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能力発動できないですが、それは

 さて、オレは注文していたミルクが届いた所で今のやるべきことを再確認しようとしようと思う。


 まずはオレが受け取った能力“物語の世界を行き来する”について、再確認したい。


 金がない現状を打破するにはこの能力の力が絶対に不可欠だ。


 あのとき、オレは念じることで行き来できた。


 まぁ、やっぱり確認した方がいいかな?


 そこで隣の席で借りてきた猫状態になっているターリアにオレはそのことを聞くことにした。


「なぁ、ターリア。改めて確認したいことなんだけど・・・」


 しかし、そこにはオレがさっきまで知っているどのターリアではなかった。


「イッエヘーイ!お酒最高で~す!ありゃりゃ?望ちゃん飲んでまふか~?」


 何か、わけのわからないことになっているのですが。


 よく見ると、彼女は杯に注がれたビールをほとんど飲んでおり、どうやら完全に出来上がっているようだ。


 こいつコロコロキャラ変わるな!安定させろ、安定。


 目の前の魯智深ろちしんに至っては席を外れて、巨大な肉を喰らい始め、さらにゴロツキ共に調子に乗せられて、樽に入ったビールごと飲み始めやがった。


「キャハハハハハハ!ろっちー、面白い~!あたしもやりたい~」


 これ大丈夫かよ!


 不味いぞ。


 作戦会議どころか、酔っ払いが二体いるぞ。


 そうだ、あのとき考えたことを思い浮かべるのだ。


 そう、「元の世界に戻る」ってことを。


 ・・・。


 あれ、何も起きない。


 えっと、あの時考えたことは「中に入りたいが、元の世界への戻り方を探すか」だったな。


 ・・・やっぱり何も起きない。


 くそ、一体どうやって使うんだよ!この能力。


 まさか、一方通行ってわけじゃないよな!


 ならば、こうだ。

 

 オレは席を立ち、隣でやんややんやと酔っ払っているキャラ崩壊娘を肩を掴み、こう耳元で呟いた。


「おい、アテナからの連絡はまだか?駄目なお嬢さん」


 まぁ、当然酔っ払っているから返ってきた答えは、


「ほにゃ?望~どしたの?ミルク飽きちゃった?」


 まじで使い物にならないな。


 だが、これを利用して・・・。


 食い逃げをするというのは、どうだ!


 まず、酔っ払っている彼女を持ち帰るふりをして、そのまま何食わぬ顔で店を出る。


 完璧だ。


 さ~て、早速・・・。


「?望ちゃん?どしたの~。何か4人ぐらいいるように見えるけど~」


 あれ、お持ち帰りってどうやるだ?

 

 全然分からないぞ、おい!


 やばい、変な汗出てきた。


 マフラーに汗が染み込んで、気持ちが悪いぞ!


 ええい!ままよ!


「ななな何かさ・・・あ、あれ、急にさあ、ほら何となく、外で、出たくない?」


 何だこれは?


 我ながら、なんてひどい誘い方だ。


 だが、この酔っ払いぐらいなら何とかなるだろうな・・・?


「?えっ、何?外出たい?ヒック、まだまだあたしは飲みたい~」


 彼女のそういうと、わずかな沈黙が流れた。


 何というか、明らかにおかしい。


 唐突感が半端ではない。


 こうなったら、強引に!


 オレはもはや必死のあまり彼女の腕を取ろうとした途端だ。


「何だてめぇやんのか!ゴラァ!人の喧嘩中に割り込んで来てんじゃねぇぞ!クソ禿頭!」


「おおう!ヒック、ウィ~。貴様こそ、既にボロボロの男を、ヒック、これ以上やるではない!死んでしまうだろうが。これ以上やるなら、この魯智深ろちしんが成敗してやろう。ウィ~」


 げっ、先程の喧嘩にうちの禿が乱入していやがる。


 しかも、樽の入ったビールを飲み干したためか、恐ろしいほどに酔いが回っているため、足元がふらついていやがる。


「何だと、このくそ禿が!」


 男がナイフで切りかかった瞬間、魯智深ろちしんは素手であっさりと跳ね除け、そのまま男を殴り飛ばしてしまった。


 やれやれ、あっさりと解決したな。


「うん?こんな所に我輩を見下している奴がいるぞ?この野郎め、我輩を見下すではない!」


 ちっとも解決してなかった。


 今度は壁にかけられた見事な絵を近くにあった棒切れで殴り始めた。


 そのおかげで絵はボロボロ、さらには魯智深ろちしんの怪力も相まって、壁がすごい勢いで破壊されていった。


「てめぇ!よくも、騎士様からもらった絵を!」


 その魯智深ろちしんの行動に切れた店長が従業員共に抑えつけようとしたが、怪力の僧侶に勝つことはできなかった。


「アハハハハハ!ろっちー面白い~!」


 面白くなんともねぇよ、酔っ払い共!


 これだから、酒は嫌なんだよ!


 まぁ、案の定、


「一体何の騒ぎだ!全員その場を動くな!!」


 騒ぎを聞きつけたのだろう、町の警備兵がすぐに飛んできた。


 その時店内で目立った人間は、暴れている魯智深ろちしんとそれを見て笑っているターリア、そしてその光景で頭を抱えているオレだけだった。


 他の人間は警備兵が来ると、魯智深ろちしんに殴られて気絶をしている者を除き、すぐに隠れてしまった。


 しかし、その倒れている人間が魯智深ろちしんの側で倒れているため、どう見ても彼がやったとしか思えなかった。ていうか実際にやってるし。


「むっ、実に珍妙な格好をした奴だな!貴様ら、他国の密偵か?それとも逃げた奴隷か?」


 そういうと、警備兵がにじり寄ってきた。


 警備兵はいかにも中世らしい銀色の甲冑を着ており、そのため彼らの顔は見ることができなかった。


 このままでは牢屋ルートだろう。


 まったく、酒場に行くなんて提案するじゃなかった。


 そう思っていると、騎士団長らしき人物が言った。


「まぁいい。どちらにしてもだ。酒場での乱闘は禁止していると法律がわが国にはある。犯人はそこの変な格好の“農夫”であろうが、貴様ら二人もかなり怪しい。まとめて捕らえろ!」


 そういうと、警備兵たちは手に持った槍を構えた。


「・・・へっ、オレたちはまだこの国に来たばかりだぜ。スパイだの奴隷でも何でもない。この国の法律だって知らない。もう少しここで情報を整理したいとこだったんだぜ。それをこいつら酔っ払いに邪魔されたんだ。嫌になるよ、まったく」


 オレはそう言いながら、左手でスマートフォンをいじりながら、右手ターリアの手を掴んだ。


「ほぇ!?」


 そのときターリアはかなり驚いたようだが、こっちはもう頭の中にはここからの脱出計画しかない。


「いいか、走るぞ」


 オレが小声で彼女にそう呟くと同時に目の前の机を思い切り蹴り飛ばした。


 それと同時に魯智深ろちしんが壊した壁に向かって走り出した。


「!貴様手向かうつもりか!」


 これでオレもグルだ!


魯智深ろちしん!お前も走れ!壁の向こうにもっとうまい酒があるってよ!」


「むっ?そうか、ウップ。では、ついていこう」


 そういって、オレたちは逃げた。


「食い・・逃げ・・・」


 倒れている店長がそう呟いたので、


「ツケといてくれ!」


と言い、二人を連れて店の外に出た。


「逃げたぞ!追え!逃がすな!」

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さて、望の能力はどうやって発動する?

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