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灯りのあるこの街で (短編集)

ハッピーエンド

作者: 新垣 電燈

それから姫と王子は結婚し、幸せにくらしましたとさ。めでたしめでたし。




あれから10年は経った。

あの頃の王子はもういない。代わりにカウチでごろごろしてばかりの王子がいる。王子の気品などどこにもない。

「ダラダラしてないで手伝ってよ!」

一喝しようとすると娘がドレスの裾を引っ張ってくる。

「お兄ちゃんが〜」と泣きそうな顔をして訴えてくる。こんな風に息子を叱りにいくのは何回目だろう。

「こら!またいたずらしたでしょ!」と言うと、「またか」という顔をした。私もさっきこんな顔をしたのだろう。

「だってあいつがおもちゃ貸すって」

「もう返してよ〜」

「まだ遊んでない」

「遊んだ!」

「遊んでない!」

いつもこうだ。今日もまた両方を叱った。



昔の友人にこのことを話しても、

「それはどこも同じよ。あなたは王子と結婚してるんだから幸せじゃん」

「 こんなことなかなかないんだから文句言えないよ」

と言う。はっきりいって王子の私生活はダサすぎる。漫画やアニメのような美しい見た目をした野良犬だ。

なのにみんなは、王子なんだから我慢しなさいと言う。こんなに苦しいのに。

「だったらカウンセリング受けてきたら?」

友人の勧めで下町のカウンセリングを受けにいくことにした。


カウンセラーは私の愚痴をよく聞き、共感したように相槌をうった。私は嬉しくて、かなり長く話した。そしてカウンセラーの口が開いた。

「姫様の苦しみはよく分かりました。姫様、昔を思い出してください。あなたは姉などからひどいいじめをうけていましたよね。ですが王子と結婚できるまでになったじゃないですか。今だってそうです。今苦しくても、幸せになるときがくるんです。がんばってください」

とりあえず代金と口止め料を払った。姫がカウンセリングに行ったなんて知られたらまずいからだ。


私があの時幸せになれたのはあの場所に魔法使いが現れたからだ。今この場所に魔法使いが現れないかぎり幸せは訪れない。いつまで魔法使いを待てばいいのか。



ただ、もし魔法使いが現れば幸せになれる。幸せになったなら王子の悔しがる様子が見れるということだ。

あのときの姉達のように。立場が逆転した時に王子にどんな命令をしようか。そんなことを考えてる時間が今いちばん幸せだ

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