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先輩の様子がおかしい

「あの、誰かと間違ってませんか?」


俺は眼前の可愛すぎる顔から目を背けて、共用室の扉を閉めた。白を基調とした共用室の壁と机がレフ板のように輝いて、窓際に立つ水瀬先輩をより一層美しく際立たせている。水瀬先輩は俺の視線にきょとんとした表情を浮かべて「何がですか?」と首をかしげた。


可愛い。

――じゃなくて、


「多分人違いしてますよ。俺、水瀬先輩と話したことないですし…。」


緊張しているのか分からないが、なんだか口調がぶっきらぼうになってしまう。少し申し訳ない気持ちになって水瀬先輩の顔をチラ見する。水瀬先輩はきょとんとした表情を一転させて「んー」と深く考え込んだ。


「…嫌でした?」


不意に潤んだ瞳で上目遣いをしてくる先輩の表情に、胸がキュンと高鳴る。なんて綺麗な顔なんだ、いや可愛い。これは可愛い派と綺麗派で大規模な争いが起こりそうなレベルだ。


「い、いやそういうわけじゃないですけど…。」

「…勇くん、今日冷たくないですか?」


ゆ、勇くん!?それ、お母さんにしか呼ばれたことないんですけど!


――じゃなくて、


「冷たい…って、これまで関わりなかったじゃないですか!」

「なっ!?」


腕を大きく上げて驚く水瀬先輩に、ふざけているのか真面目にやっているのか分からずただ困惑する。


「勇くん、昨日の飲み会であんなことしたのに…?」

「あ、あんなこと!?」


確かに昨日は飲み会があった。


でも、俺は相変わらずの陰キャムーブで周りがワイワイしている中、1人で他人の分までご飯を食べていたはずだ。お酒も大して呑んでいないし、記憶を飛ばすこともなく家まで帰宅したと確信している。


断じてあんなことやこんなことはしていない!


しかし、俺は男だ。想像せざるを得ない。水瀬先輩の小さな口から「あんなこと」なんて言葉が出た瞬間、脳内は「想像するか想像するか」の二択を迫られる。言わずもがな、俺の頭の中ではあんなことやそんなことがグルグルと回りまわって止まらない。


「責任…取ってくれないんですか?」

「せ、責任…!?」


追い打ちをかけてくる先輩の言葉に、遂には頭がショートして思考が停止した。


「勇くんが嫌って言うなら会社でイチャつくのはやめます…」

「そ、そうしてください…」


残念そうに頬を膨らませて指をいじいじする水瀬先輩に、一瞬心惹かれている自分がいた。


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