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ジークレイルは、次々と色鮮やかなドレスを順番に着せられ、母たちの着せ替え人形になっていた。
七着全てを試着し、選んだのは清楚だが華やかなドレスだった。
そのドレスは下から上にかけて、白から段々とピンクに色が変わり、ふんわりとスカートが膨らんでいる。ドレスの袖と裾には、然り気無く上品なレースが飾られ、スカート部分の布には光によって輝く銀糸で、ジークレイルがよく例えられている大輪の薔薇が、刺繍されている。
そして、そのドレスに合わせてエレイナに髪を結われ、化粧をされていく。
最後に薄い紅を塗った所で、ジークレイルは恐る恐る目を開く。すると、目の前にいる少女と目が合い、ジークレイルは目を見開いた。
そんな様子のジークレイルに、母とエレイナたちは満足気に微笑む。
「どうかしら?騎士さまからお姫さまになった気分は」
「ど、どうと言われましても・・・なんか、脚がスースーします」
そのジークレイルの回答を聞くと、母は呆れた様に溜め息を吐き、プクーっと少女の様に頬を膨らませた。
「もう、クレイったら。もうちょっとこう・・・嬉しい、とかって言って欲しかったわ!」
そうやって拗ねたように言った母に、ジークレイルは「すみません」と返した。
そして、そう返したジークレイルにエレイナがスッと近づき、「失礼します」と断ってから、ジークレイルを立たせた。立った瞬間、ジークレイルはバランスを崩しそうになり、咄嗟に出た脚に力を込め、なんとか立て直す。だが、慣れていない踵の高いヒールを履いている為か、生まれたての子馬のように脚が、プルプルと震えている。その姿を確認したエレイナが、すかさずジークレイルを横から支えた。
その姿は港で、薔薇の騎士と言われているなんて、想像が付かない程情けなく見えた。これを世の薔薇の騎士さまに、夢を持つ少年少女が見たら、さぞやガッカリする事であろう。
ジークレイルに四方八方から、母達の視線が集まる。その目は、呆れを通り越して、同情に満ち溢れている。
「・・・」
「・・・」
「・・・そ、そんな目で見ないで下さいっ!!」
無言でジークレイルを見つめていた母達に、ジークレイルは半泣きになりながらそう、叫んだ。それに母は困ったように、口を開いた。
「でも・・・ねぇ?エレイナ」
「ですよね・・・奥さま」
二人は目配せをしたかと思うと、ジークレイルに顔を向け、同時に口を開いた。
「「終って(ますよ)(るわよ)」」
このあとジークレイルは、母とエレイナから舞踏会時間ギリギリまで特訓を受け、何とかダンスのステップを踏めるようになった。
その時のジークレイルの顔は、エレイナ曰く、まるで修行僧のようだったという。
そして、それでもまだ心に引っ掛かりを覚えながらも、舞踏会の会場である王城へと、馬車を走らせたのであった。
やっと、会場へと!
皆さん、疑問に思った事は有りませんか?
母が居るのに、ジークレイルの弟はどうしたっ!?という。
実は、ジークレイルの弟は乳母にこの時間だけ預けられています。
そして、次話は金曜日までにあげたいと思っています。
あげる時間は、0:00にします。
ご閲覧ありがとうございました!