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Double Lotus  作者: 橘塞人
Chapter4:月朔の洞窟
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Act.055:苦難の道Ⅳ~一から二へ~

 駆忌途(クイズ)大王は先へと進む道を出現させる方法を、正直に説明し始めた。


「この先へ行く道を出すには、パスワードが必要なのだ」

「パスワード? 特定の言葉を出せばそれでいいのか?」

「そうだ。だが」


 駆忌途大王はカオスの言葉が正しいと言いはするが、それだけではないとも付け加える。


「だが、それだけではない。見せてやろう。刮目するがいい!」


 そう言いながら、駆忌途大王は壁に向かって自分の肩の幅に合わせて足を広げ、仁王立ちする。そして、パスワードによる封印の解除を開始する。


「パスワード解除、開始ィイイイイッ!」


 すると何処からともなくリズム音が流れてくるようになった。そして、駆忌途大王はそれに合わせて歌い始めた。


「ダンダンダラッ、タッタッタラ~♪」


 駆忌途大王はそれと共に左腕をゆっくりと天井に向かい真っ直ぐに上げてゆく。それと同時に顎も上向きにして、視線もちょうど上向きとなる。


「駆忌途大王~♪」


 最後の『う』のところで、駆忌途大王はビシッとポーズを決めるが、その続きがあるためにすぐに動き易いものへと戻した。


「ぬぁっ!」

「変態!」


 カオス達に衝撃が走る。

 だがライヴモードに入った駆忌途大王は、そのような些細なことは気にしない。パフォーマンスを続ける。

 駆忌途大王はその天井に向かって上げた左腕を左回りに弧を描きながら下ろし、それと同時に真っ直ぐに伸ばしていた左手の指を閉じて、拳の形にする。だが、親指だけは残しておいて、その親指で自分を指差す。

 無論、それと同時進行の歌も忘れずに。


「その甘~いマスクに♪」

「痺れるぅ~♪」


 何処かしらから怪しいコーラス隊が出て来て、駆忌途大王の歌(?)にコーラスをつけた。

 それから駆忌途大王は拳を解いて、指をまた伸ばし、両手を広げて飛ぶ鳥のような姿勢となった。それから、さっきまで向かい合っていた壁に背を向けて、己の汚い尻をビッと上向きにする。

 勿論、それと同時進行の歌も忘れずに。


「アイツはぁ、いつでも♪」

「カッコイーーーー♪」


 やはりコーラスが入った。


「わ~たしたぁちを~♪」


 両手で自分を抱きながら、右回りに二回ターン。


「くぅるわせぇるぅうううう~♪」


 最初の壁に面する形に戻り、首を1度前方に振って、両手を蝙蝠のように広げながら、また右回りに一回ターン。


「ツ♪」


 両手を腰に当てて、頭は45度前方へ。


「ミ♪」


 左腕を横に流し、それと同時に体を右側に傾ける。


「ぶ♪」


 今度は体を左側に傾け、その流れと共に腰に当てていた右手を高く掲げる。指はきっちりと伸ばして真っ直ぐ天井に。


「か♪」


 次はさっきの逆。


「き♪」


 また最初の壁に背を向けて、両手を上に掲げてからその指を下ろし始め、両手の指先を自身の頭頂部に当てる。


「男!」


 両手を下ろしながら向きを戻し、右手は自然体に。そして、左手では拳を作り、それで自身の心臓辺りを一回叩く。


「駆忌途大王~~~~♪」


 両手で裏拳を作り、両方の人差し指だけを立てた。そして、その二つの人差し指を自分の鼻の穴に突っ込む。足の歩幅は保ちつつ、膝を横に曲げて自身の体の位置を下げた。

 そこでコーラスが締める。


「デュワ~~~~♪」


 それで終了した。カオス達は、延々と続いていた変態パフォーマンスに疲れ、唖然としていた。だが、これが解除のパスワードであり、それは成功したのだ。

 轟音を立てながら、部屋が揺れ始めた。それと同時に、一部の壁がゆっくりと上方へとスライドされていった。すると、その動いた壁の奥から、先への道となるであろう扉が出現し始めた。

 扉は一分としない内にカオス達の前にちゃんとした形となって現われた。


「あ、アレがパスワードだったのか」


 変態の、変態による、変態の為のパフォーマンス。認めたくはなかったが、こうして扉が現われたということは、それが正しいパスワードであったと考えて間違いない。

 それはフローリィにも理解出来ていた。だから、こう言う。


「あたしには死んでも言えそうにないパスワードね」

「それはそうだろう!」


 駆忌途大王は汗を流し、息を切らしながら、誇らしげに胸を張る。フローリィの言葉を誤解しているのは明らかだった。


「このパスワードは歌詞だけに止まらず、振り付けや音程に至るまで、全て正確に再現しなければならないのだ! 一つでも間違えてしまうとそこでアウトだ! 最早これは匠技と呼んでも過言ではなかったのだぞ!」


 駆忌途大王は自慢する。確かに、歌詞や振り付け、音程を一つも間違えないのは客観的に見て凄いことではあるのだろう。だが、カオス達はそんな駆忌途大王を素直に讃える気にはなれなかった。

 だって、変態だし。


「別にそういう意味じゃない」


 フローリィは淡々とした調子で、駆忌途大王を否定する。ただ、この変態を賛辞する歌を歌ったり、変態的なポーズをしたりするのは死んでも御免だっただけなのだ。

 そんなフローリィはもう、怒らない。これで、この変態と係わり合いになることは二度とないのだから。そして、それはカオスも同様だった。

 これで、ここは終了だと。


「どうでもいいが、さっさと先行くぞ」


 カオスは早速先へと進む扉を開けてフローリィを促した。フローリィは、少し小走りでカオスの方に近付いていった。


「こっちが遠回りなのは間違いねーんだからよ。急ごうぜ」

「だね」


 カオスとフローリィは横に並んでこの部屋から先へと出ていった。その後姿を、駆忌途大王は黙って見つめていた。少し嬉しそうな面持ちで。

 此処は、突破されてしまった。だが、少々時間を稼ぐことが出来、自分が此処に縛られている時間を短縮させることが出来た。百年という月日からしたら焼け石に水のようなものだが、それでもゼロよりはマシであるのに違いはない。

 何にしろ、自分の出番はここまでだ。後は、その結果をゆっくりと待とうと思っていた。カオス達がブラックエンド・ダークセイバーを得ようとも、得られないとも、どっちでも彼にとってはどうでもよくなっていた。寧ろ、取ってもらえれば尚良かった。カオス達がブラックエンド・ダークセイバーを手に入れれば、自分がここにガーディアンとして滞在しなければならない時間は一気にゼロになるのだから。

 とは言え、その期待は出来ない。それも、駆忌途大王は感じていた。なぜなら、今まで前例は全く無いのだ。だが、カオス達が負けて生きていれば、カオス達は自分達と同じようにここの新しいガーディアンとなる。それもまた、彼にとっては吉であった。


「クククク」


 駆忌途大王は人知れず笑っていた。



◆◇◆◇◆



 次の苦難の部屋は、すぐに現われた。石の壁だった駆忌途大王の部屋とは随分と雰囲気の違う近代的な雰囲気の部屋ではあったが、部屋の中に装飾や何かしらの物品が全く見当たらないのは、駆忌途大王の所と同じであった。

 そこにガーディアンが一人だけ居るという点においても。


「賢き者達よ、ようこそ」


 コックの縦長の帽子のようなヘルメットを被ったガーディアンが、駆忌途大王とは対照的に落ち着いた紳士のような態度でカオス達を部屋に迎える。そして、カオス達を迎えた自分の部屋を紹介する。


「ここは苦難の道、第二の砦。此処では、君達にこちらで出す者と戦ってもらい、それに勝利したらこの先へと進む許可を出そう」

「戦い? ふふふふふふふふ」


 苦難の道第二の番人(名前不明)によって、突破条件に戦いを出されたフローリィは愉快そうに笑った。さっきまでの機嫌の悪さが嘘のように。


「ようやく、その『苦難の道』らしくなったんじゃない?」

「機嫌良さそうだな、フローリィ?」

「まあね。さっきみたいにウダウダ考えるよりも、こういう方が性に合っているしね」


 やっぱりな、とカオスは思った。好戦的な性格を考慮に入れれば、戦いに喜びを見出しているのも見て取れた。そして、自分とは違うのだと。自分は平和を愛する吟遊詩人なのだと(嘘)。

 それを考慮して、此処ではフローリィに任せた方がいいだろうとカオスは考えた。実力的にも普通に戦えばフローリィの方が強そうだし、彼女はそれを望んでいる。こんなんで機嫌が良くなるのなら、いくらでも任せておきたかった。

 と言うのは、全て建前であった。実際は、ただ楽が出来るから。


「そうだな。じゃ、前回は一応俺が答えたことだし、今回はフローリィに任せようじゃないか」


 カオスはもっともらしい理屈をつけて、そう言った。実際はさっきの対駆忌途大王の時も、フローリィの暴行によって突破したようなものだったが、自分がやったのに変わりはない。

 詭弁。カオスの言っているのは、詭弁ではあった。だが、そんな細かいことをフローリィは気にしない。彼女にとってはどうでも良かった。

 戦いは喜び。だから、フローリィは微笑む。


「まあ、大船にでも乗ったつもりになってど~んと!」

「駄目だ」

「え?」


 任しといてよ! フローリィがそう言おうとしたところで、苦難の道第二の番人(名前設定無し)によってその台詞は遮られた。彼は、淡々とした調子で言う。


「それは許されない。なぜなら」


 苦難の道第二の番人(名前つけ損ねた)は、腕を高く掲げた。すると、天井に穴が二つ開いて、二つの人型の影が部屋の中に下りてきた。

 彼は自分の後ろに降り立った二つの影に視線を向けながら、カオス達に言い放つ。


「なぜなら、これは2vs2の対決だからだ」

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