始まりの物語
始めたばかりなので改行や描写がいろいろ変になっていますがご了承ください。
それは唐突に起きた。天が砕け幾振もの剣が大地に降り注ぎ一際大きな剣が大地を穿った。
その瞬間そこに居合わせた生物は滅び去った。後にその剣は「天地開闢の剣」と呼ばれる。
その後生まれた生命体は男性が創剣の民、女性が聖剣の民と呼ばれた。聖剣の民にはある
能力が備わっていた。その能力は姿を剣に変化させる能力、名を「剣変」。
この大地にもまたつがいになった民がいた。
「この娘は奴隷商人から逃げてきたそうだ、身寄りがないのだがどうしたものか・・・
セミルよ」「はい此処に」「今日からこの娘、この剣ヴェイン・レテーンの剣主は其方だ
良いか?」「ですが剣王様、このような一介の元騎士に剣を授けてもよろしいのですか?」
「構わんよ、この娘の意思だ・・・・受け取ってはくれまいか?」「剣王の命とあらば」
「うぉっほん!ではこの娘ヴェイン・レテーンを貴殿に剣譲する、受け取るがいい!」
それから三日後とある宿にて
「う・・・・うん?」少女が目を覚ます。質素なベッドの上で辺りを見回す。
少女の首や足首、手首にあった枷の痣や鞭の傷は何者かによって綺麗に治療されている。
窓から差し込む陽日が輝く。ベッドの横にある机には置手紙と朝食それと写真。
内容は「今日から君の剣主になったセミルだ、よろしく。今は用事があるので
家を空けている。少しだが朝食を用意しておいた。無理にとは言わないが
食べてくれると幸いだ。俺の作るスープは絶品だぞ?着替えも置いとくからな」
とあった。「・・・・・いい・・・匂い」少女がスープを口に運ぶ。数分後
ガチャリ
「口に合うかい?」扉を開けてセミルが聞く。「あ、あの・・・美味しい・・です」
「そうか、それはよかった」「あの・・・・セミル・・・さん?」「何だい?ヴェイン」
「!・・・どうして名前を?」「はは、記憶が無いのは無理も無い、君は剣譲されたんだ」
「え・・・剣・・・・譲?」「聖剣の民から剣王様が一人を選び剣王様の選んだ創剣の民に
直々に剣変させてから渡される、それが剣譲だ」「それで?」「君が宿すのは烈剣」
「烈剣・・・・ヴェイン・レテーン」「ちなみに俺は時空、空間に干渉する魔法を使える、
君の鋭さがあればおそらく空間を斬り取ることも可能だろうね」「そんな・・・・ことが」
「可能なのか・・・かい?それは君と俺次第だろうね、それと・・・・・着替えないの?」
「え?」「君、今キャミソールだけじゃないか」「!!」「・・・着替えたら降りてきてくれ
・・・その写真について話したいから」バタン「・・・・写真」コンコンコンコンコン、コツリ
階段からヴェインが来る。「あの・・・・」「お、ヴェイン・・・似合ってるぞ」「そう・・かな」
真っ白なブラウスに紺色のロングスカートで上には水色のカーディガンを羽織っていた。
ヴェインはこの家に来て初めて笑顔を見せた。すぐに消えてしまいそうな笑顔だったが
それがまた可愛らしくもあった。「さて、本題に入ろうか・・・その写真に写っているのは
小さい頃の俺と家族だ」「はい」「そして有り得ないことに君も剣として写っている」
「今日剣譲されたばかりの剣がどうして昔の写真に写っているのか不思議じゃないか?
少し昔話をしよう・・・俺には昔一目惚れした人がいた」ヴェインは小首を傾げ椅子に座り
俺の話に聞き入った。「その人は美しく長くて白銀の髪がとても魅力的だった、目は翡翠
の様で薄緑に輝いて綺麗だった、よく俺を可愛がっていた、覚えていないか?ヴェイン・・・・」
ヴェインは首を振り「よく・・・・・覚えてません」と答えた。「もう・・・記憶が曖昧で
自分がどこの誰だかも分からない、剣譲で無くなって欲しくない記憶まで消えてしまったの
かも分からない、何もかも分からなくて・・・・怖いんです」「少し詳しく話そうか」
剣譲とは先述話した通り剣王様が創剣の民と聖剣の民の中から一人ずつ選び所有者と剣を
作る儀式である。また聖剣を持てるのは王宮支えの上級騎士から神官、王宮の人々に限られ
平民には王宮の鍛冶屋によって作られた剣を配布している。剣譲される聖剣の民は
記憶の一部を失うが差支えがないよういらない記憶(聖剣の民基準)を失うはず・・・だが
ヴェインの場合感情の起伏までなくなるまでに著しく記憶が無くなっているのである。
「辛いか?ヴェイン」「はい・・・・とても辛くて生きる気力も・・・キャ!」
セミルがヴェインを引き寄せる。「大丈夫、失った記憶は戻らないかもしれない、けどね
今この瞬間、こうして生きてるじゃないか、過去がないからって嘆いても何も変わらない
だったら今を大切にして今を過去にして行こう、記憶は曖昧な物だから忘れる事もある、
だけのその記憶は必ず何処かに残るんだ、だから心配いらない、忘れていても必ずあるはず
だから生きる気力はしっかり持って・・・俺はずっと側にいるから、君をひとりにしない」
その瞬間フッとヴェインが気を失った「やっぱり・・・相当疲れていたんだね、ひとまず
ベッドに寝かせて・・・俺は」木製の扉、クローゼットの奥にしまいこんであった黒い
ローブ、中には無数の飛刀が忍ばせてある。反面を被り口元を隠す。「王宮に行くかね」
セミルは元騎士では無く王宮直属、暗殺専門の執行集団「陰剣(かげつるぎ」)」元団長
でありセミル・ウェイクスという名も剣王に新たな人生を生きる為、剣譲の際に貰った
名前である。元はシャドウ・レイドという名で奇襲や暗殺技術を知らずに覚えていく体質の
レイド一族の出身。その特筆した技術を買われて剣王の召使いから出世したのだ。
今回王宮に行くのは旅支度の為王宮に置いてきた私物やら何やらを回収しに行くのだ。
王宮にて
「ほっほっほ、何も陰剣の姿で行んでもよかろうに・・・まあなんじゃ、茶でも飲むか?」
「いえ、ヴェインを連れて国を出て旅に出ようと考え支度の為に戻ってまいりましたそれと
馬を二頭程貰えないでしょうか?出来るだけ長く走れる馬が良いのですが・・・・」
「そうだのう、一頭はおぬしがこの前まで使っていたのをやろう、もう一頭は馬小屋から
適当に良さそうなのを持って行っておくれ、旅に祝福を祈っておるぞセミル」「はい!」
そう答えてセミルは城を後にした。「・・・セミルよ、過去を引きずっていては先には
進めぬ・・・・この旅で気付いてくれると信じているぞ」
その次の日、早朝の宿では
「あの・・・良いんですか?こんな高そうなマント」「ん?これか?これは俺の私物だぞ」
「!!・・・・・そう・・・ですか」ヴェインはちょっと驚いたようにマントを羽織った。
「暗くならない内に次の町に行きたいな・・・馬は平気か?」「はい、大丈夫ですよ」
セミル達は城下の宿から西の森に向かって馬を走らせた。「あの森には何があるんですか」
「今は三日分の食料を持ってるけどそれもいつか切れるからね、食料調達が先決だよ
昔任務でしくじってさ、五日飲まず食わずだった時通りかかったのがあの森さ」
ヴェインはそれを聞いて「確かに」と頷いた。セミルもその時にあの森には食料に
なりそうな果物や山菜が沢山あることを前持って知っていたので第一拠点を森にしたのだ。
「うわぁー、鬱蒼としてる・・・こんなとこで食料調達を?」「うむ、まずは樹液だな」
セミルは荷物からナイフと鍋、ロープと棒を取り出した。「まず木に斜めに傷をつける
その後棒につけた鍋を木に括り付ければ・・・・っと、完成だ」ヴェインは感心したように
こちらを見ている。「次は・・・あ、肉か芋だったらどっちが良い?」「・・・・お肉
いや、やっぱり芋で・・・悲惨な事になりそうなので」それを聞くとシャベルと皮袋を
取り出して「芋の場合地面の蔦が這ってる場所を掘ると出てくるぞ・・・・・ほらな」
「手慣れていますね」ヴェインの質問に「任務先でこれができなかったら死活問題だぜ?」
セミルがやけに悲しげに話していたのでヴェインは不思議に思った。「あ!しまった!
水を探さないと!」「あ、それならさっき」ヴェインがセミルの手を引っ張り川へ。
「でかしたヴェイン!」カバンから今度は煮沸用の鍋を取り出し、水を入れてそばに置く。
「後は火を起こすだけで相当な事が出来る」ヴェインが火を起こす最中セミルは荷物から
包丁などの調理器具を取り出して調理を始めた。「火、起きましたよ?」「おう、じゃあ
早速芋を蒸かそう」蒸し器に芋を入れて待つ。煮沸した水は二つに分けて置く。
片方の水に鶏ガラを入れ先ほど蒸した芋をマッシュして入れる。「さぁ、俺特製鶏ガラと
芋のスープ・・・完成だ!」昼食を終えたセミル達は再び馬を走らせ次の街を目指す。
道中大きな山に大きな何かが突き刺さっているのにヴェインは気付いた。「あれは何?」
セミルは「あれは天地開闢の剣、この地を分かつ聖なる剣で刀身の西側が聖剣の民の領地で
東側が創剣の民の領地、互いの国では絶対に戦争は起きない、不穏分子はいるけどね」
今度は不穏分子という単語に怒りがこもっている事にヴェインは気付いた。
「次の街は創剣の民の領地の最西端だ、ヴェインと同じ聖剣の民もよく出入りしてるぞ」
そして街の門に差し掛かると立て札に「騎士の亡霊に御用心」とあった。