10 炎
それから事態は怒涛の勢いで進んでいった。
私を追っかけてきて父さんの村で大暴れしていた連中は、全員アリシエラさんの武装魔車の餌食、じゃなかった対人拘束魔導具で無力化されていた。
王都から慌てて転送魔法で飛んできた偉い人と父さんの話し合いを聞くと、
今回私が原因で起きてしまった事件はイレギュラーで、
今後はこの村では起こらないであろうことが理解できた。
私がまだ子どもだった頃に住んでいた大きなお屋敷。
お屋敷自体が強力な魔導具の塊のようなものだったけど、
管理者のアリシエラさんは他にもたくさんのイカれた、じゃないイカした魔導具を日々産み出していた。
幾度となく繰り返された悪漢たちとの戦いで、お屋敷の内包する力は当然周囲に知れ渡った。
一軒のお屋敷が所有するには過剰すぎる戦力は複数の国から脅威認定された。
複数の国が取り決めを行い、その代表とお屋敷の代表つまりお父さんとの話し合いは、
双方の不可侵を約束する取り決めで結実した。
つまり、お屋敷の力が欲しいやつがちょっかい出すのは勝手だが自己責任でやれ、
お屋敷側もそういうのが来たら遠慮せずにやっちゃって、なのだ。
お父さんの村で、私が原因で暴れたイレギュラーな連中は王都で処分を受けることになり、
本来事態を収拾したアリシエラさんのことは表沙汰にできず、
現場に居合わせたモノカさんのパーティーのお手柄になってしまった、と。
私が子どもの頃に結ばれた取り決めは、成長した私を助けてくれた。
知らなかったとはいえ、何もできなかったのが悔しい。
父さんたちは、昔と変わらずに迎え入れてくれた。
成長の証を見せられなかったのが悔しい。
モノカさんたちは、大人な態度で状況を受け入れてくれた。
同い年なのに自分と違いすぎるのが悔しい。
うん、悔しいからってうじうじしているばかりなんて、そんなの私じゃないよね。
父さんたちが教えてくれたこと全部を使ってできることをぶつけられる冒険を、
今の自分を受け止めてくれる仲間たちと共に、
見たことないような世界で、
暴れ回りたい!
楽しそうにバーベキューしているみんなと触れ合いながら、
私はひとり、胸の内に炎を灯す。




