10 第一町人?にみつかった!
ブクマ&お読みいただきありがとうございます。
あれから、ソラにいっぱい慰められました。
『ぼくがずっとままのそばにいるからなかないで』
だって! きゃ~カッコイイ!!
私の息子はちっちゃい舌で涙をペロペロ拭ってくれる、気遣いの出来る優しい良い仔でした♪
プレイヤーが孵した幻獣は、親の魔力と高ランクの魔獣の肉を与えるとその分強く育つので、ガンガンあげて強い仔に育てるつもり。
きっと大きくなったら戦闘も出来る私の癒し――主にモフモフで――要員なってくれるはず。あ、もちろん今も絶賛癒され中だけどね!
ソラのステータスを確認したら『マノウォルア』という下位の幻獣だった。プレイヤーからは一角狼とか銀狼とか言われてたっけ。棲息地はリグド大陸の西側、ロースティア大山脈の向こうに広がる魔の森。
マノウォルアの分類は中型種だけど、大きくなっても体長三メートルくらいにしかならない。敏捷特化のクセに風魔法で更に加速して突っ込んでくるから結構キョーアクだったりする。しかも狼だからか基本三~五匹で動き回ってるので、遭遇するたびよく仲間に当たらないなーって思ってたっけ。
まぁ、ソラは今のところパッと見はグレイウルフなんだけどね。額を触ったら小さな突起があったからこれから生えてくるんだろうな。
◇ ◇ ◇
私は今、東にあった街道を北に向かってのんびり歩いております。ソラはフードの中でお昼寝中。まだ赤ちゃんだしね。
街道は舗装されてはいないけど思ったより広く、大きな馬車がすれ違えるくらいはある。轍もあるので交通量もそこそこありそうだ。このまま進めば間違いなく人里には出られるだろう。
あの森を抜けてからかれこれ七時間ほど――といっても時計なんてないから体感でだけど――のんびりお散歩気分で歩いてます。体力はそれなりなので、肉体的に全然疲れないのが嬉しい。現実じゃ運動なんて殆どしなかったから、二時間も歩けば筋肉痛は必至だっただろう。
だけど休憩という名の採取をしながらなので、あまり進んだ感じがしないのが困りもの。実際二十キロも進んでないかも。
いやだって、見つけたら摘むでしょ? 別にレアな薬草があった訳じゃないんだけど……スルーは私には無理よ!
それにしてもこの街道は随分安全な道らしい。道の両側には結構な頻度で獣避けの草――人族には分からないキツイ臭いがする。ソラは平気みたいだけど……従魔だから?――が生えてるし。道に出る前から腕輪で魔力を抑えてるけど、何処にでも居るゴブリンすら見掛けない。
実際探索スキルでは赤い光点があるものの、どれも道から百メートルは離れている。範囲が五百メートルだから奥の方は判らないけど、近くに見える赤自体の数は少ない。青い光点はそれなりの数がある事から、どうやらこの森は『魔の森』ではないようだ。まぁ弱い魔物が生まれる小さい『魔素溜まり』は何処にでも在るものだから、そこは推して知るべし。
陽が落ちる頃には夜営の準備を始めるとして、それまでにもう少し進んでおくか? 別に急ぐ旅じゃないから早目に休んじゃっても問題ないけど。
というか昨晩は神様ズの所為で碌に寝てない気がするから、実質十一日振りにまともな睡眠が摂れるんじゃない? うん、今日は絶対早く寝よう!
一時間程経って、太陽が木々に差し掛かったのを機に、夜営地を探す事にした。最悪また木の上でもいいけれど、出来れば平らな所で身体を休めたい。
「あっ」
適した場所がないかと辺りを見回しながら歩いていたら、十数メートル程先の鮮やかな赤が視界を掠めた。
『まま?』
私の声で目を覚ましてしまったソラが、フードから顔を出して肩によじ登る。それを手で支えながら小走りに近づくと、予想通りの物がそこにあった。
「やっぱり、シトレの花!」
『しとれ?』
「そう。失明を治す薬の材料だよ」
この鈴蘭の形をした小さな赤い花は、失明の状態異常回復薬になる。あ、目薬じゃないよー。ちゃんと飲み薬です。失明の原因が毒か病気の場合はこの薬が有効なのだ。まぁ水魔法の『浄化』や、中位の状態異常回復ポーションがあるから、使用頻度は極端に低い薬だけど。怪我で失明? 治癒ポーションでもぶっかけろ!
これに枇杷に似た『チガの実』の種の中身を混ぜれば完成。果肉はまんま枇杷なので、捨てずに美味しく食べる事をオススメする。
花は茎から外れると効果が消えてしまうので、茎に付いたまま成分を抽出しなければならない。花を落とさないように慎重に採取しつつ、同時に状態維持の魔法を掛けていく。
半分ほど処理がおわった頃、遠くからガラガラと車輪の回る音が聞こえてきた。
『まま』
「んー、ソラは隠れてなさい」
一応ソラをフードの中に隠して、探索のスキルを使う。結果、人間は三人だけ。
音からすると結構な重さのモノを積んでるみたい。人数からみて辻馬車はないから商人さんかな?
特に敵意も無さそうだし、採取優先でいいよね。
黙々と採取を続けていると、少し離れた所で音が停止した。そして、ゆっくりと人が近づく気配。
「どうした? 具合が悪いのか?」
声を掛けられたからには無視する訳にもいかず、採取を中断して立ち上がる。振り向くとそこには二十代半ばくらいの男が立っていた。
肩当てと胸当てだけのシンプルな革鎧に、腰には剣を佩いている典型的な冒険者スタイルだ。多分馬車の護衛だろう。
手を差し伸べた体制のまま目を見開いて固まってるけど、何かありましたか?
「…………精霊?」
え? どこどこ!?
慌てて周囲を見回しても姿はない。精霊は基本姿を隠しているから、滅多に見れないのに!
「…………あ、ああ。いや、気のせいだ。それよりお嬢ちゃん、こんな所でどうした? 親はいないのか?」
我に返ったらしい(たぶん)冒険者――剣士さんがそう聞いてきた。なんだ、見間違いなの?
そして何故か緊張気味な剣士さんに対して、私は無言で様子見です。
「…………。」
だって、知らない人と口を利いちゃいけません! ってお母さんに習ってるのです。アラサーが何言ってるんだとか言うなかれ。見た目は子供ですから! そして頭脳は大人とは言い難し……!! くそうっ
さて困った。
これからどうしよう?