2話
久しぶりの更新となります。
今後定期的に更新していくことを目標にしたい・・・。
今回は挿絵つきでお送りします。
挿絵を描いてくださったゐのり様、誠にありがとうございます。
キャラの外見や制服が私自身の中で詳しく決まっていなかったのでとても助かりました。
この場を借りてお礼申し上げます。
書いてくださった方のTwitter:https://twitter.com/In0ri_iNoRin
「ようこそリセット部へ!あんたのその腐った人生、私たちが叩きなおしてあげるわ!」
「は?えっと・・・」
「そうそう、それであんたは私たちのカウンセリング対象ってわけね。分かった?んじゃ放課後始めるから、部室まで来てね!」
そういうとその小学生、こと御影奈々は用事を済ませたつもりなのかさっさと階段のほうへ向かって歩いて行ってしまう。
「ちょ、ちょっと待ッ・・・」
俺は慌ててよびとめようとした。しかし思ったより大きな声が出たことで自分に驚き後に続く言葉が出なかった。
「ん?なぁに?」
御影さんが振り返る。
「いや、その、説明を・・・」
「説明って、今したじゃない?それとももっと何かあるの?」
階段に向かっていた足を止め、こちらへ戻ってくる御影さん。
「え、えーと」とか言ってる俺に助け舟を出すように綾波さんが言う。
「奈々、今のでまったく何も知らない人に対して説明した気になってるとしたらそれはちょっと違うぞ」
「そ、そうですよ、具体的にどういうところなのかとか聞いてないですし・・・」
俺がそう付け加えると御影さんがため息をつき、説明を始めた。
「リセット部、っていうのはね。非公式の部活なのよ。だって聞いたことないでしょう?」
そう言われればそうだ。一応転入時にすべての部活動一覧に目を通したし、当時の担任にすべての部活内容を見学させられた。だがその中にリセット部というものはなかった。
「これは、まぁ、部活と呼んでいいかすらもわからないようなモノなんだ。その活動内容からしてな」
生徒会長が付け加えるように言う。しかし部活ではない、とはどんな活動をしているのだろう。ますます不安になる。
「別にそんな怪しいものじゃないのよ、私たちは学校、っていうか社会のはぐれ者たちを、悪い言い方だけど、更生させる部活なのよ。だから言ったでしょう?カウンセリングだって」
「なるほど・・・」
「!?いやいや、西宮君、それで納得したとは思えないぞ?全く説明になってない上に怪しさ満点過ぎるだろう!」
あまりにも適当に行われた説明に俺は危うく納得してしまいそうになったが、隣に立っていた綾波さんが全力で突っ込む。
「もう良い、奈々は少し黙ってろ、私が説明する。」
「黙ってろって何よー!説明しろって言ったくせにぃ!」
「奈々じゃ説明になってない、これじゃ西宮君が可哀そうじゃないか。なぁ?」
「えっ、あっ・・・まぁ、そ、そうですねはい」
唐突に話題を振られ、ぼそぼそと答える。
「ほら、西宮君もそう言っているじゃないか。それでは説明するぞ」
そう言って生徒会長は『リセット部』について詳しく説明を始めた。
「君ならわかるだろうが、学校というコミュニティの中にはいじめる人間や、いじめられる人間、いつも一人でいる人間、いつもたくさんの人に囲まれている人間。先生と仲がいい人間、仲の悪い人間。そんないろんな生徒や先生、そのほかにもあらゆる人間たちが入り乱れ、生活している空間。それが学校だ。
そんな多くの人が生活する空間だからこそ、仲間外れというか、孤立してしまう人間が出てくる。それは自分に原因があろうがなかろうが、確実に発生してしまうことだ。」
それは俺にも心当たりのある事だった。心当たりとか言うレベルではなく間違いなく俺自身のことだ。
社会のはぐれ者。絶対的独りぼっち。
でも
「でも、そういった者たちだって人間だ。彼らにだって感情はあるし、可能性もある。人間関係がちょっとうまくいかないから。自己表現がちょっと得意じゃないから。それだけで社会から仲間外れにされるってのはちょっと不公平だと思わないかい?」
「それは・・・」
それは、そうじゃない人たちが言うのはとても簡単だ。不公平だ。君だってやればできる。神はニ物を与えず。みんな成功できるチャンスがある。
そう謳いながらも人生はかくも非情だ。
何をやってもうまくいかない人たちだっているし、何をやっても理解されない人、いじめられる人、無視される人。特に理由もなく、ただそういう星のもとに生まれたというだけで、他人とは扱いが変わる。
「学校では『人は皆平等、個性を活かせ』などと教えてはいるがその実は究極の不平等の場でしかない。生徒同士のいじめや教師によるいじめやセクハラもある。そういった状況を改善するため作られたのが我々『リセット部』だ。私たちは、そう、り
「リセットするのよ!」
そういって唐突に割り込んできたのは今まで離れた場所でぶすっとした顔でこちらを見ていた御影さんだ。
「説明するのがめんどくさいんじゃなかったのか?」
綾波さんがあきれたように言う。
「そんなことないわよ。とにかく部長は私なんだから私に説明させなさいよね。まったく。」
一息つくと御影さんはこう続けた。
「そういった状況に陥ってしまった人たちはたいてい本人に原因がある場合が多いのよ。あんたにもそんな自覚はない?」
考えてみれば原因は俺にしかないのだろう。コミュ障なのも人見知りなのも、どもりがちなのも、他人と趣味が合わないのも。だけど。
「ぼ、僕は。オタクな趣味もないし、空気だって読めるし、他人と決定的に違う特徴だって、問題のある家族だっていない、それなら・・・っ!」
「それなのになぜ、孤立して、いじめられて、消えて行ってしまうかわかる?」
「それは、あんたが。あんた自身が!
自分のことを認めていないからよ!」
思考が。途絶した。
意識に空白が、生じた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ?」
「『どうせ僕はこうだ』『みんなとは違うからしょうがない』『あきらめろ、無理だ』」
「オタクじゃないなんて関係ない。他人と違う特徴がないなんて関係ない。そんなのはただのいいわけよ!」
呆然と突っ立ったままの僕に。御影さんは更にまくしたてる。
「あんたのことはもう調べてあるんだから!他人にやさしい?チャンスを譲る?空気が読める!?そんなの場の空気に流されて自分なんてどうでもいいってあきらめてるだけじゃない!そんな自分すら認められない人間が!他人に認められるわけないじゃない!」
言い過ぎだ、奈々!、そう言った綾波さんの声は、遥か遠くから聞こえているようだった。
「ま、待ってくれ!」
思わず声を上げた俺に、言い合いを続ける二人は驚いたような顔で顔を向けた。
「自分を諦めるのは、他人に譲るのは、そこに置いてもらうため。誰かにやさしくするのは誰かに必要とされるため。宿題を早く終わらせて、誰に見せろと言われてもおとなしく従い、何を頼まれても文句ひとつ言わず協力するのも。あらゆる知識を身に着け、好き嫌いを決めないのも、誰の話でも聞いて、誰の愚痴でも聞いて!誰の悪口も言わないのは!全部!」
「誰かに必要とされたいからだッ!」
息を切らす僕に、二人は優しく声をかける。
「あなたは、それでいいの?それじゃあいつだってあなたは幸せにはなれないよ?」
「僕はもう、順当なルートを外れてるよ、6年前のあの日に。」
「もう一度聞くよ?あんたはそれでいいの?」
「だから僕は、せめて楽で簡単な道を選んでいたんだ。当たり障りのない道を。」
「本当に?ほんとにほんとにほんとにほんとにほんとにほんとにほんとにほんとにほんとにほんとにほんとにほんとに、本当にそれでいいの?」
「しつこいですよ、それでいいと言ってるのに!」
その瞬間、御影さんの目に楽しげな光が宿った。
「今。あんたは嘘をついてる。」
「・・・っ」
「その意味は分かるわね?あんたはこのままでいいなんて、これっぽっちも思っちゃいないのよ。」
「奈々の言うとおりだな、君の目には怒りが宿っているよ、西宮くん。」
僕は、このときこう呟いた。
嫌に決まってるだろ、こんなの
「そうか、じゃあ私たちが君を全力でサポートしよう。そのために
「そのために私たちがいるんだから!それにかすみ!『私たち』じゃないでしょ?かすみは別にうちの部員じゃないんだから!もう!」
「はいはい、わかったよ。しかし説得にここまで時間のかかる生徒は初めてだぞ、西宮君。昼休みももうあと1分もないからな。」
「「ええっ!?」」
僕と御影さんが同時に叫ぶ。
顔を見合わせる。吹き出す。
意識の片隅で僕はこんな漫画みたいなことあるんだなぁと思った。
けど僕の意識は、目の前の彼女の笑顔に、囚われていた。
「今日からよろしくねっ、結樹くん。」
その笑顔に。僕の心臓が数倍速く鼓動したのは。きっと長いこと他人と会話していないからだと、僕は僕の心に嘘をついた。
これが自分自身につく、最後の嘘にすると誓って。
久しぶりの更新の割に短いな!って自分でも思います。
言い訳としては
一回間違えて文章を消してしまい、その後まったくストーリーを思い出せず、どうだったかなーと考えながら書いていたことです。
よって一度完成していたものの書き直しとなり、自分の中では劣化しているとさえ思っています。
次回からは気を付けよう・・・、おのれ妖怪ブラウザバック・・・。
いつもどうり下手な文章ではありますが、お楽しみいただけたのであれば幸いです。ぜひ感想など書いていってください。感想がめんどい、というかたも評価だけでも付けていってくださるとうれしいです。
ではまた会いましょう。