窓から現れた魔女
外に出たいという思いが募ったリアは、明くる日も窓の外を眺めていた。この窓には鍵が掛かっている。ここから外には出られないようだった。
そんな日々が続いたある日の事だった。夕暮れにリアが日記を書いていると、窓をノックする音が聞こえた。そこを覗くと、箒に乗った魔女が居た。魔女はレオンと同じくらいの年齢で、金髪に紅水晶のような目をしていた。
「こんな所に人が住んでるなんてびっくり!」
魔女は箒から身体を乗り出してリアをじっと見つめた。
「そうだ、私外に出たいんです!連れて行ってくせませんか?」
リアの叫びが届いたのか、魔女は魔法で鍵を開け、リアを箒に乗せた。
「ありがとうございます!」
「こんなに小さな子だったなんて、びっくりしたなぁ…。」
魔女はリアを見ながら空へ飛んでいく。どうやら、この森の方へ向かっているようだった。
「私はレオナ、近くの人里で暮らしてるの。」
「私はリアって言ます。歳は五歳です。あの、本物の魔女さんに会えて私もびっくりしてます!」
レオナはリアを見ながら笑っていた。
「これから、この森に住んでる友達に会いに行くの。」
「森って、魔物が居るのではなかったですか?」
「まぁ、魔物ではあるけど良い人だと思うよ。」
レオナは箒を真下に傾けた。すると、ゆっくりと下降していく。そして、森の中にある広場に辿り着いた。
広場には大勢の魔物達が集まっていた。だが、誰もその中に入って来たリアとレオナには誰も気付いていない。すると、レオナは誰かを呼んでいた。
「ガル!コボルト!」
レオナの声を聞くと、二つの影が近付いて来た。片方は狼男、もう片方は吸血鬼の青年だった。二人はレオナの顔を見て喜んでいる。
「レオナ、また来たのか!」
「こんばんは、レオナ様」
レオナは、近寄った二人を怖がる事なく嬉しそうに話している。
「ガルとコボルト、私の友達なの。」
「初めまして、私はリアって言います!」
「これはこれは、可愛らしいお嬢様ですね。」
コボルトはリアの左手を硝子細工かのようにそっと持ち、手の甲に口付けをした。口元からは吸血鬼の牙がちらりと光る。兄のレオンはそんな事はしなかった。初めての出来事にリアの心臓は高鳴り、顔も真っ赤になった。
「もうコボルト、リアちゃんはまだ五歳なんだよ?からかわないの!」
「これはこれは、失礼しました。」
コボルトはリアの手を自分の両手で包み込んで、微笑んだ。
「良かった、吸血鬼だから食べられるんじゃないかって思ってどきどきしました…。」
「俺達は人間を襲わないって心に決めたんだ。」
「それも、レオナ様に出会えたからですよ。」
二人はレオナの事が好きなようで、ずっと笑っていた。
「レオナさんは魔女って事は、魔物なんですか?」
「私は魔法は使えるけど、一応人間だからね。」
レオナはリアの顔をじっと見つめた。
「五歳なのに随分としっかりしてるんだね~。お母さんに教えられたのかな?」
「いえ…、お母さんもお父さんも居ません…。」
「そっか…。」
レオナはリアの顔をじっと見ていた後、リアの手を引いた。
「おいで、一緒に遊ぼう。帰りはちゃんと送るから、今は私達と遊ぼう!」
リアはレオナに手を引かれるまま、魔物達が集まる方へ連れて行かれた。