I'm so Happy !! / Ryu☆
久しぶりにこんなご馳走を見た気がする。
金はいくらでも都合はつくのだが、私自身そこまで食にこだわりがない。
故にいつも適当に食べたいものを食べたいだけ。
そんな私の前に用意されたご馳走。
実は私が用意したのではない。
なんのことはない。
ここはパーティ会場なのだ。
みな煌びやかな衣装に身を包み、楽しんでいるようだ。
会場には軽やかな音楽が流れており、中央の開けた場所で踊る者もいる。
どう見てもこの空気から浮いている私は、こうして隅っこで料理に驚いているというわけだ。
たまたま来れなくなった友人に、パーティのチケットを売りつけられたものの正直私は後悔していた。
「あの、良かったら踊りませんか?」
だからだろうか、たまには踊るのもいいかと思えたのは。
「ええ構いませんよ。……えーっと、あなたは?」
思えばこの気まぐれが、私の人生を大きく変えてしまったのだろう。
私は彼女の手をとった。
はてさて楽しい時ほど時間が経つのは早いもので、ふと彼女は時計を見上げて「すみません」と申し訳なさそうに頭を下げた。
つられて時計を見たら、もう1時間近くこうして踊っていたようだ。
実は私はあまり踊るのが得意ではなかったのだが、なんというか、彼女と踊るのはとてもやりやすかった。
「実はわたし、この後ちょっとした催し物をやるんです。それでもう……」
あぁ、いいよ、気にせず行ってください。
ありがとう、楽しかったです。
私がそう返すと、彼女はニッコリと笑ってお辞儀をし、そして少し慌てたように去って行った。
そういえばこのパーティのタイムスケジュールを知らないことに、私はいまさらながら気が付いた。
とりあえず私は目の前に置いてあったグラスを手に取り、催し物とやらを待つことにした。
それからほどなくして放送が入った。
どうやらステージの方で演劇をやるらしく、パーティの参加者がわらわらと集まっていくのが見える。
私もそれに遅れまいとステージの方へと向かった。
ところで彼女は一体この演劇で何を担当しているんだろう。
そんなことを考えるていると、会場がほのかに暗くなりどこかで聞いたようなブザー音が私の思考を奪った。
幕が上がる。
そこにあったのは、紛れもなく彼女の姿だった。
どうやらこの演劇は、誰かの一生を描いた作品らしい。
初めはとても辛く悲しい物語で、だけれども彼女は「私は幸せなんだ」と信じて疑わない。
だってこの世に生を受けたのだから。
それだけで十分幸せなのだと。
痛々しくも、とても神々しい姿だった。
そんな彼女に転機が訪れる。
それはまるでおとぎ話の王子様。
彼と彼女は恋に落ちる。
しかし彼女は彼を突き放した。
「貴方に会えた、それだけで私は幸せ。」
そう言って聞く耳を持たない彼女。
彼は諦めなかった。
本当の幸せを教えてやると、そう言った。
本当の幸せとはなんだろう。
私は考えずにはいられなかった。
彼女もいた。
金もあった。
今でももちろん得ることは出来る。
しかし私はそれで幸せなのだろうか。
自問する。
自答は…ない。
彼女は怪訝な顔した。
ならば今までの自分は幸せではなかったのか、そう言いたげに。
そこで彼は言う。
生を受けた幸せ、誰かと出会えた幸せ、それは決して嘘ではない。
でも幸せはそれだけじゃない。
共に歩む幸せ。
君は今まで幸せだった。
だからここからは新しい幸せを謳歌しようじゃないか、と。
「ならば教えて、その幸せを」
ステージ上から出演者が降りてくる。
既に演劇は終わり、辺りは拍手の渦である。
もちろん私も拍手する。
このパーティに来て良かったと、今では思う。
みんなから声をかけられる出演者たち。
その内の彼女とふと目があった。
彼女は恥ずかしそうにはにかむと、軽く会釈をしてまた観客の中に紛れてしまった。
はたしていつぶりだろうか。
自分の鼓動の音が、こんなにも大きく聞こえたのは。
「おとーさーん」
息子が呼ぶ声でハッと我に返る。
あの時の会場の前で、私は息子を待っていたのだ。
今日はここではなにも行われていない。
静かなものだ。
あの時も、外はこんな風に静かだったのだろうか。
息子が駆け寄ってくる。
手を繋いでいた彼女もつられて駆け足になる。
さながらドラムロールのようなその歩みに、私は自分の足音を重ねた。
私は幸せなのだろうか。
自問する。
間違いなく、私たちは幸せだ。




