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Double Lotus  作者: 橘塞人
Chapter1:トラベル・パスCランク試験
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Extra Act.02:とあるナルシストが抱いた不満事項~ざまぁはまだですか?~

また番外編。

 ウェッジ・ディアコードは昔からカオス・ハーティリーに対して不満を抱いていた。

 まず、あの髪型だ。カオスは今も男にしては長髪だが、小さい頃はもっと長髪だった。肩から背中に至るまで綺麗な金髪をなびかせ、太陽の光を受けるとそれは光り輝いているようだった。

 嗚呼、何て綺麗なんだ。それまで金髪なんてものを見たことなかったウェッジは、幼心にもそう思った。そして、完全に女の子だと思ったのだ。思ってしまったのだ。


「カオスちゃ〜ん」


 姉らしき少し年上の少女がカオスのことをそう呼んでいたので、ウェッジのその判断はより確固たるものになってしまった。

 それからウェッジはカオスを目で追うようになった。ルナとかいう黒髪の幼女に連れられていったり、マリアとかいう姉に連れられていったり、カトレアとかいう母親に連れられたりする様をあれこれ見ても、目に入るのはカオスばかりだった。

 そんな自分を自覚したウェッジは、ある日カオスが一人になっているのを見計らって、カオスに言ってしまう。


「お前、カオスとか言ったな? 将来、お前を僕様の嫁にしてやろう」


 ウェッジがそう言った、言ってしまった時、カオスが最初に浮かべた表情は戸惑いだった。カオスとしては訳が分からなかったのだ。

その戸惑いのままに言う。


「男の俺が嫁なんかになる訳ないじゃん。嫁は俺が貰うものだ」

「なっ」


 ウェッジはショックで崩れ落ちた。

 嘘だと言って欲しくて、ウェッジはカオスのことを色々な人に訊き、それによりカオスは男というのは真実であると知る。

 さらなるショックを受けたウェッジは、その日から熱を出して三日休んだ。そして、これからどんな顔をして皆に会えばいいのか色々考えもしたが、実際会ってみると、誰もウェッジのプロポーズを知る者はいなかった。

 カオスはそれを誰にも言っておらず、そしてカオス自身もう覚えていないようだった。興味がないらしい。それはウェッジにとって助かったことでもあったが、不満に感じることでもあった。何せ、カオスはウェッジの名前すら覚えない。

 カオスはウェッジのことを視界に入れもしないようだ。



◆◇◆◇◆



 それから10年くらい経った。ウェッジは外見も内面も鍛え上げ、中々良い男に成長した。いや、最高になれたと感じられた。

 その一方でカオスは適当な男になった。外見は昔の面影を多く残していたが、学校の授業はどれもテキトウだった。

 剣術稽古の授業で組み手をして、ウェッジはカオスに勝利したが、カオスはウェッジの目から見ても明らかに手を抜いていたことが分かった。


「ふ、カオス。貴様の実力はそんなものか? 僕の足許にも及ばないようだなっ!」


 そう言って煽ってみはしたものの、糠に釘だった。何を言ったところで気にもしない。

 去年トラベル・パスCクラス試験を受験し、筆記試験を突破したので大いに増長し、大いに煽ったのだが、柳に風とばかりにカオスは気にもしなかった。二次試験は受験者同士の一対一の組み手で、負けてたまるかと負けん気を発揮し、相手をボコボコにした結果不合格となったのだが、それさえもカオスは気にしなかった。

 ざまぁ、と嗤うことすらなかった。と言うか、トラベル・パスCクラス試験を受験したことすらカオスは覚えていないと言うか、いまだにカオスはウェッジの名前を間違える。



◆◇◆◇◆



 それから一年後、ウェッジは再びトラベル・パスCクラス試験を受験した。散々煽ったことでやる気が空回りを起こし、スタート直後に周囲の人間を何人か殴り飛ばしてスタートダッシュ決め、相当上位の順位でゴールしたのだが、それでも不合格であった。その一方で、カオス達はほぼ最下位でゴールしたが、それでも合格した。

 目の付け所が間違っていると嗤うのだろうか? 散々増長したくせに不合格かと嗤うのだろうか? ざまぁ、と大笑いするのだろうか?

 ウェッジはそんな心配をしたが、カオスはそのようなことをしなかった。それどころか、試験結果を訊くことすらなかった。カオスはやはりウェッジに興味がないらしい。

 それがウェッジには不満だった。

次から本編再開です。

で、正月スペシャルが終わったので、更新は2日に1回くらいになる予定。

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