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だから道具屋だって言ったでしょ!  作者: 朱巴
ローサリエ王国
17/20

16 門番さん

大変遅くなりすみません。

なんとか月が変わる前にあげられました。





 町の中や周囲の事を説明されながら進んでたら、気づけばもう門の前まで来てた。ここを潜れば三人ともお別れだ。


 閉じられた大きな門の隣には、大きな馬車が一台辛うじて通れそうなくらいの通用門がある。どうやら普段はここしか使われていないらしい。


 その前に立っていた二人の門番さんがテキパキと身分証の確認をしているのが見える。ゲーム時代は基本立って挨拶してるだけだった――仲良くならない限りは無表情だったし、持ち場から動くのは魔物か犯罪者が近づいた時だけだった――からちょっと新鮮。


 さて、私達の順番が来るまでにもう少し時間がありそうだし、今の内に内職で散らかしたアレコレは片付けておかないとね。と言っても私の膝の上のスペースで足りる、ちょっとした道具と木屑だけだけど。


 あ、内職はキチンと終わりましたよ。ちゃんと★五で統一させましたとも。

 難しい物じゃないからもっと早く作れると思ったんだけど……ほら、馬車がね、動くからね? 少しでも手元が狂うと――この場合削り過ぎるとなんだけど、すぐ★四になっちゃうからさ。




 そうこうしているうちに列は進み、私達の番になった模様。私とラディムさんの間に置いたクッションの上から眠っているソラを膝の上に移動させて準備完了。

 まだ赤ちゃんだからか寝てばっかりのソラも、周囲に人の気配が多いからか、今は寝た『フリ』してるらしい。何でわかるかって? だってほら、耳がパタパタ動いちゃってるしね。かわいいなぁもう!


「やあ、ラディムさんじゃないか。お帰りなさい。街道の方はどうでしたか?」


 和やかに挨拶してきた門番さんは、落ち着いた雰囲気のベテランっぽいおじ様でした。もう一人は随分若そうだし、緊張気味だから新人さんかな?


「こんにちは。行きも帰りも穏やかなものでしたよ。これも守備隊の皆さんのお陰ですね」


「領民の皆さんの生活を守るのが、我々守備隊の仕事ですからな」


 結構大きそうな町なのに、ラディムさんはお店もやってるからか門番さんとも顔見知りなんですね。身分証出す必要無さそう。あ、ちゃんと規則だから見せなきゃダメですか。ですよねぇ。


 …………。


 えっと、ところでさ?

 私、何かやらかしましたかね?


 おじ様門番さんとは逆の位置、私側に立つ新人門番さんから、すっごい見られてるような……。気のせい? 気のせいだよね?


 そっーと目だけを動かして、ちょい斜め下にある新人門番さんを見……たら視線がモロに合っちゃったよ!

 なんか驚いたみたいに目見開いてガン見してるし! 私の後ろに何か……って訳でも無い。

 だって視線が刺さる。そりゃもう盛大にブスブスと刺さってるから!


 これ絶対スルー推奨案件だよね!?

 見なかった事にしていいかな? いいよね!


 一人脳内会議で可決されたので、視線をそっと外してラディムさんを視界に入れつつ、ふわふわなソラの背中を撫でる。ふう、ちょっと落ち着いた。


 不自然に固まったまま動かない門番さんに気づいたラディムさんやハニークさんが、不思議そうに門番さんの視線を辿って私を見る。目で何があったか質問されたけど、解らないから首を横に振った。


 いやホント、意味わかんないから。お互い首を傾げるしかないよね。後ろの方からパウルさんの声を殺した笑い声が聞こえた気がしたけど……。うん、気のせい。


「あの、どうかしたのかい?」


 このまま放置も出来ないと思ったのか、ラディムさんが固まった門番さんに声を掛けてくれた。


 え、私ですか? 見てませんよ。何か怖いし?


「……え? あ……い、いえ。失礼しました。あの、お嬢さ……んは王都から来、いらしたのですか? み、身分証の提示を! お、お願いしたいのですが?」


 挙動不審な新人門番さんは、我に返ったらしく慌ててお仕事を再開した。

 でも何で敬語なのか不明だし、使い慣れてないからか(ども)り過ぎ。そして最後何故に疑問形か。


 まぁ身分証なんか持ってないし時間も掛けたくないので、ここは早速嘘の設定(テンプレ)を説明しちゃおう!と口を開こうとしたら、その前にラディムさんが全部説明して通行料の銀貨も払ってくれました。ありがたや。


 よく小説である犯罪歴の確認はしないのかな?

 ゲーム時代は無かったけど、あの頃はどうやって調べてたんだろうね。暗殺者やってた時は、手配書の人相描きと本人かが判る魔道具渡されてたけど、それと同じ? 見えない所に魔道具が設置されてたりするんだろうか。


 つい周りを探しちゃったけど、それらしい物は発見出来ず。うーん、見てみたかったのに残念です。





「すまないね、お嬢ちゃん。コイツどうやらお嬢ちゃんをお忍びの貴族様と勘違いして緊張してたみたいだ。まだ配属されたばかりでこの仕事に馴れてないから許してやってくれないか」


「す、すみませんでしたっ」


 不意におじ様門番さんが姿勢を正し、苦笑をこぼしながら謝ってきた。それに追随して深々と頭を下げる新人門番さん。

 若いのに、初対面の(見た目)子供に頭を下げられるなんて、純朴なんだな~ってちょっとほっこりした。不審者扱いしてゴメンよ。


「気にしてないから大丈夫ですよ~」


 この、どう見ても村娘風なカッコからなんで貴族が連想されたのか謎だけど。顔だってアバター作り込んでないから――自前のパーツをちょっと西洋風にアレンジして幼くしただけ――そこそこ平凡な顔だし、ゲーム時代は街中でぼーっとしてるとたまにNPCと間違えられたくらいなんだけどな。


「それにしても、大変だったな。でも初めて来た町がここ、バラクフタで良かった。なんせ、この町はこの国で一番治安が良いと言われているからな。お嬢ちゃんの年なら、孤児院に行けば生活も保証してくれるし、安心して暮らせるぞ」


「そうなんですかぁ」


 うーん、この見た目だと孤児院確定なのかな?

 いやでも冒険者登録さえしちゃえば稼ぐ事は出来るんだし、行く必要は無いよねぇ。

 ゲーム時代にプレイヤーが設定出来る最低年齢が十歳で、冒険者登録も即日出来たんだから、変わってなかったらいけるはず。


 それにいくら見た目が小さくても、思考回路がいささか大人とは言えない回転率の悪さを叩き出したとしても、これでも実年齢的にはアラサーな訳で。

 孤児院なんかに入れられてリアルお子様達に混ざるのは辛すぎる。いや恥ずか死ねる。せめて保育士枠でお願いしたい。


「あの、この仔も町に入れますか?」


 膝の上のソラを抱き上げておじ様門番さんに見せる。

 いきなりなんだと言うなかれ。ヘタに孤児院ネタを続けて言質取られたり、親切心で連れてかれたりしても困るしね。ここはさっさと話を変えちゃいましょう!

 どうせ聞かなきゃいけないのは確かだしさ。


「ん? グレイウルフの仔どもか? ――ああ、従魔契約はしているんだな。従魔のリングも見える位置に付いているし、これなら問題ないぞ。お嬢ちゃんはテイマーだったのか」


 いえ違います。

 いや正確には違わないんだけど。スキル持ってるからね。


 だって魔物から採れる素材を集めるのに従魔にしたほうが効率良かったんだよぉぉ!

 狩っても必要数集めるのに時間掛かるしさ……。なら飼っちゃえばいいんじゃない?ってね。

 実際、自宅の庭に巣を作らせれば際限無く採取できたから、とっても重宝しましたよ。特に、フォレストスパイダーのリリンちゃん、フロストスパイダーのセッカちゃん、ファイアスパイダーのカエンちゃんにジュエルスパイダーのミタマちゃん達蜘蛛さんズ。

 庭で日向ぼっこしてると、良く付き合ってくれたっけ。みんな良い仔だったなぁ。


 あら、話が逸れた。





「さて、そろそろ後の人に悪いから中に入ろうか」


 ラディムさんが私達の後ろに並んでいる人達に目を向けて進む事を促した。


「おっとそうだな。じゃあ改めて――『ようこそ、バラクフタの町へ』! 安全は保証するから、楽しく暮らして行けるよう祈ってるぜ」


「ありがとうございます! これからよろしくお願いしまーす♪」


 多分よく顔を合わせる事になると思うからね!


 手を振って門番さんとお別れして、やっと町に入る事が出来た。暫くはこの町で生活して、この世界に慣れようと思います。ここが新しい私――サーヤとしての『始まりの町』になるんだね!


 これから夢を叶える為に頑張ろうと思います!


 あ、最後の門番さんのセリフ、ちょっとだけゲームっぽかったよね?




お読みいただきありがとうございました!

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