兄の幼馴染
レオンはその少女を睨みつけた。だが、少女は動じない。
「まだ名乗ってなかったわね。私はジュリ。レオンとは幼馴染だったの。」
ジュリはリアの方を見た。
「リアちゃんは覚えてないかもね。小さい頃に一緒に遊んだの。もしかしてレオンも、覚えてないの…?」
ジュリが言う通り、レオンはジュリを覚えていないようだった。レオンはジュリに冷たい視線を向けた。余程この図書館に客として来たのが嫌だったのだろう。
何も覚えていないレオンに話し続けても意味がない。そう思ったジュリはレオナとリアを連れて外へ飛び出した。そして、森の広場へ向かう。
昼間で魔物達は姿を隠しているのか、広場には誰も居なかった。
「ジュリさんは、どうしてそんなに包帯ぐるぐる巻きなんですか?」
「悪魔にやられて傷だらけなの。」
ジュリはそう言って、包帯の一部を捲った。身体の傷は深く、痛々しい。ジュリは目の包帯も捲った。隠れていた右眼は、レオンや昨夜見た影と同じように赤くなっていた。
「その悪魔は退治屋によって倒されたけど、傷は治らない。」
それから、ジュリは赤く光った目を押さえてこう言った。
「この目には魔力が宿っていて、生気を見る事が出来るの。レオンを見た時、それが見えなかった。つまり、今のレオンは生きている状態ではない。」
悪魔によって負傷した結果、ジュリの右目は生気が光として見えるようになったそうだ。その光は人によって色や強さが異なり、レオナのように魔力やその他の力を持っているとより強くなる。また、包帯を巻いた状態でもそれは分かるようで、リアとレオナの生気は見えたが、レオンのものだけは見えなかったようだ。
「お兄ちゃんが死んでるはずってどういう事ですか?」
「リアちゃんは一年前に一人になったはず。でも、レオンが側に居たなんて、信じられないわ…。」
ジュリの話によると、リアの両親と一緒にレオンも死んでしまったはずだった。だが、レオンはずっと図書館でリアの側に居た。一体どういう事だろうか。
「レオンさんはコボルトみたいに死人として復活したという事…?でも、魔力を持たない人間が自力で復活するとは考えられないし…。」
「悪魔なら死者と契約して死人として蘇らせられると聞いたわ。ひょっとして、レオンは悪魔と契約してるの…?」
レオナとジュリの話は難しくて分からなかったが、レオンについて色々考えているのはリアにも分かった。
特にジュリは本気でレオンを心配しているようだ。もう一度レオンとゆっくり話せたら良いのにとリアは思った。そして、レオンが悪魔と契約しているかどうかは分からないが、レオンはそんな事はしていないと信じたかった。