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中世の庶民の食事が静かだと思いました

「いいですか!例え、いくら力が小さいからといって、一応これでもあたしは女神の端くれですからね!普通、人が女神の肉体をジロジロ見ることは決して許されることではないのです!!普通だったら、鹿に変えられたり、視力を奪われたりしますよ!今回、あたしだから良かったものの、普通だったら死ですよ、死!もう、一応世界を救う冒険ですから、少しは精神力を鍛えてくださいよ!」


 そんな頑健な精神力を持てるわけがない。


 オレは馬車の中でこの絶賛「素」の状態に戻っている乙女な小女神からとりあえず説教を受けている。


 とりあえず、オレは「はい」とか「へい」とか適当な返事をしながら、くどくどと長い彼女の話を流した。


 ぶっちゃけ、オレは反省していない。


 次に同じようなことがあったら、はっきりと目線は行くだろう。


 胸がないのは残念だったが、それでも白い肌とむっちりした太ももはオレの記憶にインプットされていた。


 それくらい、オレの印象に残ってしまったのだ。


 それにしても、ターリアがこんな性格をしているとは思わなかった。


 最初の印象では、かなり事務的というか、スレンダーな金髪美人だけど、塩対応ばかりしてくると思っていた。


 けれど、実際の彼女はなんというか、かなり感情的で穢れのない湖のような初心な心の持ち主だったとはな。


「あのちょっと!聞いてますか!?あ・す・ま・さ・ま!!」


 やべっ、まだ説教中だったか。


 というか、そんな薄着しているから見ちゃうだろうが!男の性として!人類の雄として!


 見られたからって死ぬわけじゃないだろうが!

 

 オレは悪くねぇ!


「聞いてます、聞いてます。ああ、次からなるべく気をつけるよ。悪かった、はははは」


 次もあったら見る。


「本当ですか!?次見たら、アテナ様に頼んで牛に変えてもらいますからね!」


 それは嫌だ。


 ならば、次は気付かれないように見る。


 ・・・はっ!オレは何を考えているんだ!

 

 何かすごいひでぇ思考しているぞ、おい。


 この様子だと、オレが言いたかった「体見られたぐらいで動揺するなや」と言いたいところだが、言ったらまーた長くなるし、やめとくか。


 ま、とりあえずだな。


「ま、薄着だとまたオレが見るかもしれないし、とりあえずこれでも着な」


 そういって、オレはいつも着ている上着の茶色いパーカーを脱ぎ、それを彼女に渡した。

 

「えっ?・・・あっ、・・・ありがとうございます」


 そういって、彼女はさっきの勢いはどうしたのだろうか。


 しおらしく顔を真っ赤にしながら、オレの上着を受け取った。


 何か、渡すこっちまで恥ずかしくなってくる。


 その場で彼女はオレから受け取った上着を着た。


 これならば、露出が減るから少しは大丈夫だろう(上着は男物だが)。


「おーい、お前さん方終わったのか?我輩は見張りしているのが疲れたぞ」


 あっ、そうだった。


 騎士に見つかったら、騒ぎになって大変だろうから、魯智深ろちしんに見張りを頼んでいたんだ。


「ああ、終わったよ。ところで、走ったから二人とも疲れただろ。せっかく異世界に来たから何か食べていこうぜ。そこで情報を整理しようぜ」


 オレのその提案に二人とも、


「おお!いい提案だ!我輩もそれに賛成だ!」


「意義な・・・あっ、いえ。私は問題ありません」


といった。


 しかし、ターリアの奴、キャラ崩壊したのにまーた事務対応かよ。


 さっきのお前の一人称「あたし」だったのに、「私」に戻ってるし、逆にここまで来ると笑えてくるが、同時に少しイラッとくる。


 それならば、


「その前にターリア。そのさぁ、バレバレの事務対応はもう終わりでいいぜ。何というか、やりづらくてさ、こっちも」


 その言葉にターリアは少しドキッとしたようだ。


 そして、少し考えるような仕草をした後、困惑気味にオレにこう言った。


「あー、・・・えーと・・・、いいんですか?」


 もちろん、オレの答えはこれだ。


「当然!後、その『様』付けもな」


◇◆


 その後、オレたちは町を警備している騎士たちの目の届かないであろう、貧困街の裏通りにある料理店を見つけた。


「おっ、たぶんここだな」


 そういって、オレが駆け寄ってメニューを確認した。


 これでも少しは英語が読めるのでね。


 と思ったら、全部筆記体じゃないか!読めねぇ!


「ぬ?望の奴見つけたのか」


 魯智深ろちしんもオレの側に駆け寄ってくる。


 ターリアは歩いて来た。


 そうだ、ターリアは古代ギリシャの小女神だったな。


 彼女なら読めるかもしれない。


「なぁ、ターリア。これ読めるか?」


「ん?どれどれ、見せてください」


 そういって、ターリアは文字を読もうとした。


 しかし、すぐに「あれ?」とか「う~ん」とかうなったり、自分が知っている語句をいい始めたりした。


 何か、待ってるのもあれだし、さっきに入って確かめた方が早いな


 オレは彼女を尻目にさっさと扉に手をかけた。


「えっ、ちょっと、待って!もし、変な化物とかいたらどうするのよ!?」


 むなしいことにオレを制止とする彼女の声は間に合わなかった。


 オレは扉を開けた。


「オラッ!てめぇ、俺の肉を食いやがったな、クソ野郎!」

「おおっ、上等じゃねぇか。殺してやるぜ!」

「ギャハハハハハ!やっちまえ、アンソニー!」

「殺せ!」


 ・・・何これ。


 オレの目の前にあった光景は世紀末だった。


 これ、中世ファンタジーの世界だよな?


 何か、イメージと違うんですけど。


 店の中で胸倉を掴みあい殴りあう二人の屈強な白人男性に、大声でアーサー王を称える歌を歌う女性、あの派手な格好はもしかして娼婦か?


 さらにはほとんどの客は一見普通の村人のように見えるが、手づかみで野獣のように目の前の食事にかぶりつき、スープは音を立てて飲み、とどめに皿を投げ捨て、ゲップまでしている。


 とどめにその食べ物を掴んだ指をしゃぶり、その指をテーブルクロスで拭き始める。


 はっきり言って、マナーのへったくれもない。


 なんだこれは。たまげたなぁ。


 ファンタジー世界って、もうちょっとこう静かで紅茶を飲んで、神様にお祈りしがら生命に感謝しつつ、いただきますじゃないのか?


 ワイルドすぎるだろう。


「おう、いらっしゃい!見慣れない格好だが、何か食うか!」


 気付かれたけど、入りたくねぇ。


 金は一体どうすんだよ。


「むっ、この匂いは・・・酒か!」


 そういうと、魯智深ろちしんはオレを押しのけ、ずかずかと店内に入って行った。


 オレはそのパワフルなおっさんの体当たりには耐えることはできず、不本意にも治安レベルマイナス5の手店内に入ってしまった。


「あっ、ちょっと、待ってくださいよ~!」


 流石にターリアも読めない文字を読むのをやめ、店内に入った。


 そのとき、オレは本能で足で扉を抑えて、彼女が店内に入るのを待った。


「親父!酒と肉を少々くれ!」


 このおっさん、もう注文したのかよ。


 とはいえ、流石は豪傑。声量も大きいため、殺し合いや下品な歌が飛び交う店内でもしっかりと聞こえた。


「おう!」


 店員の声が聞こえてくる。


 店員もナイフの切り傷があったり、とても鍛えられた肉体をしており、ただものじゃなかった。


 オレとターリアは隅のほうで席を陣取る魯智深ろちしんの席に向かった。


 その間にも、


「へへっ、何だこいつら。変な格好しているな~」

「あの禿は農夫か?それにしても、気持ち悪いな、おい」

「女だ~。ひひ、ちょっと若いがいいねぇ~」

「あの坊主の帽子だせぇな~。あの首に巻いているの虹色だぜ」


 ・・・最悪だ。ターリアも怯えきってオレの後ろに隠れている。


 これはこれでラッキーだが。


「あいよ。肉と酒ね」


 オレたちが席に着くころには既に料理が出ていた。


「むっ、これは何だ?妙に泡立っているが・・・。これは酒か?」


 魯智深ろちしんは神妙そうに渡された酒を眺めた。


 これは・・・ビールか?


 もう、この時代にあったかよ。


 しかし、流石は酒豪が多い水滸伝のキャラ。


 一気に渡されたビールが入った杯を飲み干した。


「ぷは~っ!この酒はずいぶん苦いなぁ!だが、のどごしが良くていいぞ」


 そういって、今度は目の前の肉を切り分けずに周りの客と同じようかぶりついた。


 オレも食べたい。


 しかし、魯智深ろちしんから帰ってきた答えはこれだ。


「・・・焼いただけじゃな、味が薄いな・・・」

 

 あれ、意外な反応だな。

 

 そして、オレとターリアが席に着くと、どんとビールが置かれた。


 げっ、オレ酒嫌いなんだよ!


 けど、まぁ目の前に酒豪いるし。


魯智深ろちしん。オレのあげるよ」


「むっ、お主も遠慮するではないわ」


「まぁ、そういわずに」


 オレは魯智深に苦手なビールを渡す、近くにいた店員に捕まえ、


「紅茶ください」


と頼んだら、怪訝な表情された。


 どうやら、この時代には紅茶はないのかもしれない。


「じゃあ、ミルクください」


 オレがそういうと、店員は舌打ちしたが、「あいよ」と了承してくれた。


「なんだ?お主、酒が飲めんのか?まぁ、確かに無理はするもんではないわ」


「悪かったな」


 オレは隣に座っているターリアを見ると、この店の雰囲気に流石に馴染めないのか、完全に怯えているウサギのようであった。


 とりあえず、オレは目の前の豚の足の丸焼きを切り分けて、二人分用意してあげた。


 さっそく、食べてみると足が薄い。はっきり言って不味い。


 手抜き料理だった。


 何か、味付けがないかと辺りを見渡すと乱闘している場所に塩や酢とかの調味料が置かれてあることに気づいた。


「殺してやる殺してやる!」

「この肉は俺のだ!」


 ただ、その周りでは喧嘩と怒号が飛び交っているので、オレは先に方向性を固めてから行くことにした。 

感想・レビュー・評価お願いします!

ところで中世ヨーロッパの庶民の食事って、実際にこんな感じだそうです。

調べてびっくりしました。

さらに意外な情報ですが、ビールってこの時代の前からすでにあったそうです。

結構歴史が古くてびっくりしました。

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