夜の図書館に入ったら・・・
新作です。
「やっべー、図書館に本を返し忘れた」
オレの名前は遊馬望。18歳のごく普通の高校生だ。
容姿も平凡な黒い短髪に平均的な身長とはっきり言って特徴がない。強いて言うなら、目付きが悪いのと、長い間空手をやっているから少しだけ体ががっちりしているぐらいだな。
だが、オレにはトレードマークがある。赤いキャップ帽に虹色のマフラーだ。これはオレが子供の頃から身につけている。ただ、よく人に似合ってないとよく言われるけどな!
そんなトレードマークを除けば、平凡な人であるオレは今日、図書館に借りっぱなしの漫画を返すために自転車で全力疾走している。
何でかって?返却期限が今日までなんだ。返さないと、また電話がかかってきて文句言われる。
それがオレは嫌なのだ。
だから、オレは今日中に図書館に本を返すため、全力疾走しているのだ。
だいだい、オレの家から19分ほどの所で図書館についた。
オレが図書館につく頃には既に夜の10時を回っていた
「やっと着いたぜ。ん?」
よく見たら図書館、しまっているじゃないですか。やだー。
そう、この図書館は夜の7時で閉まるのだ。
「くそ、ゲームなんかやってないでもっと早く来るべきだったな」
がっくりして、思わず図書館の扉に手をかけた。
すると、ガラッと大きな音がした。
「なんだなんだ」
ふっと見ると、図書館の扉が開いているではないか!不用心だ。
「おっ!開いてんじゃん!」
オレは今日中に本を返すために夜の図書館に入った。
ちなみにこの図書館には返却用ポストがあるのだが、そんなものは俺は知らなかった。
◇◆
夜の図書館の中は無人で静まり返っており、どこともなくホラーゲームの鉄板である"学校の夜の図書室”のような不気味な雰囲気を出していた。
ちなみにオレはホラーが嫌いだ。べ、別に怖いわけじゃないぞ!ドッキリするのが嫌だけだ!
この図書館は3階建てで、1階には児童用の読み物と新聞や雑誌がある。2階には実用書や小説がある。そして、3階には中高生向けの漫画やライトノベルが置いてある。
そう、オレは漫画を返しに3階まで行かなくてはならない。
そして、人知れず漫画を返すのだ。誰にも気づかれてはいけない。
オレは不法侵入をしたのだからな。
普通に返せと思った奴!お前は何もわかっていない。
「さぁ、行くぞオレ!漫画を返しに・・・あれ?変だな?なんか音が聞こえてくるぞ?まさか警備か?」
オレは一瞬そう思ったが、この音は足音ではないことにすぐに気づいた。
その音は何かを食べる音だった。むしゃむしゃという何かを食べる音はまるで大きな虫が何かをかじっているように感じられた。
それにしてはやけに鮮明に聞こえてくる。
「なんだ?一体」
オレは気になって音がする絵本コーナーに歩いてみると、そこには巨大な青虫がぐりとぐらの焼いた巨大なカステラを食べているではないか。
こいつらは絵本のキャラクターたち。
なぜ、こいつらがここにいるんだ?
げっ、こっちに気づいた。
オレに気づいた青虫はものすごいスピードで俺に使づいてきた。
そういえば、えっーと確か。あ、そうだ。あの絵本のタイトルは「腹ペコあおむし」だ。
だとすれば、あいつは捕食者だ。ってことは・・・。
間違いない!この俺を食べる気だ!この虫野郎!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
当然、オレは一目散に逃げた!
幸いにも相手はただの芋虫だ。
所詮、スピードは知れている。
そう思って、オレは後ろを振り返った。
と思ったらものすごいスピードで俺に迫ってきているではないか!気持ち悪!
「やべぇ、超早ぇ」
腹ペコ青虫の動きはものすごく虫らしく、しかも移動速度も芋虫とは思えないぐらい異様に早かったのだ。
「ぎゃあああああああああああああ!食われたくねぇ!」
オレは思わず絶叫した。まさか、たかがこんな馬鹿でかいだけのクソ虫がこんな早いとは思わなかったからだ。
「クソッ!どういうことだ!ん?あれは・・・」
スイミーだ。場面的にはちょうどスイミーが仲間と一緒になって、でかい魚(名前忘れた)をやっつける所だろう(なんで水中じゃないのに活動できるかは知らん)。
確かでかい魚たちはスイミーたちが扮装した大きな魚にびびって逃げたよな。
と考えている間にもこっちにあいつが来てる!どうすんだよやべよ!
オレはとっさに本棚の後ろに隠れた。
そのときむしゃむしゃ、バリバリボリボリという鈍い何かを食べる音を聞いた。
オレは思わず、音がするほうを見てしまった。
何か見たら、お魚さん食われているじゃないですかー。あれっ?スイミーたちもやばくね?あっ、でも今度は青虫追い返した。スイミーすげぇ。
すると、悪い魚を腹ペコ青虫はむくむくと急に大きくなった。どういうことだ。そういえば、あの絵本の結末は腹ペコ青虫がさなぎになって、蝶になったな。
そうか、そういうことか。
「うんとこしょ。どっこいしょ」
おおっ、あれは「大きなカブ」の絵本の登場人物たち!
あのかぶはでかいぞ!
「よし、俺も手伝うぞ!」
オレは絵本のキャラクターたちのカブを引き抜く手伝いをすることにした。
確か、あのカブはでかい!うまくいけばあのクソ虫を止めることができる!
「うんとこしょ。どっこいしょぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
オレは気合を入れて、カブを引き抜こうと頑張った。
しかし、そんな間にも腹ペコ青虫は獲物である俺を目掛けてもうスピードで這い寄ってきた。
「ひぃぃぃ!早く、ひゃく!うんとこしょ!どっこいしょ!うんとこどっこい!うんどっこい!」
もはや、何だがわけわからなくなり、すぐ近くに青虫が来た瞬間だった。
スポーンといい音をたてて、抜けたのだ。あの大きなカブが!
その大きさは図書館全体を埋めつくほどだった。
「でかすぎぃ!」
当然、それは腹ペコ青虫にムシャムシャと食べられた。けれども、カブができすぎるのか。どんどん、青虫はでかくなり、遂にはさなぎになった。
「やったぞ!」
オレはすぐに階段へ向かった。絵本の怪物たちは怖いからな!次の階ではなにもありませんように!
「あっでも、白雪姫や不思議な国のアリスとか、そういう美少女なら大歓迎だぞ!」
オレの後ろではさなぎが羽化して蝶になっているのが音で分かる。
さぁ、次は2階だ!
オレの後ろで美しい蝶が飛んでいるのが分かるが、そんなものにかまわずオレは階段を駆け上がるのであった。
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