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今回、少し内容が短いです。
エレイナに通された部屋の扉を潜り、ジークレイルは思わず足を止めた。
目の前で優雅に微笑む女性を、ジークレイルは驚きに満ちた目で見つめる。その女性は、艶やかで豊かな黒髪を背中に流し、どこか色っぽく感じる翡翠の眼で、ジークレイルを優しく見つめている。その風貌は、ジークレイルにどことなく似ており、美しい。
「クレイ、お元気でしたか?こんなに大きくなって・・・」
ジークレイルをクレイと呼ぶのは、ジークレイル自身が知っているのでは、一人しか居ない。
「お母様・・・お久しぶりです」
久しぶりにジークレイルは、懐かしくも感じるその名を呼んだ。母と呼ばれた女性は、少し寂しげに微笑むとジークレイルに、近寄ってきた。そのまま腕を、ジークレイルの髪へと伸ばす。サラリと、髪が揺れ、ジークレイルの頬に少し、ひんやりとした手が添えられた。
「あの人に言われて切った髪は・・・まだ短いまま、なのね」
「剣を・・・剣を振るうのに、邪魔でしたから」
まあ、もう剣を振るう事も無くなるだろうが、とジークレイルは心の中で、悪態を吐いた。そんなジークレイルに母は、何か言いたそうだったが、ジークレイルは敢えてそれには触れず、本来の目的と疑問を口に出した。
「私は、今夜の準備をしに来たのですが・・・何故、お母様が此方に?」
それを言うと、一瞬キョトンとする母だったが、自身の目的を思い出したようで、突然アワアワする。そんな少女の様な反応をしているが、母は社交界では百合姫と持て囃され、有名人なのだから、世の中は判らないなと冷静に分析する。
そんな事をボーッと考え、ふと我に帰ると、目の前には自身の紅い髪と 、アクアブルーの眼に合うであろうドレスが、七着程並べられていた。何事かと、辺りを見回すとエレイナ含む侍女数人と、母を中心としてジークレイルを取り囲んでいた。
思わず目を、白黒させているジークレイルに母たちは満面の笑顔を浮かべた。
「お、お母様?これは・・・い、一体なにを・・・」
「うふふ。わたくしね、クレイに私自身がで考案したドレスを、着て欲しかったの。大丈夫ですわ。薔薇の騎士様を、薔薇のお姫様に変えるだけよ」
そうして、母を含む侍女たちとジークレイルはドレス選びをする事になった。
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