さぁ、異世界へ!
やっと、異世界です!
女神アテナが最初にオレに行くように命じた世界。それは元祖剣と魔法のファンタジーの世界である「アーサー王物語」の世界だった。
アーサー王物語は所謂“騎士道物語”の一つであり、現在でも様々なゲームやアニメの題材にもなっている、剣と魔法のファンタジーのヒロイック・ファタジーの王道とも呼ばれる物語だ。
オレにとっても、この作品のキャラクターたちはアニメやゲームでは馴染み深かった。現に先程現れた騎士は“円卓の騎士”ガラハッドと名乗っていた。
彼のいう円卓の騎士という、主であるアーサーを含めた選りすぐれた13人の騎士たちのことをいう。
ちょうど、彼は13人目の騎士だ。主な活躍としては、確か彼は聖杯伝説において、大いに活躍をした。
他にも、アーサー王が使う“エクスカリバー”はかなり有名であり、知らない人はいないはずだ。
いわば、アーサー王物語は様々な作品の起源といえる存在でもあるかもしれないとオレは思う。
まぁ、それはそれとして。
アテナがいうには、このアーサー王物語の世界に、さっきの二次元世界の住民みたいな女の子シラユキが捕らわれているそうだ。
同時に次元水晶の欠片もこの世界にあるらしい。
あれ、ちょっと待てよ。
「どうして、この世界に欠片があるとわかったのですか?」
オレがそういうと、この質問を予期していたのだろうか。
「見れば分かるだろう」
本のページをパラパラと開き、それをオレに見せてくれた。
「これは・・・」
そう、この本にあるべきものがなかった。
そう文字が。
すなわち、ストーリーがなくなっているのだ。
「シラユキが見つけてくれたのだ。この本の中身がないことにな。それで私が一時的に物語の世界に行くように頼んだのだ。しかし、今まだ帰ってきてない。とても心配だ・・・」
アテナはそういうと悔しそうに歯を食いしばった。
犠牲者二号生まれそうなんだけど。
しかし、本当に悔しそうだった。流石は女神というべきだろう
それだけでも、オレは確証を持てなかった。
「・・・成る程な。文字がない世界、怪しいな。だが、それだけでその世界に本当にその欠片あるという確信はあるのか?」
このオレの質問にアテナははっきりと答えた。
「ああ、あるとも。この世界から飛び出した住民がはっきりと“赤い水晶の欠片”を見たとな。次元水晶は7つの欠片からなる、虹色の水晶なのだ!」
「ということは、欠片は7つあるということか!」
オレがそういうと、アテナは頷いた。
「ああ、その通りだと思う。私はこの本以外にも既に4つの世界を特定しておる。私はこれを“ロスト・ストーリー”と呼ぶことにした!」
ロスト・ストーリー。失われた世界か・・・・。
なるほどな。ということは、他の世界も行くことになるかもな。
「さて、質問はいいか。それでは、まずはシラユキの救出頼みたい!そして、“赤い次元水晶”の欠片を取ってくるがいい!これはお主に対する試練だ!かの英雄ヘラクレスのように勇気を持って進むがいい!」
えっ、もう行くのかよ!?
「ちょっと、待った!武器も荷物も持たないで行けというのかよ!それは自殺行為だって!」
オレの要求に女神アテナはにやりと笑った。
「ふふっ、愚かな少年よ。私を誰だと思っている。ギリシャの戦いと知恵の女神アテナであるぞ。お主の冒険の手助けになるように武器を授けよう!」
そういえば、そうだった。
この人、戦いの女神だったな。
「武器って何をくれるですかい?」
変な武器だったら、承知しないぞ。
「そうだな、お主何の武器が得意だ?」
もちろん、オレが使える武器は一つしかない。
「じゃあ、釵くれ!」
「!?な、何だ?さい?それは武器なのか?知らんぞ?」
オレがそういうと、アテナはかなり困惑した。
仕方がなく、オレは持ってきた漫画をアテナに見せた。
この漫画の主人公の相棒の武器が釵だったからだ。
これならわかりやすいだろう。
ちなみ、釵というのは少し変わった武器で二本で一組の十手に似た形状の武器だ。
結構珍しいので、友人も見たときはほとんどは「変な形の十手」としか思われなかった。
女神に漫画を見せながら、オレが釵についても説明した。
「なるほどな・・・確かに、随分と変わった武器だな。よし、それを授けよう」
流石は女神だ。一瞬にして釵を理解するなんて。
アテナは右手に光球を作り出すと、そこからオレが望んだとおり、釵が出てきた。
といっても、鉄でできており、オレが持っているステンレスのやつよりは重そうだな。
「さぁ、これでよいかな?餞別として持っていくがいい。見事、水晶を元に戻せた時はそれをやろう」
おっ、いいね。
「それでは、準備はいいかな?望よ。それでは。水晶を元に戻し、世界を救って来るがいい!」
アテナはそうオレにいった。
いよいよ行くのか!
「おっ、そうだ。行くならば、メンテを連れて行くがいい。必ず、役に立つだろう」
そういうと、彼女の隣でずっと静かだったメンテがオレの前に出た。
「・・・よろしくお願いします」
「あ、ああ、よろしく」
何か、緊張するな。
「では、いいかな。よし、まずはその本をめくれ。そして、本の中に入りたいと念じるのだ。すると、能力が発動し、異世界に行ける。詳しいことは異世界についてら念話で話そう。そうそう、メンテに触れておいてくれ。それで一緒に行けるはずだからな」
今さらっと、すごいことをいった気がするが、オレはアテナの言うとおり何も書かれていない本をめくって念じた。
いよいよ、始める。異世界の冒険が。
そして、あの女の子を助けに!
「うおおおおおおおおおおお!待たんか!そこの小僧!」
オレが念じている間に後ろの方で何者かが強襲して来たのか!?
やばい、早く行かないと。
その瞬間、オレの体が船の本に行ったときのように、引きずり込まれるように本の中へ入って行った。
◆◇
「うっ・・・ここは」
見渡すと、緑一面だった。
空にはオレたちがよく見る青い空。
そして、周囲でオレと同じように倒れているメンテと・・・魯智深!?
なんで、こいつがいるんだよ!
あんた、別の作品のキャラだろが!
しかし、そうも言ってられなかった。
オレが後ろを振り返ると、明らかにゲームでしか見たことがない物がそこにあった。
城だ。それも西洋の立派な城!
間違いない、オレはついに来たのだ。
異世界に。
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