異世界の仲間たち
ちょっと、コミュニーケション!
オレたちが辿りついた世界、「アーサー王物語」の世界は現在のイギリス、イングランドが舞台だ。
中世ヨーロッパが舞台の世界はネット小説の舞台としても知られるが、実際にこうして来るとまだ夢だと思う。
オレの目の前にある城がそれを認識させてくれた。
まぁ、その前に寝ている二人を起こさないとな。
できれば、アテナの配下の女神を起こそう。
禿は事情を説明するのが面倒くさそうだ。
とオレが思った矢先に、
「う~ん、余計に禿げてきそうだわい。ん!?あれ、一体ここはどこだ!?我輩は死んだのか!?そうだ、我輩は気が付いたら変な書物がたくさんある所にいて、怪しい小僧をとっちめようとしたら、いつの間にここに来ていたのだが・・・?」
先に禿が起きやがった。。
っていうか何で異世界に来れんだよ!おかしくね?魯智深って、小説「水滸伝」の登場人物だろ!?
小説の世界の登場人物も移動できるのかよ!
結構恐ろしい能力だな、おい。
ちょっと待て、すごく不味い気がするぞ!さっきのあの様子じゃ、まだオレに誤解を抱いているみたいだし、さらに中国の「宋」の時代の人間が中世のイギリスに来るのはなんか、こう、世界観的に不味いって!
「むっ!あの時の変な小僧!?貴様、ここは一体どこだ!さては貴様が我輩をここに連れてきたのか!?まったく、あの書物だらけの場所といい、変な蛸といい、おまけに全身鉄固めと来て、今度は草原と来たわ!もう、わけがわかぬぞ!さぁ、我輩にこの状況を説明しろ!さもなければ、この錫杖で貴様の頭をかち割るぞ!」
げっ、こっちに気付いた。
やっぱ、こうなるのかよ・・・。
は魯智深早くしろと言わんばかりに、錫杖を振りかざしている。
まぁ、ここに来た以上、彼にも知る権利があるはずだ。事情を説明しよう。
「わ、わかった。とりあえず、その杖を下げてくれ。びびって話もできやしないからな」
「おう、我輩にもわかりやすいように説明してくれ」
オレは魯智深にわかりやすいように、説明した。
簡潔に説明すると、彼が何らかの事情でオレが住む別世界に迷い込んで来た所を本の世界の住民であるオレと、このの人物“ガラハッドと出くわした。
そして、彼は怪物蛸に襲われて、気を失った所をオレが退治したことを。
その後、天女(宋の時代ならこう表現するだろう、アテナのことだ)の導き(強制)により、オレがこの世界に行こうとしたところ、魯智深がオレに触れてしまい、この世界に引きずり込まれたということを。
「・・・ということなんだ」
魯智深はオレの話を聞くと、う~むとうなりだし、
「なるほど、我輩はまったく違う世界に来たということか・・・。てっきり妖術か何かの類だと、思ったが・・・。おう、お前さんのことを疑って悪かったな」
おっ、話通じるぞ。この人。
「ところでお前さん、さっき天女の導きでこの世界に来たと言っていたが、何故そのようなことをするのだ?教えなければ、この錫杖で」
何ですぐ暴力で解決しようとするのかな!
振りだとわかっていても、ぶよぶよに醜く太った太い腕に黒くてゴツイ杖を振りかざされたら怖いわ!
「わかったからその杖下げてくれ!つまりだな、オレはあなたも含めて、異世界に来てしまった人たちを元に戻すために“次元の水晶”と呼ばれる宝の欠片を集めるように言われたんだよ。それに・・・」
「それに?」
何か恥ずかしくなってきた。
言えねぇよ。実在するか、どうかもわからない女の子を助けたいなんて。
「・・・いや、何でもない」
オレがそういうと、やっぱりこのおっさんは、
「おう、隠すな。言え」
と脅してきた。
あーくそ!
「・・・顔も名前もわからない女の子を救いに来たんだ・・・」
そういうと、魯智深は目をかっとさせ、急にオレの肩を掴んできた。
うげっ、すごい力。
「ほうっ、そうか!そういうことなら我輩にも協力させろ!!お主の勇気、行動に我輩は感激したぞ!先程は悪かったな、疑って!まさか、知らぬ世界に来ても好漢に会えるとは夢にも思わなかった!この漢、魯智深!そなたの旅に同行させてくれぬか!」
はっ?
いやいや、不味いだろ。
確かにすごい戦力になると思うが・・・。
「おっと、断っても我輩は無理やりでも手伝うぞ!お主に正義がある限り、地獄の果てまでついて行こう!そうだ!仲間になるんだったら、自己紹介をせんとな!我輩は魯智深!大宋国屈指の破戒僧じゃ、別名“花和尚”とも呼ばれておる。んで、お前さんは?」
知ってる。
けど、向こうはオレのことを知らないよな。
だって、彼にまだ自己紹介してなかったな。
「オレは遊馬望だ。よ、よろしく」
オレがそう名乗ると、魯智深
「遊馬望?随分変わった名前だな。まるで和の国の住民の名みたいな・・・・まぁよい!よろしく頼むぞ、望よ」
そういって、魯智深はオレの二倍ほどある大きな手を差し出してきた。
巻き込んでしまっていいのか?まぁ、今は少しでも仲間がいる。
オレはその手を握り、硬い握手をした。
「よろしくな。魯智深!」
オレはそういって、ニッと笑って見せた。
オレと魯智深の身長は差は大きく、少し奇妙に思えるが、
「おう、よろしくな!望よ!そうだ、後で義兄弟の契りをせんとな」
「・・・どうやら、私がいない間に解決したようですね」
オレがそっちを見ると、既にアテナの配下のニンフがいつの真にか起きていた。
「あ、ああ。ところでそっちは大丈夫か?こんな右も左も変な世界に来させられて?えっと、名前は何だっけ・・・?」
そういうと、彼女はうんと頷き、
「・・・あっ、大丈夫です。私たちメンテには名前はないです・・・。あなた方の好きなように呼べばいい・・・」
うん?メンテって、彼女の名前じゃないのか?
それじゃあ、
「じゃあ、ターリアって呼ぶわ。ほら、シラユキって来たら、次は茨姫だろ?」
そういうと、ターリアは少し困惑気味に、
「・・・はぁ、お好きにどうぞ」
と答えた。
ふむ、さっきのシラユキほどではないが、こちらも小女神っていうだけにとても綺麗だ。先程の絵のシラユキが可憐で可愛いイメージならば、こちらは美人系の顔立ちだ。
金色の蜘蛛の糸のような長い髪に、宝石のような翡翠色の眼に真っ白い肌。少しきつめにつりあがった目に高い鼻は、とても美しく女神の名に恥じなかった。
ただ、先程のシラユキや主神のアテナに比べれば、残念ながら見劣りはした。
それだけ、シラユキの美貌が異常ともいえる。
「な、なんじゃ?この方は?天女か?」
あ、そうだ。魯智深にも教えてやらないとな。
「ああ、この娘はオレを無理やりこの世界に飛ばした女神の部下だ。オレの手助けする用に言われている。・・・よね?」
「はい。私はアテナ様の指令で遊馬殿の手助けするよう、言われています」
そういうと、急に魯智深は頭を下げた。
「こ、これは失礼。天女様でしたか・・・」
なんでわかったんだ?
まぁいい。
「さて、話をまとまったことだし・・・早速!」
オレは目の前にある大きくて立派な城、おそらくアーサー王の居城だろう。
城塞都市を指差して、オレははっきりと二人に聞こえるように言った。
「まずは町に行って、欠片とあの娘の情報を手がかりを得るぞ!」
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ところでターリアは茨姫に出てくるお姫様の名前が元です。