉の意味を理解する前に、話を変えなければならない。


「み、水瀬先輩なら自分にどんなキャッチコピー付けますか!!」

「わ、私!?え~、うーん。」


水瀬先輩は首を傾けて悩んでいる素振りを見せた。


はぁ助かった…。

清水の野郎は本当になんとかしなければまずいことになりそうだ。今は隣でしょんぼり静かにしているけれど、こちらが許したと思ったらまた同じことをしでかす。学習しないタイプの犬のようだ。だが学習しないタイプの犬などいないので、清水は犬以下。


「私はやっぱり『黒崎の女』かな?」

「良いの思いついた感じで言ってますけど、普通に彼女ヅラしないでもらえますか?」

「ひ、ひどいよ!!」

「そうだぞ!黒崎、ちょっとは水瀬先輩の気持ち考え――。」


間抜けな清水犬を取り押さえて、俺は大きなため息をつく。

こんな話をしていても仕事が進むわけではない。もうちょっと建設的な話し合いをしなければ新グループの評価にも関わる。


「もうちょっとしっかり考えましょうよ。」

「それもそうだね、うーん、「黒崎君のお嫁さん候補」とかどう??」


水瀬先輩、そっちじゃないです…。

結局、ホームページのキャッチコピーは決まらなかった。

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