Connect08:金髪ロリと銀色仮面と父の誕生日-魔族サイド-
魔王アビスの居城は静寂に包まれていた。普段からそう五月蝿くはならない場所ではあるのだが、一部では例外がある。そんな例外の部屋でさえも、この日はとても静かであった。部屋のあちらこちらがレースで飾り付けられ、家具には可愛らしいシールが貼られ、たくさんの可愛らしいぬいぐるみが置かれている、魔族のものとは思えぬその部屋の持ち主、フローリィがおとなしかったのだ。
フローリィはその日、珍しく静かに本のページをめくっていた。そこに、たまたま近くを通りかかった銀の仮面をつけているロージアが少し立ち寄り、フローリィに話しかける。
「何を読んでいるの?」
「ああ、ロージア。これ?」
フローリィはその本の背表紙をチラッとロージアに見せてやる。そうしながら、それがどのような本なのかロージアに簡単に説明してやった。
「世界珍品百科。城の書庫にあったものよ」
「ちん、ぴん?」
ロージアは少しひいた。フローリィまで死んだ誰かさんのようになってしまったのではないか、と危惧したのだ。だが、それは杞憂に終わる。
「もうすぐ父様の誕生日だからね。何かプレゼントをあげようと思うんだけど、ありきたりじゃつまんないからさ、何か変わったモノでもあげようと思って、ここに何かないかな~と思って見てたんだ。そんで、GETしてプレゼント・フォー・ユーってな訳よ」
「成程。それで?」
ロージアは安心した。心底安心した。フローリィがガイガーのような変わり者になってしまった訳ではなかったからだ。
「で、何か良さそうな物はあったのかしら?」
安心すると、ロージアはその話題に楽しく参加出来る。
「そうねぇ」
フローリィは今まで見ていたページをパラパラと見返して、あるページでその指を止める。指を止めて、ロージアにそのページを見せる。
「これなんてどうかしら?」
「ブラックエンド・ダークセイバー? 闇属性のインテリジェンス・ソードね」
「いいでしょー?」
「いいわね」
魔王アビスは闇属性の魔法を得意としている。だから、それがどのような剣なのかは知らないが、彼に使えなくはないだろう。無用の長物にはならず、とても喜ばれる一品とロージアには思われた。
もっとも、本当の親子ではないにしても、愛娘であるフローリィからの誕生日プレゼントならば、何であっても父親が喜ばない筈がないこともロージアには分かっていたのだが。
「それじゃあ、これに決まり♪」
フローリィは嬉しそうな顔をする。そのプレゼント(候補)が、父親の役に立つ物であると分かればそれだけでいいのだ。
「では、今度GETしに行こうね、ロージア」
「ええ、分かったわ」
と言ったところで、ロージアははたと気が付いた。
「あれ?」
いつの間にか、関係ない筈である自分もその探索への参加が決定されていた。いつの間にか、巻き込まれていたのだった。




