魔物達が棲む森
図書館があるこの森は、怪異や魔物達が暮らしている。リアは今までその姿を見な事が無かったが、彼らは人間を気にせず暮らしている。
その姿形は様々だ。中にはこの世のものとは思えないような禍々しいものも居たが、リアには優しくしてくれた。どうやら、この中には、人間のように知能が高いものも居れば、動物のように自由に暮らしているものも居るようだ。
森の広場は簡素な街のようになっていて、リアはそこで魔物と一緒に遊んだ。大小様々な魔物達はリアを襲う事なく親しげに接してきた。
そんな森だが、かつては人間が行き来していた。ところが、人里に魔物が現れ人々を襲っていた。そこで、魔力を持つ人間の一族がこの森を封印し、人間と魔物達がお互いの世界を行来するのを禁じた。その封印を施したのがレオナの先祖だ。レオナは魔物達が森の外に出ないように見張りながら、一緒に遊んでいた。
「悪魔が居なければこの森も快適なんだけどな…。」
ガルが木の盃に注がれた水を飲みながらそう呟いた。
「悪魔…、それはここに居る魔物と違うのですか?」
「悪魔は魔物達の中でも強大な存在ですよ。この森も悪魔に支配されているのです。」
「悪魔って、怖いのですか?」
「ええ、少なくとも私やガルよりは怖いと思いますよ。」
コボルトがそう言いながら硝子の盃で何かを飲んでいた。よく見るとそれは赤黒く、禍々しい。
「安心してください。これは人の血ではなく別の魔物から採ったものですから。」
人の血を吸わない代わりに別の魔物の|血を飲んでいるのか、リアは身震いがした。
「そういえばリアちゃん、あの図書館って誰が造ったの?」
レオナがリアの怖がらせないようにと話題を逸らせたが、余計にリアを怖がらせてしまったようだ。
「分かりません…。いつの間にかここで暮らしていましたから…。」
リアはそう言いながら身体を震わせていた。先程まで一緒に遊んでいたが、やはり魔物に食べられると怖がっているのだろう。
「まぁ大丈夫だよ。この森の魔物達は別の魔物や野生動物、植物を食べているんだ。人里の人間や家畜には手を出さないように注意してるから、安心してね。」
「そうですか、ありがとうございます…。」
「でも、悪魔にまでは注意しきれないな…。力が桁違いなんだもん。私もこの森の全てを知ってる訳じゃないから…。」
レオナはそう言うと何処からもともなく箒を取り出して、跨った。
「そうだ、広場以外の場所を見張ってくる。それが終わったら、リアちゃんを送らなきゃいけないから、それまでよろしくね!」
レオナは、リアをコボルトとガルに預けると、一人で箒に乗って森の向こう側まで行ってしまった。