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19..

 リュカを送り届けた後、残る仕事を片付けるために、ガブリエルは車をとばし本部へと戻る。


 車を降りてエレベーターに乗り込む。16階につき、エレベーターを降りると、フロアにアマンダが立っていた。


 エレベーターを待っていたのかと、ガブリエルは特に意識することなく仕事場へと足を向ける。


 「ねぇ。あの子何者なの?」


 しかし、アマンダはガブリエルを呼び止めたため、彼女の足は止まることを余儀なくされた。


 「あの子?誰のことだ」


 「とぼけないでよ。あのリュカって男の子のことよ」


 「リュカ坊がどうした。ただの男子(ガキ)じゃねぇか」


 「4階ある建物の屋上から飛び降りて、無傷で済むような子供が、ただの(・・・)ガキで済まされるのかしら?」  


 ガブリエルに詰め寄り、真面目な口調でアマンダが言う。


 「単なる偶然だろ」


 「偶然?あの子の馬鹿げた芸当を、あなたは偶然ですますのね」


 「おい、どうした。何をそんなに興奮することがある」


 「あなたは、生で見てないからそう言えるだけよ。それに、興奮はしてないわ。ただあの子が普通とはかけ離れている気がしてならないだけ。……ねぇ、あの子って本当に人間なのかしら」


 「ガキ扱いしねぇってなぁわかるが、人間扱いしねぇとは。少しひどいんじゃないか」


 リュカと知り合って2日ほど。まだ知らないことは山ほどあるが、全く知らないわけではない。だから、リュカのことを悪く言われると、少し腹立たしい。


 「言葉のアヤよ。真面目に受け取らないでちょうだい」


 「だといいがな」


 ガブリエルはフンと鼻を鳴らしながら言う。


 「ようは、あの子は一体何者かってことよ」


 「私には普通のガキに見えるがな」


 「森で生まれたなんて言ってる時点で、普通とはかけ離れていると思うけど?」 


 ギロリとガブリエルはアマンダを睨む。

 肩の力を抜き、アマンダは息をついて再び口を開く。


 「あなたと喧嘩したくて言ってるわけじゃないのよ。そのつもりもないしね。呼び止めたのは、もしかしたらあの子の素性を知っているんじゃないかって思っただけよ」


 「知らなくて悪かったな」


 「ええ。期待が外れちゃったわ」


 アマンダは大げさに肩を落として、落胆を見せつけてくる。もちろん、わざとそうしているというのは、ガブリエルもわかっている。


 「こうなったら個人的に調べてみるわ。それだったらいいでしょ」


 「私に聞かんでも好きにすりゃいいだろ」


 「あ、そう。だったら、そうさせてもらうわ」


 アマンダはエレベーターのボタンを押す。数秒経つと上からエレベーターの箱が降りてきて、自動扉が開いた。


 「呼び止めてごめんなさいね。それじゃ」


 エレベーターに乗り込んだアマンダは、ひらひらと手を振りつつ扉を閉じる。


 フロアに一人残ったガブリエルは、頭をガシガシとかきながら、面倒臭そうにため息を漏らす。


 アマンダがなぜリュカという子供にムキになっているのか。ガブリエルにはわからない。だが、改まった聞くことでもないし、そこまで興味があるものでもなかった。


 「さて、仕事。仕事」


 リュカが何者かということよりも、ガブリエルの頭は自分の仕事を優先する。


 リュカの母親を見つけなければならないし、またはリュカの母親以外にもエデンの街でおこった事件の処理をしなくてはならない。仕事は少ないに限るが、今のところは抱え持ってあまりある仕事がある。


 いつまでもフロアに立っていても仕方ない。ガブリエルはエレベーターに背を向けて、職場へと早足で向かっていった。

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