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Double Lotus  作者: 橘塞人
Chapter4:月朔の洞窟
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Act.061:守護者Ⅱ~黒い守備~

 黒と紫の肌の闇の守護者はルナ達を見て愉快そうに笑う。その表情は自分が彼女等に対し、絶対的に有利であると確信した自信の笑いであった。

 ○△□☆×連中の自信は、ただ根拠の無い自惚れだった。だが、その闇の守護者は違う。この地にブラックエンド・ダークセイバーが安置されてからずっとこの部屋を守り続けてきた実績、その身を纏う膨大な魔力、そして自身の持つ特殊な性質から、それは現われていた。


「さぁて、どいつから地獄を見せてやろうか」


 闇の番人はニヤニヤと笑いながらルナ達を見定める。三人の強さの強弱の差はあれど、それはどうでもよかった。

 その守護者にとって、相手がどんな強さを持っていようと、適格者でない限り同じなのだ。だから、どの者から倒してゆくかなんて、戦術でも何でもなくただの趣味でしかない。

 ほんの数秒、それを考えた闇の守護者は、三人の中の一人に狙いを定める。


「貴様だ!」


 ルナである。

 闇の守護者は自身の一番近くに居たルナに向かい飛びかかる。魔力を纏った闇の守護者の勢いは凄まじく、ロケットのようであった。

 それから闇の守護者は間髪入れずに攻撃に入る。左足をルナから少し外して支点とし、それを中心に遠心力の籠もった右足による回し蹴り。だが、その攻撃はルナも読んでいた。遠心力を利用した攻撃は動作が大きく、ルナは容易に回避する。

 それでも次の瞬間、ルナの体に衝撃が走って大きく後方へと吹き飛ばされた。吹き飛ばされたルナの目に、闇の守護者の尻尾が映っていた。そう、最初から回し蹴りは囮であって、メインの攻撃は尻尾だったのだ。

 ルナは空中でその体勢を整え、何とか上手く着地する。そして、口元から垂れた血を拭う。そんなルナに、闇の守護者は追い討ちをかけようとする。が、それは止められる。

 魔力の爆発が、守護者の背中で発生した。ルナを攻撃し、隙だらけになった闇の守護者の背中にマリアが遠隔魔法の攻撃を叩き込んだのだ。その攻撃は闇の守護者の背中にまともに入り、今のような爆発が巻き起こったのだ。

 とは言え、この程度で死ぬとは思えない。マリアは追い討ちをかける。


「サンダー・ジャッジメント!」


 右に左に、キャノン砲のような魔法攻撃を繰り出し、それが闇の守護者の背中に命中する。マリアは計三発の攻撃を放ち、それら全てが闇の守護者の背中に直撃した。その攻撃一つ一つが並の魔獣ならば跡形もなく消し飛ばしてしまう程のマリアの攻撃だ。死にはしなくても、何かしら大きなダメージ位は受けているだろう。マリアはそう踏んでいたし、周りに居たルナとロージアもそう踏んでいた。だからこそ、その攻撃によって出来た煙幕の中から現われた闇の守護者の姿を見て、驚愕するのだ。

 無傷。

 闇の守護者は、明らかに無傷であった。無理をしているようでもなければ、回復魔法を使ったワケでもない。マリアの攻撃を全て食らっていながら、そのように無傷で済んでいるのだ。

 闇の守護者はマリアの方に顔をチラッとだけ向けて嘲笑う。


「それで、終わりか?」

「!」

「クククク、安心しろ。奴を殺した後、お前もたっぷりと相手してやる。何せ、久し振りの客人だ。たっぷりと歓迎してやろうじゃないか。ハハハハハハハハ」


 闇の守護者は笑い、そして視線をルナに戻す。その闇の守護者の無防備な背中を見ながら、マリアは何かがおかしいと感じていた。

 その異常なまでの防御力。

 いかな強者とは言え、攻撃をマトモに食らえばダメージを受けるのが当然である。それでも食らわないというのならば、それだけ相手との実力の差が開いているとなるのだが、それ程までの魔力をその闇の番人が秘めているようにはどうしても見えなかった。

 ならば、何か仕掛けがある筈。

 そのようにマリアは考えるのだが、そのカラクリはすぐには見付かりそうになかった。そんな思考の迷宮の中、煙を抜けて闇の守護者はゆっくりとルナに近付き、そして告げる。


「死ね」

「くっ!」


 このままでは殺されるかもしれない。自分よりもずっと強いマリアの攻撃の直撃を受けても無傷な相手では、倒す手段が無さそうにルナは感じていた。だが、諦めればそこでお終いだ。ここで死ぬ訳にはいかないし、そのつもりもない。だから、ルナは足掻く。

 魔力を充溢させ、それを闇の守護者に向けて解き放つ。


「お前が死ね!」


 ルナにとっては渾身の一撃であった。右手から放たれた炎の嵐は、まるで火山から吹き出た溶岩のようであった。それを食らえば、いかなる生物とて無事には済まないように見えた。

 闇の守護者は逃げない。避けようとしない。

 当然、その直撃を闇の守護者は食らう。そして、その周りで大爆発が起こった。大きな部屋が崩れる程ではないが、その部屋に大きな穴と衝撃を与える位のパワーはあったが。


「効かないな」


 爆発の煙の中から姿を現した闇の守護者は、やはり無傷だった。マリアの攻撃の直撃を食らって無傷だったから予見出来ていたのだが、その態度がルナをヒートアップさせる。


「それならば!」

「やめなさい!」


 ルナは魔力を上げて、さらに強力な攻撃を繰り出そうとする。だが、そんなルナをピシャリと止める凛とした声が部屋に響き渡った。ロージアだった。

 これまで冷静に戦況を見ていたロージアは、明らかに無駄になるルナの攻撃を、すぐさまやめるようにルナに注意を促す。それなりの根拠はあるのだ。


「そいつには多分、どんな魔法攻撃も通用しないわ」

「え?」

「!」


 ルナとマリアは、ロージアの方を振り向いた。ロージアは淡々と語る。


「魔族や精霊なんかにもそういった連中がいるからね。炎攻撃を吸収してしまうサラマンダーのように。おそらく、そいつはその究極形のようなものよ。それに、この闇の魔剣の守護者ということと、今まで誰もここを突破出来ていないことを考慮すれば、魔法では闇魔法以外の全ての魔法に対するレジスト効果があると思われるわ」


 理論を展開し、それを最後にまとめる。


「要するに、闇魔法以外の魔法は通用しないんじゃないかってことよ」

「え!」

「嘘?」


 反射的にそう言いはしたが、それが嘘でも勘違いでもなさそうだとルナとマリアは気付いていた。なぜなら、闇の守護者が黒い球体であった時のロージアの氷属性魔法攻撃、闇の守護者になってからのマリアの光属性魔法攻撃、ルナの炎属性魔法攻撃、それら全て直撃を食らっていながら、マトモにダメージを受けたのは皆無。それから、そういった理論になるのは不自然ではなかった。

 それを聞いて、闇の守護者は笑う。笑って、認める。


「ヒャハハハハ、今頃気付いたか。馬鹿め」


 腕を組み、闇の守護者はルナ達3人に見下した視線を向ける。


「そこの銀色仮面の申す通りだ。光、炎、土、氷、風、そして無属性、それらの魔法そのものが余には通用しない。魔法が強かろうが弱かろうが関係なく、余は一切ダメージを受けない。つまり、余は闇魔法でしか倒せない。最後の砦である余の所がそうなっているのは、ブラックエンド・ダークセイバーを手にする資格のある者は闇魔法の使い手のみだからだ。通りたければ、闇魔法を使え。簡単だろう?」


 そして、嘲笑う。


「だが、残念なことに貴様等三人で、闇魔法が使える者は誰もいない。つまり、貴様等には余を倒す手段は無いのだ」

「「「…………」」」


 闇魔法でならば倒せる。

 闇の守護者の言う通り、自分達には出来なくても、カオスにとってそれは不可能ではない。それが、マリアにとっては一抹の救いであった。それまでもたせればいいのだが。

 ロージアはこの闇の守護者を倒すのを諦めたりはしなかった。何とかして、手段を見つけ出そうとする。そして、一つ言われなかった穴を指摘する。


「もう一つ、攻撃手段はあるわ」

「「!」」


 ルナとマリアは驚いて、ロージアの方を振り向いた。闇の守護者は、静観を決め込んでいる。闇魔法の他に自分を倒す手段があるとは毛頭信じていないからだ。

 ロージアは言う。


「物理攻撃よ」


 闇属性以外の魔法が一切通用しないならば、魔法攻撃の効果を期待しなければいい。単純に殴り、蹴り、武器を使用したりして攻撃すれば良いのだ。

 そのように、ロージアは意見する。


「クククク、そうか、そうか」


 そのロージアの意見を闇の守護者は笑う。嘲笑う。


「やれるものならやってみろ」


 絶対に出来ないと言わんばかりの、完全に見下した笑いであり、発言であった。その言葉にしろ、表情にしろ、振る舞いにしろ、闇の守護者のやっている事は、少なからず癪に障るものであった。

 そんな闇の守護者に、ロージアは気にする素振りを見せない。冷静沈着なままだ。そして、そういった感じのまま闇の守護者に返す。


「言われなくてもやってあげるわよ。ちゃんとしたカッコウでね」


 すっぽりとローブを被り、そこにさらに銀の仮面をつけた上級魔族の女、ロージアはそのように言い放った。

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